加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note) 1957」ハード・バップの隠れ名盤

シカゴ出身のアルトサックス奏者、ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)がブルーノート(Blue Note Records)に残した唯一のリーダー作が「John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note BLP-1573)」です。

 

「John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note) 1957」ハード・バップの隠れ名盤


ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)以外には、若手有望株として売り出し中であったギターのケニー・バレルKenny Burrell)を筆頭に、ブルーノート(Blue Note Records)のハウス・ピアニストとして活躍していたソニー・クラークSonny Clark)、ベースにはお馴染みのポール・チェンバースPaul Chambers)、ドラムスは珍しくダニー・リッチモンド(Dannie Richmond)という、ブルーノートとしては変わったメンバー構成となっております。

 

全編、ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)の哀愁漂うこれぞハード・バップ!的な演奏ではありますが、そこにケニー・バレルKenny Burrell)とソニー・クラークSonny Clark)が都会的なエッセンスを振りかけ、さらに聴きやすく魅力的にしている様にも思えます。


なお、私が所有する長年探し続けようやく確保したCDは、1996年に米「Blue Note Connoisseur Series」で発売されたもので、編集が施された2曲を除いた4曲がステレオ・バージョンで収録されており、残りの2曲も未編集のテイクを、ステレオ・バージョンとして収録しております。

 

ちなみに後述する、日本で発売されたCDは全て「mono」バージョンでの収録らしいですが、1999年発売のRVG盤(TOCJ-9150)が一番、このアルバムの魅力を引き出しているものと思われます。

 

 

1曲目「From This Moment On」は、コール・ポーターCole Porter)作曲のアップテンポで演奏される哀愁漂う典型的なハード・バップ風味満載の演奏。

 


www.youtube.com


この演奏を聴いたブルーノート(Blue Note Records)ファンであれば、誰もが「Jackie McLean - Swing, Swang, Swingin' (Blue Note BST-84024)」収録の名演「Let's Face the Music and Dance」を思い出す事でしょう・・・。

 

 

ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)も、ジャッキー・マクリーンJackie McLean)そっくりの哀愁漂うソロ・フレーズを連発し、聴いている人の感情に訴えかけてきます。

 

ケニー・バレルKenny Burrell)の洗練された都会的なギター・ソロも素晴らしい。

 


2曲目「Motif」は、ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)自作のブルース。

 

ポール・チェンバースPaul Chambers)のベース・ソロから始まり、短めのフレーズを反復する感じで構成されたテーマ部が奏でられます。

 

ジョン・ジェンキンスジャッキー・マクリーンの毒気を少し薄めた風味の哀愁漂うソロを聴かせ、続くケニー・バレルソニー・クラークポール・チェンバースは都会的というか洗練されたブルージーなソロを聴かせてくれます。

 


3曲目「Everything I Have Is Yours」は、美しいバラッド。

 


www.youtube.com

 

洗練されたソニー・クラークの美しいピアノ・イントロに導かれ、ジョン・ジェンキンスのアルト・サックスが聴こえる辺りで思わず、感嘆のため息が出てしまいます。

 

続くケニー・バレルの乾いたギター・ソロ、ソニー・クラークのやや耽美的なソロも素晴らしいです。

 

ソロの最後に登場するジョン・ジェンキンスは、縦横無尽にアルト・サックスを吹きまくっておりますが、まったくクドく感じる事もなく、ポール・デスモンドPaul Desmond)に通じるお洒落な雰囲気が漂っております。

 

 

4曲目の「Sharon (mono take)」は、ややアップテンポで演奏されるジョン・ジェンキンス(John Jenkins)の自作曲。この演奏は「take 7」を編集し、一部「take 6」の音源を挿入したもの。なお、ボーナストラック収録の7曲目「Sharon (alternate stereo take)」は、未編集の「take 7」なんだそうです。

 

ケニー・バレルがシングル・トーン中心のホーン・ライクなソロを聴かせた後、ジョン・ジェンキンスのやや高揚気味なソロが続きます。

 

しかしまあ、ソニー・クラークポール・チェンバースも好調ですね。

 

ドラムスのダニー・リッチモンド(Dannie Richmond)とジョン・ジェンキンスのソロ交換を経て、後テーマに突入していきます。

 

 

5曲目の「Chalumeau (mono take)」は、ジョン・ジェンキンス(John Jenkins)の自作曲。この演奏は「take 2」を編集し、一部「take 1」の音源を挿入したもので、ボーナストラック収録の8曲目「Chalumeau (alternate stereo take)」は、未編集の「take 2」となります。

 

ソニー・クラークの軽快にスイングするピアノに導かれ、ジョン・ジェンキンスが豪快にスイングする素晴らしいアルト・サックス・ソロを聴かせてくれます。

 

しかし、ジョン・ジェンキンスジャッキー・マクリーンと同じソロ・フレーズ使うんですね(笑)。

 

 

6曲目の「Blues For Two」は、アップテンポで演奏されるケニー・バレルKenny Burrell)からの洗練されたブルース進行で作られた提供曲。

 


www.youtube.com

 

ソロの先発はソニー・クラークで、続く作曲者でもあるケニー・バレルの洒脱なソロの後、ジョン・ジェンキンスの濁った感じの音色のソロが続きます。

 

ポール・チェンバースの軽快な弓弾きソロの後、ダニー・リッチモンドの短めなドラム・ソロを経て後テーマに戻っていきます。

 

 

John Jenkins - John Jenkins With Kenny Burrell +2 (BN Connoisseur)
Blue Note BLP-1573 / CDP 7243 8 52437 2 1 [1996] Blue Note Connoisseur Series

 

side 1 (A)
01. From This Moment On (Cole Porter)  7:37
02. Motif (John Jenkins)  6:14
03. Everything I Have Is Yours (B. Lane, H. Adamson)  6:10

side 2 (B)
04. Sharon (mono take) (John Jenkins)  7:47
05. Chalumeau (mono take) (John Jenkins)  5:56
06. Blues For Two (Kenny Burrell)  4:42

 

CD Bonus Tracks
07. Sharon (alternate stereo take) (John Jenkins)  6:27
08. Chalumeau (alternate stereo take) (John Jenkins)  5:58


John Jenkins (as) Kenny Burrell (g) Sonny Clark (p) Paul Chambers (b) 
Dannie Richmond (ds) 

August 11, 1957 at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.


#01-03,06: master takes issued in stereo for the first time
#04,05: master takes in mono

#07,08: previously unissued partial alternate takes in stereo

 

 

 

今、手元で眺めている「決定版ブルーノート・ブック(ジャズ批評編集部・編)」には、このアルバムの解説の〆に「ハードバップ・ファン必聴のアルバムだ」と記されておりますが、まあ、さりもありなん。

 

 

ジャズ喫茶で「John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note BLP-1573)」を聴いた人が、その足で中古レコード屋さんに向かってしまうような、何とも言えない魅力を持ったアルバムだと思います。

 

John Jenkins With Kenny Burrell (Blue Note BLP-1573)

東芝EMI TOCJ-1573 [1996.08.28] The BN Works 1500 Series
東芝EMI TOCJ-9150 [1999.11.26] 24 Bit By RVG
東芝EMI TOCJ-6557 [2005.08.24] Blue Note 決定盤1500
●Universal Muisic UCCQ-9523 [2019.07.17] Blue Note 80 More 60 Works