「Chet Baker - Chet Baker Sings (Pacific Jazz) 1956」中性的なボーカルが最大の魅力
チェット・ベイカー(Chet Baker)最大のヒットアルバムであろう「Chet Baker Sings」。
バリトンサックス奏者で作編曲家でもあったジェリー・マリガン(Gerry Mulligan)率いるピアノレス・カルテットで、トランぺッターとしての頭角を現したチェット。
マリガン・カルテットから独立した後、中性的なボーカルを披露した「Chet Baker Sings」が大ヒットした事により、1988年にオランダで転落死するまでボーカル兼トランぺッターとして世界中を演奏しつつ巡る事となります。
パシフィック・ジャズ・レコードの創立者、リチャード・ボック(Richard Bock)によると、「Chet Baker Sings」は男女、そしてどちらにも属さない中性的な人達にも売れたそうです・・・。
という事で男女問わず、初めてジャズを聴く人達にお勧め出来るアルバムです。
また「Chet Baker Sings」においては相棒、ラス・フリーマン(Russ Freeman)が奏でる小粋なピアノも聴きどころの一つです。
アルバムの中で一番有名な曲は「That Old Feeling」でしょうかねえ。
ちなみに私も余興の一環で、丸々コピーして演奏した事あります(笑)。
Chet Baker - Chet Baker Sings (1956)
Pacific Jazz PJ-1222 / 東芝EMI TOCJ-9301 [2001.07.25]
Remastered by Ron McMaster
01. That Old Feeling (L. Brown, S. Fain) 3:04
02. It's Always You (J. VanHeusen-J. Burke) 3:35
03. Like Someone In Love (J. VanHeusen-J. Burke) 2:26
04. My Ideal (L. Robin, N. Chase, R. Whiting) 4:23
05. I've Never Been In Love Before (Frank Loesser) 4:29
06. My Buddy (G. Kahn, W. Donaldson) 3:20
07. But Not For Me (G. Gershwin-I. Gershwin) 3:04
08. Time After Time (S. Kahn-J. Styne) 2:47
09. I Get Along Without You Very Well) (Hoagy Carmichael) 3:00
10. My Funny Valentine (R. Rodgers-L. Hart) 2:21
11. There Wil Never Be Another You (H. Warren, M. Gordon) 3:01
12. The Thrill Is Gone (Brown, Henderson) 2:51
13. I Fall In Love Too EasilyC.Kahn-J. Styne) 3:21
14. Look For The Silver Lining ( B. Desylva, J. Kern) 2:39
#07-14 February 15, 1954 at Capitol Studios, Los Angeles, CA.
Chet Baker (tp,vo) Russ Freeman (p) Carson Smith (b) Bob Neel (ds)
#01,02,05,06 July 23, 1956 at Forum Theatre, Los Angeles, CA.
Chet Baker (tp,vo) Russ Freeman (p,celeste) James Bond (b) Peter Littman (ds)
#03,04 July 30, 1956 at Forum Theatre, Los Angeles, CA.
Chet Baker (tp,vo) Russ Freeman (p,celeste) James Bond (b) Lawrence Marable (ds)
1964年には、ギターのジョー・パス(Joe Pass)のギターをオーバーダビングした「Chet Baker Sings (Stereo) World Pacific ST-1826/WP-1826」なるものも発売されます。
「Chet Baker Sings (Stereo)」作成に伴い、本国に保管してあったオリジナル(モノ・バージョン)のマスターテープが一時、消失したとの事。
そのため、本国で「Chet Baker Sings」は、ギターがオーバーダビングされたステレオバージョンのみが発売されていたらしいです。
しかしながら後日、日本の東芝EMIの倉庫でオリジナル(モノ・バージョン)のコピーテープが発見され(笑)。
めでたくオリジナルのモノ・バージョンも再発出来る様になった模様。
蛇足ついでに。
「Chet Baker Sings」の大ヒットを受け、あのマイルス・デイヴィス(Miles Davis)も、
ブルーノート・レコードのアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)と半分冗談交じりに「マイルスのボーカル・アルバムを作ろうか」という話をしていたそうです。
話をしていた頃のマイルスはまだ、しわがれた声になる前だったようで、結構可愛い声だったとか。
マイルスがプレステッジレコードのオーナーとの口論で喉を潰さず、ボーカル・アルバムを発売してたら、男性ジャズヴォーカル界はどうなったか・・・。
想像(IF)の世界ではありますが、色々と面白かっただろうなあ・・・とか思ったりします。
ギル・エヴァンス(Gil Evans)かクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)の楽団を従え、世界中を飛び回ってたかもしれませんね・・・。
最後になりましたが、「Chet Baker Sings」は永遠に色あせないであろう名盤です。