加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Dusko Goykovich - After Hours (Enja) 1971」情熱的なピアノと哀愁漂うトランペットの競演

ドイツのミュンヘン(Munich)を拠点に活動するレコード会社「ENJA (European New Jazz) Records」。

 

ジャズ愛好家のホルストウェーバー(Horst Weber)とマティアス・ウィンケルマン(Matthias Winckelmann)が設立したこの「ENJA (European New Jazz) Records」は、日本人ジャズミュージシャンの録音を積極的に手掛けている事もあり、日本では継続的にアルバム再発が行われておりますね。

 


で、今回ご紹介するアルバムは「ENJA Records」屈指の名盤で、日本で人気が高い「Dusko Goykovich - After Hours (Enja Records 2020)」です。

 

「Dusko Goykovich - After Hours (Enja) 1971」情熱的なピアノと哀愁漂うトランペットの競演

 

情熱的であり、繊細な面も持ち合わせるテクニシャン、ピアノのテテ・モントリュー(Tete Montoliu)のトリオをバックに哀愁感溢れるダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)のワンホーン・トランペットを存分に堪能出来る1枚でございます。

 

ダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)は、ユーゴスラビア王国(ボスニア・ヘルツェゴビナ)ヤイツェ生まれのトランペッター。1968年から1973年まで、ケニー・クラーク=フランシー・ボラン・ビッグ・バンド(Kenny Clarke/Francy Boland Big Band)に在籍していたみたいなので、「After Hours (Enja Records 2020)」を録音した1971年は丁度、その在籍時期に当たりますね。

 

テテ・モントリュー(Tete Montoliu)は、スペイン・カタロニア(Catalonia)生まれの
ピアニスト。生まれつき盲目であったそうですが、幼少時にクラッシック・ピアノを習い、バルセロナ音楽学校でジャズを習得。同じく目の障害を持つ超絶技巧のピアニスト、アート・テイタムArt Tatum)に影響を受け、豪快さと繊細さの両面併せ持つ個性的なピアノスタイルを確立していったみたいです。

 

「Dusko Goykovich - After Hours (Enja) 1971」情熱的なピアノと哀愁漂うトランペットの競演


さて、「After Hours (Enja Records 2020)」ですが最初は、「Dusko Goykovich – Ten To Two Blues (Ensayo ENY-45)」として発売されたみたいですね。

 

 

1曲目「Last Minute Blues」は、トロンボーン奏者・スライド・ハンプトン(Slide Hampton)が書いたブルース。

 


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テテ・モントリュー(Tete Montoliu)の、硝子の如き硬質でクリアな音色のピアノが奏でるイントロから、ダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)の潤いを帯びたトランペットが飛び出す処を聴いただけで充足してしまう程、この1曲にアルバムの魅力が集約されております。

 


2曲目「A Child Is Born」は、トランペット奏者サド・ジョーンズThad Jones)が書いた3拍子の美しいバラッド。

 


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テテ・モントリュー(Tete Montoliu)の繊細なピアノに、ダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)の哀愁漂うトランペットが良く混ざり合います。


3曲目「Old Fisherman's Daughter」は、ダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)の自作曲。

 


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テテ・モントリュー(Tete Montoliu)の、チック・コリアChick Corea)の如き超絶技巧を駆使したクリアで硬質なピアノによるイントロから、ダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)のミュート・トランペットを使ったマイルス・デイヴィスMiles Davis)に通じるリリカルな演奏がお楽しみいただけます。

 


4曲目「Remember Those Days」も、ダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)の自作曲。トランペットを朗々と吹き上げるダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)に、テテ・モントリュー(Tete Montoliu)の硬質でクリアなピアノによるバッキングが絶妙に絡んでいきます。


5曲目「I Love You」は、コール・ポーターCole Porter)の名曲ですね。軽快なテンポで演奏されるこの曲、超絶技巧を駆使した演奏が続くアルバムの中で、明るく、少しだけ(笑)リラックス出来る演奏の様に思われます。


6曲目「Ten To Two Blues」は、ダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)自作のブルース。この、ややスロー・テンポで、ファンキー風味を少し混ぜた演奏でアルバムは幕を閉じていきます。

 

 

Dusko Goykovich - After Hours
Enja Records 2020/CD 2020-2 / Columbia Music Entertainment COCB-53601


side 1 (A)
01. Last Minute Blues (Slide Hampton) 8:23
02. A Child Is Born (Thad Jones) 3:40
03. Old Fisherman's Daughter (Dusko Goykovich) 8:38

side 2 (B)
04. Remember Those Days (Dusko Goykovich) 5:14
05. I Love You (Cole Porter) 9:05
06. Ten To Two Blues (Dusko Goykovich) 7:04


Dusko Goykovich (tp) Tete Montoliu (p) Rob Langereis (b) Joe Nay (ds)
November, 1971 at Audio, Barcelona, Spain.