シカゴ出身のアルトサックス奏者、ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)がブルーノート(Blue Note Records)に残した唯一のリーダー作が「John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note BLP-1573)」です。
ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)以外には、若手有望株として売り出し中であったギターのケニー・バレル(Kenny Burrell)を筆頭に、ブルーノート(Blue Note Records)のハウス・ピアニストとして活躍していたソニー・クラーク(Sonny Clark)、ベースにはお馴染みのポール・チェンバース(Paul Chambers)、ドラムスは珍しくダニー・リッチモンド(Dannie Richmond)という、ブルーノートとしては変わったメンバー構成となっております。
全編、ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)の哀愁漂うこれぞハード・バップ!的な演奏ではありますが、そこにケニー・バレル(Kenny Burrell)とソニー・クラーク(Sonny Clark)が都会的なエッセンスを振りかけ、さらに聴きやすく魅力的にしている様にも思えます。
なお、私が所有する長年探し続けようやく確保したCDは、1996年に米「Blue Note Connoisseur Series」で発売されたもので、編集が施された2曲を除いた4曲がステレオ・バージョンで収録されており、残りの2曲も未編集のテイクを、ステレオ・バージョンとして収録しております。
ちなみに後述する、日本で発売されたCDは全て「mono」バージョンでの収録らしいですが、1999年発売のRVG盤(TOCJ-9150)が一番、このアルバムの魅力を引き出しているものと思われます。
1曲目「From This Moment On」は、コール・ポーター(Cole Porter)作曲のアップテンポで演奏される哀愁漂う典型的なハード・バップ風味満載の演奏。
この演奏を聴いたブルーノート(Blue Note Records)ファンであれば、誰もが「Jackie McLean - Swing, Swang, Swingin' (Blue Note BST-84024)」収録の名演「Let's Face the Music and Dance」を思い出す事でしょう・・・。
ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)も、ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)そっくりの哀愁漂うソロ・フレーズを連発し、聴いている人の感情に訴えかけてきます。
ケニー・バレル(Kenny Burrell)の洗練された都会的なギター・ソロも素晴らしい。
2曲目「Motif」は、ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)自作のブルース。
ポール・チェンバース(Paul Chambers)のベース・ソロから始まり、短めのフレーズを反復する感じで構成されたテーマ部が奏でられます。
ジョン・ジェンキンスはジャッキー・マクリーンの毒気を少し薄めた風味の哀愁漂うソロを聴かせ、続くケニー・バレル、ソニー・クラーク、ポール・チェンバースは都会的というか洗練されたブルージーなソロを聴かせてくれます。
3曲目「Everything I Have Is Yours」は、美しいバラッド。
洗練されたソニー・クラークの美しいピアノ・イントロに導かれ、ジョン・ジェンキンスのアルト・サックスが聴こえる辺りで思わず、感嘆のため息が出てしまいます。
続くケニー・バレルの乾いたギター・ソロ、ソニー・クラークのやや耽美的なソロも素晴らしいです。
ソロの最後に登場するジョン・ジェンキンスは、縦横無尽にアルト・サックスを吹きまくっておりますが、まったくクドく感じる事もなく、ポール・デスモンド(Paul Desmond)に通じるお洒落な雰囲気が漂っております。
4曲目の「Sharon (mono take)」は、ややアップテンポで演奏されるジョン・ジェンキンス(John Jenkins)の自作曲。この演奏は「take 7」を編集し、一部「take 6」の音源を挿入したもの。なお、ボーナストラック収録の7曲目「Sharon (alternate stereo take)」は、未編集の「take 7」なんだそうです。
ケニー・バレルがシングル・トーン中心のホーン・ライクなソロを聴かせた後、ジョン・ジェンキンスのやや高揚気味なソロが続きます。
しかしまあ、ソニー・クラークとポール・チェンバースも好調ですね。
ドラムスのダニー・リッチモンド(Dannie Richmond)とジョン・ジェンキンスのソロ交換を経て、後テーマに突入していきます。
5曲目の「Chalumeau (mono take)」は、ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)の自作曲。この演奏は「take 2」を編集し、一部「take 1」の音源を挿入したもので、ボーナストラック収録の8曲目「Chalumeau (alternate stereo take)」は、未編集の「take 2」となります。
ソニー・クラークの軽快にスイングするピアノに導かれ、ジョン・ジェンキンスが豪快にスイングする素晴らしいアルト・サックス・ソロを聴かせてくれます。
しかし、ジョン・ジェンキンスはジャッキー・マクリーンと同じソロ・フレーズ使うんですね(笑)。
6曲目の「Blues For Two」は、アップテンポで演奏されるケニー・バレル(Kenny Burrell)からの洗練されたブルース進行で作られた提供曲。
ソロの先発はソニー・クラークで、続く作曲者でもあるケニー・バレルの洒脱なソロの後、ジョン・ジェンキンスの濁った感じの音色のソロが続きます。
ポール・チェンバースの軽快な弓弾きソロの後、ダニー・リッチモンドの短めなドラム・ソロを経て後テーマに戻っていきます。
John Jenkins - John Jenkins With Kenny Burrell +2 (BN Connoisseur)
Blue Note BLP-1573 / CDP 7243 8 52437 2 1 [1996] Blue Note Connoisseur Series
side 1 (A)
01. From This Moment On (Cole Porter) 7:37
02. Motif (John Jenkins) 6:14
03. Everything I Have Is Yours (B. Lane, H. Adamson) 6:10
side 2 (B)
04. Sharon (mono take) (John Jenkins) 7:47
05. Chalumeau (mono take) (John Jenkins) 5:56
06. Blues For Two (Kenny Burrell) 4:42
CD Bonus Tracks
07. Sharon (alternate stereo take) (John Jenkins) 6:27
08. Chalumeau (alternate stereo take) (John Jenkins) 5:58
John Jenkins (as) Kenny Burrell (g) Sonny Clark (p) Paul Chambers (b)
Dannie Richmond (ds)
August 11, 1957 at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
#01-03,06: master takes issued in stereo for the first time
#04,05: master takes in mono
#07,08: previously unissued partial alternate takes in stereo
今、手元で眺めている「決定版ブルーノート・ブック(ジャズ批評編集部・編)」には、このアルバムの解説の〆に「ハードバップ・ファン必聴のアルバムだ」と記されておりますが、まあ、さりもありなん。
ジャズ喫茶で「John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note BLP-1573)」を聴いた人が、その足で中古レコード屋さんに向かってしまうような、何とも言えない魅力を持ったアルバムだと思います。
John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note BLP-1573)
●東芝EMI TOCJ-1573 [1996.08.28] The BN Works 1500 Series
●東芝EMI TOCJ-9150 [1999.11.26] 24 Bit By RVG
●東芝EMI TOCJ-6557 [2005.08.24] Blue Note 決定盤1500
●Universal Muisic UCCQ-9523 [2019.07.17] Blue Note 80 More 60 Works