アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)がプロデューサーとして全てを仕切る時代のブルーノート(Blue Note Records)で、べーシストではただ一人、リーダーアルバムを残せたのがポール・チェンバース(Paul Chambers)です。
当時、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)クインテットのベーシストとして注目を浴びつつ、ブルーノート(Blue Note Records)のハウス・ベーシストとしても重用されていたポール・チェンバースですが、彼の魅力を十分に堪能出来るのが、ブルーノートの名盤ひしめく1500番台に3枚あるリーダーアルバムの第3弾となる本作、「Bass On Top (Blue Note BST-81569) 」です。
ベースのポール・チェンバース(Paul Chambers)の他、ピアノにハンク・ジョーンズ(Hank Jones)、ギターにケニー・バレル(Kenny Burrell)、リズムの要であるドラムスにはアート・テイラー(Art Taylor)という、割と品の良いメンバーが揃っております。
弓弾きによるソロからバッキングまでベーシストが駆使する、あらゆる技をこのアルバム1枚で堪能する事が出来る訳でございます。
そんな訳で、本作「Bass On Top (Blue Note BST-81569) 」は、「ベーシストの教科書」とか「聖典」とか呼ばれる事が多いですね。
プロを目指すジャズ・ベーシストであれば「一度は聴いておけ!」と言われるアルバムかと。
どれも品のある趣味の良い演奏なので、うるさい演奏をあまり好まない印象がある、クラッシックなんかがお好きな方にも聴いて欲しいですね。
いきなりベースの弓弾きから始まる1曲目「Yesterdays」は、ケニー・バレルの洗練された伴奏をバックに延々と弓弾きによるソロが続く、まさに「Bass On Top」な演奏となっております。
2曲目「You'd Be So Nice to Come Home To」は、ベースでテーマを弾くポール・チェンバースのテクニックに意識が行ってしまいがちですが。
ハンク・ジョーンズのバッキング・ピアノ、ケニー・バレルの洗練されたギター・ソロ、続くハンク・ジョーンズの上品なピアノ・ソロ、ポール・チェンバースのベース・ソロと、聴くべきポイントが多めな演奏となっております。
ケニー・バレルが主旋律を奏で、ポール・チェンバースがそれに寄り添うような形でテーマが進行する3曲目「Chasin' The Bird」。
ポール・チェンバース、ハンク・ジョーンズ、ケニー・バレル、アート・テイラーの順で控えめながら美しいソロが続きます。
ケニー・バレルがテーマを奏でる哀愁感漂う4曲目「Dear Old Stockholm」。
ポール・チェンバース、ケニー・バレル、ハンク・ジョーンズと品格高めなソロが続きますが、ソロのバックで奏でられる定型メロディというかバッキングが演奏をさりげなく盛り上げております。
5曲目「The Theme」はテーマの間にポール・チェンバースの弓弾きソロが挟み、そのままゆったりとしたベース弓弾きソロに突入していきます。
その後、ケニー・バレル、ハンク・ジョーンズとやや高揚したソロが続きます。
オリジナルアルバムの最後を飾る6曲目「Confessin'」はテーマ部から、いきなりポール・チェンバースのベース・ソロが始まる感じの演奏となっております。
ハンク・ジョーンズの品の良いソロを挟み、再びポール・チェンバースのベース・ソロっぽい後テーマに入ります。
7曲目の「Chamber Mates」は1986年にCD化された際(CP32-5203)、アルバムに追加された曲であり、また1984年、日本の東芝EMIから「Various Artists - The Other Side Of Blue Note 1500 Series (BNJ-61008/10)」というオムニバス・アルバム(アナログ・レコード)に収録され、初公開された様ですね。
軽快でアップテンポな曲であり、ポール・チェンバースが弓弾きでケニー・バレルとユニゾンでテーマを奏でた後、ケニー・バレル、ハンク・ジョーンズ、ポール・チェンバースと素敵なソロが続きます。
アナログ・レコード収録時間の都合でカットされたのだと思われますが、未発表曲がこれれだけ素晴らしい演奏だというのは流石、ブルーノート(Blue Note Records)ですね。
アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)が仕切っていた当時のブルーノートは、シングル盤は発売してもオムニバス・アルバムを発売する事はなかった様ですが、パシフィック・ジャズ・レコードの様にオムニバス・アルバムを制作していたら、こういう珠玉の演奏に注目が集まったのではないかと思ったりします。
まあ、モザイク・レコード(Mosaic Records)やCD再発時に追加収録される数々の未発表音源は、1975年頃から行われたマイケル・カスクーナ(Michael Cuscuna)の発掘作業が無ければ、永遠にお蔵入りしたままだったんだなあ、と思われますが。
アナログ・レコードからCDに移行し、収録時間が伸びた事は、デジタル化に際し音質面に問題はあったものの、音源の再調査に時間と費用が投入され、お蔵入りしてた未発表音源が次々と発掘されるきっかけを作った訳ですから、タイミング的には丁度良かったのかもしれません。
アナログのマスターテープも、デジタル化しておかないと劣化が進んで再生不能になるという話もありますしね・・・。
ついでに、日本制作ながら秀逸な出来の「Various Artists - The Other Side Of Blue Note 1500 Series (BNJ-61008/10)」はアナログ・レコードで発売した後、CDで再発された事がありませんが、そろそろ、そのまんまCD化して欲しいですね。
Paul Chambers - Bass On Top +1 (RVG)
Blue Note BST-81569 / 東芝EMI TOCJ-7034 [2007.09.26]
side 1 (A)
01. Yesterdays (Kern, Harbach) 5:53
02. You'd Be So Nice to Come Home To (Cole Porter) 7:16
03. Chasin' The Bird (Charlie Parker) 6:18
side 2 (B)
04. Dear Old Stockholm (traditional) 6:44
05. The Theme (Miles Davis) 6:15
06. Confessin' (Doc Daugherty, Ellis Reynolds, Neiburg) 4:13
CD Bonus Tracks
07. Chamber Mates (Kenny Burrell, Paul Chambers) 5:08
Hank Jones (p) Kenny Burrell (g) Paul Chambers (b) Art Taylor (ds)
July 14, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
あと、「Dear Old Stockholm」と「The Theme」に関しては、ポール・チェンバースが当時参加していたマイルス・デイヴィス(Miles Davis)のクインテットでも演奏していたバージョンと聴き比べてみると案外、面白いのかもしれません。