ビバップ・オルガン・ジャズのパイオニア、ジミー・スミス(Jimmy Smith)のアルバム「Plays Pretty Just For You (Blue Note BLP-1563)」は、いつもと雰囲気をガラっと変え、古来からのオルガン奏法に立ち返った如きオーソドックスな演奏を楽しむ事が出来ます。
つまり、ジミー・スミス(Jimmy Smith)が得意とする、ゴリゴリと鍵盤を縦横無尽に弾く手法は封印し、私含め一般の人がイメージするロングトーン主体でオルガンを響かせる演奏手法に終始しております。
ジミー・スミス(Jimmy Smith)の他、ギターのエディ・マクファデン(Eddie McFadden)、ドラムスのドナルド・ベイリー(Donald Bailey)というレギュラー・トリオによる演奏。
このアルバムには8曲ほど収録されておりますが、そのうち6曲が「Jimmy Smith - Penthouse Serenade / I Can't Get Started (Blue Note 45-1682)」、「Jimmy Smith - East Of The Sun / The Very Thought Of You (Blue Note 45-1683)」、「Jimmy Smith - There'll Never Be Another You / The Jitterbug Waltz (Blue Note 45-1686)」という形でシングル・カットされており、シングル用に用意されたセッションをアルバムとしても発売したという風に捉える事も出来ますね。
まあ、ジミー・スミス(Jimmy Smith)が、有名スタンダードを揃えたスロー・バラッド集という風に言い換える事も出来ますかね・・・・という事で各曲毎の感想はほぼ、同じです・・・変化の付けようがない(笑)。
1曲目「The Nearness Of You」は、スローテンポで演奏される美しいバラッド。
2曲目「The Jitterbug Waltz」は、ファッツ・ウォーラー (Fats Waller)の作品。3拍子で演奏される、少し陽気な雰囲気も漂う曲です。
3曲目「East Of The Sun」は、今までリズムキープ的な脇役に徹していたドナルド・ベイリーのドラムスがやや前面に出た感じの演奏。いつものジミー・スミス・トリオの演奏を多少、抑え気味にしている風ですかね。
4曲目「Autumn In New York」は、美しく奏でられるスロー・バラッド風味の演奏です。
5曲目「Penthouse Serenade」は、ちょっとファンキー風味を感じられる演奏。この曲も、ドラムが控えめに叩いているせいか、耳触りの良い、非常に聴き易い演奏となっております。
6曲目「The Very Thought Of You」は、レイ・ノーブル(Ray Noble)の作品。この曲もドラム控えめで、しっとりと演奏されております。
7曲目「I Can't Get Started」は、バラッド演奏の定番曲でもありますが、少しファンキー風味を混ぜる事で、ジミー・スミスとエディ・マクファデンの技巧的なソロが引き立つ様に工夫されております。
8曲目「Old Devil Moon」は、アルバム最後の曲である為か、いつもの躍動感溢れるジミー・スミス・トリオの演奏が繰り広げられております。
アナログ・レコード時代は最初、モノラル盤が発売され、数年後に発売されたステレオ盤には、ジャケットの表面に「STEREO」と書かれたシールが張り付けてあった様です。
Jimmy Smith - Plays Pretty Just For You
Blue Note BLP-1563
side 1 (A)
01. The Nearness Of You (Hoagy Carmichael) 5:44
02. The Jitterbug Waltz (Fats Waller) 4:57
03. East Of The Sun (Bowman) 6:06
04. Autumn In New York (Vernon Duke) 4:24
side 2 (B)
05. Penthouse Serenade (Burton, Jason) 5:29
06. The Very Thought Of You (Ray Noble) 4:29
07. I Can't Get Started (Gershwin, Duke) 4:48
08. Old Devil Moon (Lane, Harburg) 5:42
Jimmy Smith (org) Eddie McFadden (g) Donald Bailey (ds)
May 8, 1957 at Manhattan Towers, NYC.
8曲中、6曲をシングル・カットしたり、有名スタンダードをバラッドで演奏したりと、コアなジャズ・ファン向けから一般大衆に販路を拡大する意図が見え見えなアルバムではありますが、以降、こういう路線のアルバムを制作しなかったのは、このはかなげな「バラッド集」が、思ったほど一般大衆にウケなかったという事なんでしょうかねえ。
以後のジミー・スミスは、得意とするファンキーでソウルフルな路線を突っ走り、ヒット・チャートにも顔を出す様になります・・・。
●Jimmy Smith - Plays Pretty Just For You (Blue Note BLP-1563)
東芝EMI TOCJ-1563 [1996.06.26] The BN Works 1500 Series
東芝EMI TOCJ-9599 [2004.03.24] 24 Bit By RVG
東芝EMI TOCJ-6607 [2005.11.23] Blue Note 決定盤1500
Universal Music UCCQ-9493 [2019.06.19] Blue Note 80 More 60 Works