天才ベーシスト、ポール・チェンバース(Paul Chambers)のブルーノート(Blue Note Records)第1弾が1956年09月21日に録音されたアルバム「Whims Of Chambers (Blue Note BLP-1534)」です。
私は最初、「最後の復刻」シリーズのアナログ・レコードを買って聴いて、イマイチだなあと思ってCD買うの控えてたのですが・・・。
つい最近、中古屋さんで見つけた「RVGリマスターCD」で聴き直してみたら、中々の名演が揃っていて吃驚(笑)。
RVGリマスター効果で、ここまで印象が変わるものかとド肝を抜いたアルバムだったりします。
最初に聴いた時、オーディオ機器の相性等の問題で、モノラルのアナログ・レコードが上手く再生出来なかったのかもしれませんけどね・・・。
さて、このアルバムにはリーダーのポール・チェンバース(Paul Chambers)の他、トランペットのドナルド・バード(Donald Byrd)、テナーサックスのジョン・コルトレーン(John Coltrane)、ピアノのホレス・シルヴァー(Horace Silver)、ギターのケニー・バレル(Kenny Burrell)、ドラムスのフィリー・ジョー・ジョーンズ("Philly" Joe Jones)という、「ブルーノート・オール・スターズ」と言っても過言ではないメンバーを揃えております。
演奏曲目に関してはポール・チェンバースが自作曲を3曲用意した他、ドナルド・バードが2曲、ジョン・コルトレーンが2曲と、参加メンバーが作曲した作品を計4曲ほど演奏しております。
またリズム隊の要、ベーシストがリーダーである為か、カルテット、クインテット、セクステットと曲により編成を変えている事も興味深い点ではあります。
そんな試行錯誤を経て1957年07月、ベーシストの聖典とまで称賛される「Paul Chambers - Bass On Top (Blue Note BLP-1569)」が、ギター入りカルテット編成で録音される訳です。
まあ、「Bass On Top (Blue Note BLP-1569)」に至る「布石」だという視点で聴いてみると、このアルバムをより味わい深く鑑賞出来るかもしれません。
いきなりエンディング的な盛り上がりから始まる1曲目「Omicron」は、ドナルド・バード(Donald Byrd)が書いた如何にもハードバップといった風情の作品。
ちなみに「Omicron」というタイトルは、ジャズ好きな方が時々ネタにしているようですが現在、世界中で流行している某ウイルス感染症とは何ら関係はないかと思われます(笑)。
テーマの中間部にベース・ソロのパートを挿入したりと、リーダーを引き立てる配慮も忘れていないあたりが流石というべきか(笑)。
ジョン・コルトレーン、ドナルド・バード、ケニー・バレルと1コーラス分の熱いソロ・リレーが続いた後、再びドナルド・バードが登場します。
続いてポール・チェンバース、ホレス・シルヴァー、フィリー・ジョー・ジョーンズと全員にソロを回してからテーマ部に戻りますが、ランニング・ベースを合図に怒涛のエンディングに突入致します。
2曲目「Whims Of Chambers」は、ギター・カルテットで演奏されるポール・チェンバース(Paul Chambers)の作品。
ギターのケニー・バレルとベースのポール・チェンバースが仲良く(?)ユニゾンでテーマを弾いた後、ポール・チェンバースのベース・ソロに突入します。
続いてホレス・シルヴァーのファンキーなピアノ・ソロ、ケニー・バレルのブルージーで洗練されたシングルトーンで紡がれるギター・ソロ、フィリー・ジョー・ジョーンズの短いドラム・ソロと演奏は続きます。
3曲目「Nita」は、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)が書いたハードバップ風味の作品。
ドナルド・バード、ケニー・バレル、ジョン・コルトレーン、ホレス・シルヴァー、フィリー・ジョー・ジョーンズの順に、これぞハードバップと言いたくなるようなソロが続きます。
4曲目「We Six」は、ドナルド・バード(Donald Byrd)の哀愁漂う日本人好みのハードバップ作品。
先発で登場するドナルド・バードの溌剌としたトランペット・ソロが良いですね。
特徴ある硬めの音色でソロを吹くジョン・コルトレーンに続き、ポール・チェンバースは弓弾きでソロを聴かせてくれます。
続いてケニー・バレル、ホレス・シルヴァーと安定したソロを聴かせてくれます。
穏やかなケニー・バレルのギター・ソロから始まる5曲目「Dear Ann」は、ジョン・コルトレーンが抜けたクインテット編成で演奏されるポール・チェンバース(Paul Chambers)の作品。
バラッド風の演奏だと俄然、ドナルド・バードのトランペットが引き立ちますね。
ホレス・シルヴァー、ケニー・バレルと味わい深いソロの後、ポール・チェンバースの
ゆったりとしたベース・ソロが登場。最後に再びドナルド・バードの味わ深いトランペット・ソロが登場し、そのままエンディングに突入します。
いきなりポール・チェンバースの弓弾きソロから始まる6曲目「Tale Of The Fingers」は、ポール・チェンバース(Paul Chambers)の作品。
ポール・チェンバースの弓弾きソロが約2分強続いた後、ホレス・シルヴァーのソロが挟まり、ポール・チェンバースの弓弾きソロとフィリー・ジョー・ジョーンズによるソロ交換に突入していきます。
ミディアム・テンポで演奏される7曲目「Just For The Love」は、 ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の作品。
ジョン・コルトレーン、ホレス・シルヴァー、ドナルド・バード、ケニー・バレルと
軽快なソロが続き、ポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズの短いソロの後、後テーマに突入します。
こんな感じでブルーノート(Blue Note Records)第1弾「Whims Of Chambers (Blue Note BLP-1534)」は、50年代マイルス・デイヴィス(Miles Davis)クインテットの影をちらつかせつつ、ギター入りカルテットという「Bass On Top (Blue Note BLP-1569)」に繋がる演奏も一緒に聴ける、よく考えてみるとバラエティに富んだお得なアルバムだったりします。
Paul Chambers - Whims Of Chambers (RVG)
Blue Note BLP-1534 / EMI Music Japan TOCJ-7044 [2007.10.24]
side 1 (A)
01. Omicron (Donald Byrd) 7:17
02. Whims Of Chambers (Paul Chambers) 4:02
03. Nita (John Coltrane) 6:29
side 2 (B)
04. We Six (Donald Byrd) 7:38
05. Dear Ann (Paul Chambers) 4:17
06. Tale Of The Fingers (Paul Chambers) 4:40
07. Just For The Love (John Coltrane) 3:42
Donald Byrd (tp omit #2,6) John Coltrane (ts omit #2,5,6)
Horace Silver (p) Kenny Burrell (g omit #6) Paul Chambers (b) "Philly" Joe Jones (ds)
September 21, 1956 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
ポール・チェンバース、ジョン・コルトレーン、フィリー・ジョー・ジョーンズの3名は当時、有名な50年代マイルス・デイヴィス(Miles Davis)クインテットのメンバーであり、直前の09月10日には「Miles Davis - 'Round About Midnight (Columbia CL-949)」に収録されるセッションに参加しておりますね。
ホレス・シルヴァーとドナルド・バードは、07月17日と18日に「Horace Silver - Silver's Blue (Epic LN-3326)」を録音しているので、「Art Blakey And The Jazz Messengers」を脱退して「Horace Silver Quintet」を結成した頃なんだと思われます。
残るケニー・バレルは05月29日と30日に「Introducing Kenny Burrell (Blue Note BLP-1523)」を録音。05月31日には「Kenny Dorham - 'Round About Midnight At The Cafe Bohemia (Blue Note BLP-1524)」に参加。
06月09日には、当時はお蔵入りとなったサド・ジョーンズ(Thad Jones)のセッションに参加するなど、ブルーノート(Blue Note Records)が期待の新人ギタリストとして売り出しを図ってた事が伺えます。
ちなみに次作はもう、アルバム紹介書いてましたね。