加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Kenny Dorham - Afro-Cuban (Blue Note) 1955」踊れるジャズの聖典

トランペッターのケニー・ドーハムKenny Dorham)が1955年、ブルーノート(Blue Note Records)で録音した二回のセッションから編纂されたアルバムが「Afro-Cuban (Blue Note BLP-1535)」です。

 

「Kenny Dorham - Afro-Cuban (Blue Note) 1955」踊れるジャズの聖典

 

最初10インチ・レコード「Afro-Cuban (Blue Note BLP-5065)」として発売された1955年03月29日録音の4曲に、1955年01月30日録音の3曲を追加収録しておりますが、ジャケットは違うものの、同じタイトル「Afro-Cuban」なのでネットで検索する際は多少混乱しますね。


日本においてはコンガ等のパーカッション入りの演奏は、敬遠される風潮があったようですが。

 

このアルバムに収録された「Afrodisia」は1980年代、「Acid Jazz」という、イギリスのロンドンで突如盛り上がった、DJがかけるノリの良いジャズのレコードに合わせて踊るというクラブ文化の中で、「踊れるジャズの聖典」として注目を集めた模様。

 

その頃から、踊れるジャズを集めたコンピレーション・アルバムに度々、「Afrodisia」が収録される様になりましたね・・・。

 


さて、1955年03月29日録音時のメンバーは、ケニー・ドーハムKenny Dorham)の他、トロンボーンのJ.J.ジョンソン(Jay Jay Johnson)、テナーサックスのハンク・モブレーHank Mobley)、バリトン・サックスのセシル・ペイン(Cecil Payne)、ピアノのホレス・シルヴァーHorace Silver)、ベースのオスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)、ドラムスのアート・ブレイキー(Art Blakey)、コンガのカルロス・ヴァルデス(Carlos "Patato" Valdes)、カウベルのリッチー・ゴールドバーグ(Richie Goldberg)となっております。

 

 

1曲目「Afrodisia」は、ケニー・ドーハムKenny Dorham)の自作曲です。

 


www.youtube.com

 

パーカッション二名が奏でるラテンなリズムに、アート・ブレイキーの躍動的なドラム、そしてホレス・シルヴァーのファンキーなピアノ・バッキングが気分を高揚させますね。

ケニー・ドーハムハンク・モブレー、J.J.ジョンソン、パーカッション二名、アート・ブレイキーの順に、テンション高めなソロが続きます。

 


2曲目「Lotus Flower」は、ケニー・ドーハムKenny Dorham)自作の美しいバラッド風味の演奏ですが、バラッド風味の演奏なのに、パーカッションが入っていると不思議な感じがしますね。

 

ケニー・ドーハムのかすれ気味なトランペット・ソロを聴いていると、霧の中に佇んでいるような錯覚に陥ります。

 


3曲目「Minor's Holiday」は、ケニー・ドーハムKenny Dorham)の自作曲で、CD追加曲として9曲目「Minor's Holiday [alternate take] 」が収録されております。

 


www.youtube.com

 

「The Jazz Messengers」名義のライブ・アルバムでも聴く事の出来る曲ですが、パーカッション入りのスタジオ録音も、重厚なアンサンブルと相まった高揚気味のソロが展開されております。

 

kaji-jazz.hatenablog.com

 

ケニー・ドーハムのソロは勿論ですが、ハンク・モブレー、J.J.ジョンソンのファンキーなソロも聴きどころ満載。

 

CD追加曲の別テイクも本テイクと遜色ない出来で、ソロが若干異なるだけですね。

 


4曲目「Basheer's Dream」は、ジジ・グライス (Gigi Gryce) の作品で、ケニー・ドーハムの自作曲より、ラテン風味がやや強い感じの演奏。

 

編曲も行うジジ・グライスだけあり、ソロのバックで登場するアンサンブルやセカンド・リフなども秀逸ですね。

 

 

1955年01月30日録音のメンバーは、ケニー・ドーハムKenny Dorham)の他、テナーサックスのハンク・モブレーHank Mobley)、バリトン・サックスのセシル・ペイン(Cecil Payne)、ピアノのホレス・シルヴァーHorace Silver)、ベースのパーシー・ヒース(Percy Heath)、ドラムスのアート・ブレイキー(Art Blakey)です。

 

パーカッションが居ない分だけ、ハード・バップ風味が増した演奏の様に思えます。

 


5曲目「K.D.'s Motion」は、ケニー・ドーハムKenny Dorham)のファンキーな自作曲。

 


www.youtube.com

 

やや荒ぶるアート・ブレイキーに、ファンキーなピアノ・バッキングで盛り上げるホレス・シルヴァーをバックに、ケニー・ドーハム、セシル・ペイン、ハンク・モブレーと軽快なソロが続きます。

 


6曲目「La Villa」は、ケニー・ドーハムKenny Dorham)が書いた、アート・ブレイキーの豪快なドラム・ソロから始まるアップテンポの曲です。

 

前のめり気味なソロを展開するケニー・ドーハム、余裕を残しつつフレーズを紡いでいくハンク・モブレー、若干のリードミスもものともせず豪快なソロを聴かせるセシル・ペインと、フロント三者三様の演奏をお楽しみいただけます。

 


7曲目「Venita's Dance」は、哀愁漂うケニー・ドーハムKenny Dorham)の自作曲。

こういう曲調だと、ケニー・ドーハムのかすれ気味の音色がうまくハマる感じがしますね。

 


CD追加曲の8曲目「Echo Of Spring (K.D.'s Cab Ride) 」は、明るさの中に一抹の哀愁を感じるケニー・ドーハムKenny Dorham)の自作曲。

 

サックス陣のアンサンブルをバックに、ケニー・ドーハムが哀愁感たっぷりのソロを展開していきます。

 

 

Kenny Dorham - Afro-Cuban +2 (RVG)
Blue Note BLP-1535 / 東芝EMI TOCJ-7031 [2007.09.26] 

side 1
01. Afrodisia (Kenny Dorham)  5:06
02. Lotus Flower (Kenny Dorham)  4:16
03. Minor's Holiday (Kenny Dorham)  4:27
04. Basheer's Dream (Gigi Gryce)  5:03

side 2
05. K.D.'s Motion (Kenny Dorham)  5:28
06. La Villa (Kenny Dorham)  5:23
07. Venita's Dance (Kenny Dorham)  5:22

CD Bonus Tracks
08. Echo Of Spring (K.D.'s Cab Ride) (Kenny Dorham)  6:11
09. Minor's Holiday [alternate take] (Kenny Dorham)  4:24


#01-04,09  March 29, 1955 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

Kenny Dorham (tp) Jay Jay Johnson (tb) Hank Mobley (ts) Cecil Payne (bs) 
Horace Silver (p) Oscar Pettiford (b) Art Blakey (ds) 
Carlos "Patato" Valdes (congas) Richie Goldberg (cowbell)


#05-08  January 30, 1955 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

Kenny Dorham (tp) Hank Mobley (ts) Cecil Payne (bs) Horace Silver (p) Percy Heath (b)

Art Blakey (ds)

 

 

因みに10インチレコードで発売された時の曲順等詳細は、下記の通りです。

 

「Kenny Dorham - Afro-Cuban (Blue Note) 1955」踊れるジャズの聖典

Kenny Dorham – Afro-Cuban
Blue Note BLP-5065 / 東芝EMI BN-0017 [1991.09.13]
Blue Note Original 5000 Series Collection


side 1 (A)
01. Minor's Holiday (Kenny Dorham)  4:27
02. Lotus Flower (Kenny Dorham)  4:16

side 2 (B)
03. Afrodisia (Kenny Dorham)  5:06
04. Basheer's Dream (Gigi Gryce)  5:03


Kenny Dorham (tp) Jay Jay Johnson (tb) Hank Mobley (ts) Cecil Payne (bs) 
Horace Silver (p) Oscar Pettiford (b) Art Blakey (ds) 
Carlos "Patato" Valdes (congas) Richie Goldberg (cowbell)

March 29, 1955 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

 

 

ケニー・ドーハムKenny Dorham)名義の「Afro-Cuban (Blue Note BLP-1535)」は、「The Jazz Messengers」の構成メンバーがほぼ揃っているアルバムでありますが。

彼らが録音当時、ケニー・ドーハムの演奏を引き立てるには最適なメンバーだったんでしょうね。

 


ついでに、日本が誇る「ジャズ喫茶」文化では、「踊れるジャズ」が敬遠されたのは仕方ない事ではありますが、今振り返ると1980年代後半から盛り上がった「野外ジャズ・フェスティバル」において、会場を盛り上げた観客は、「踊れるジャズ」好きな層であったのではないかと思ったりします。

 

そういえば長野県の斑尾で開催されてたニューポート・ジャズ・フェステイバルで、(放送局の仕込みだったであろう)観客席で突然踊り出す女性の後ろに偶然居た私まで、何故かテレビで放映された事がありまして。

 

当時、放送されたテレビ映像を見てて吹き出した事を思い出しました(笑)。

 

録画したVHSテープ、何処いったかなあ・・・。