ジョン・コルトレーン(John Coltrane)のアルバム「My Favorite Things (Atlantic SD-1361)」に関しては、面白いエピソードが色々とあるので、前置きとして2つの話を書きますね。
最初に、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)は1960年の春、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)バンドのヨーロッパ巡業に同行します。
「マイルス・デイヴィス自叙伝(2)」を読むと、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)は本来であれば、1960年の春のツアー前に辞める気満々だったそうで。
ただ、演奏レパートリーを無難こなせるサックス奏者がコルトレーンしか居ない状況であったため、「頼むから辞めないでー」と、いつも強気のマイルス・デイヴィス(Miles Davis)から下手に懇願され、最終的に嫌々ながら同行を同意した模様。
そんな不平不満の塊であったジョン・コルトレーン(John Coltrane)をなだめるため、マイルスが買い与えたのが「ソプラノ・サックス」・・・そうです、コルトレーンが最初に公の場で吹いた「ソプラノ・サックス」は、マイルスからプレゼントされたものだったみたいで、コルトレーンは巡業中、マイルスからもらった「ソプラノ・サックス」を、夢中になって吹いていたそうです。
で、ヨーロッパ巡業も無事終わり、マイルスのバンドを公言通り退団したジョン・コルトレーン(John Coltrane)。
退団直後には自身のバンドを結成し、ニューヨークのグリニッジ・ビレッジにあったらしい「The Jazz Gallery」というライブスポットに出演する様になったそうです。
ついでに、ジャズ・ワルツの定番曲となった「My Favorite Things」を演奏し始めた
経緯について。
小川隆夫著「ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100(河出書房新社)」記載のマッコイ・タイナー(McCoy Tyner)の証言によると。
「The Jazz Gallery」出演時、休憩時間に名も知らぬ人物が持ってきた「My Favorite Things」を編曲した楽譜を試しに演奏してみたら大うけしたので、その編曲楽譜に幾ばくかのギャラを払い、レパートリーにした・・・という事らしいです。
さて、前置きは、このくらいにして・・・。
ジョン・コルトレーン(John Coltrane)のアルバム「My Favorite Things (Atlantic SD-1361)」は、1960年10月に行われた3つのセッションから拾遺されております。
演奏メンバーはいずれも、ピアノのマッコイ・タイナー(McCoy Tyner)、ベースのスティーヴ・デイヴィス(Steve Davis)、ドラムスのエルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)です。
表題曲「My Favorite Things」を手に入れたばかりのソプラノ・サックスで演奏している他、「Summertime」、「But Not For Me」など超有名曲を、「コルトレーン・チェンジ」と呼ばれる、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)独特で複雑なコード進行に変換して演奏しております。
1曲目「My Favorite Things」と、ボーナス・トラックとして収録された「My Favorite Things, Part 1 [Single Version]」、「My Favorite Things, Part 2 [Single Version]」は、1960年10月2日「Atlantic Studios」におけるセッションから。
セッションの一部は「John Coltrane - Coltrane Jazz (Atlantic SD-1354)」でも聴く事が出来ます。
「コルトレーン・チェンジ」を導入し、コルトレーン色に染まった3曲目「Summertime」は、1960年10月24日「Atlantic Studios」におけるセッションから。
他の曲は、「John Coltrane - Coltrane Plays The Blues (Atlantic SD-1382)」及び、「John Coltrane - Coltrane's Sound (Atlantic SD-1419)」で聴く事が出来ます。
2曲目「Everytime We Say Goodbye」、4曲目「But Not For Me」は、1960年10月26日「Atlantic Studios」におけるセッションから。
「コルトレーン・チェンジ」で演奏される「But Not For Me」なんて、ぼーっと聴いていると「Giant Steps」に聴き間違えてしまいそうですね(笑)。
このセッションで収録された残りの曲は、「John Coltrane - Coltrane's Sound (Atlantic SD-1419)」で聴く事が出来ます。
こんな感じで「My Favorite Things (Atlantic SD-1361)」は、「ソプラノ・サックス」の導入と、「コルトレーン・チェンジ」で有名スタンダード・ナンバーを演奏する事で、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の独自色がかなり出てきたアルバムなんではないかと思われます。
ただ、冷静に聴き直すと、メロディが美しいスタンダード・ナンバーに癖強すぎる「コルトレーン・チェンジ」を導入してしまうと、どの曲も似たり寄ったりの感じとなり、曲本来の良さとか美しさがおざなりになってしまう感じですね。
多数の有名アイドルを抱える某事務所所属の某有名俳優が演技すると、どれも「●●色」に染まってしまい、ナニを見ても同じ印象になってしまうのと同じみたいな・・・。
John Coltrane - My Favorite Things +2
Atlantic SD-1361 / Warner Music Japan WPCR-25104 [2006.11.22]
side 1 (A)
01. My Favorite Things (Richard Rodgers & Oscar Hammerstein) 13:47
02. Everytime We Say Goodbye (Cole Porter) 5:45
side 2 (B)
03. Summertime (Du Bose Heyward, George Gershwin) 11:37
04. But Not For Me (George & Ira Gershwin) 9:42
CD Bonus Tracks
05. My Favorite Things, Part 1 [Single Version] 2:47
06. My Favorite Things, Part 2 [Single Version] 3:03
#01 & 05,06 October 21, 1960 at Atlantic Studios in NYC.
John Coltrane (ss,ts) McCoy Tyner (p) Steve Davis (b) Elvin Jones (ds)
#03 afternoon, October 24, 1960 at Atlantic Studios in NYC.
John Coltrane (ss,ts) McCoy Tyner (p) Steve Davis (b) Elvin Jones (ds)
#02,04 October 26, 1960 at Atlantic Studios in NYC.
John Coltrane (ss,ts) McCoy Tyner (p) Steve Davis (b) Elvin Jones (ds)