加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Hank Mobley – Hank (Blue Note) 1957」ジャズ喫茶の名盤的な渋い1枚

今回は、愛すべきテナー・サックス奏者、ハンク・モブレーHank Mobley)のアルバム「Hank (Blue Note BLP-1560)」です。

 

「1560」というキリの良いレコード番号を割り振っている事から、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)も力を入れて制作したアルバムであると推測されます。

 

「Hank Mobley – Hank (Blue Note) 1957」ジャズ喫茶の名盤的な渋い1枚


まあ、ジャズ誌でもあまり話題にも上らないし、私も今までスルーしてきたんですが(すまん)、意を決して聴いて見ると「ジャズ喫茶の名盤」的な、かなり渋いけれど演奏を聴くと「おっ」となる1枚だったんですねー。

 

今までスルーしてきた言い訳と言うか、個人的な感想を述べておくと、インパクト重視のジャケットを量産するブルーノート(Blue Note Records)らしからぬイラストを用いた抽象的すぎるデザインが購買意欲を刺激しなかったんです・・・。

 

ハンク・モブレーの他の未購入アルバムと比較して、少ない予算からどのアルバム入手しよーかなー、と悩んでいる時、印象薄い抽象的なジャケットから入手順位が下がっていった訳で(本当にすまん)。


さて、言い訳はこれ位にしときます(笑)。

 

 

「Hank Mobley – Hank (Blue Note) 1957」ジャズ喫茶の名盤的な渋い1枚


アルバム「Hank (Blue Note BLP-1560)」に参加する演奏メンバーは、テナー・サックスのハンク・モブレーHank Mobley)の他、トランペットのドナルド・バードDonald Byrd)、アルト・サックスのジョン・ジェンキンス(John Jenkins)、ピアノのボビー・ティモンズBobby Timmons)、ベースのウィルバー・ウェア(Wilbur Ware)、ドラムスのフィリー・ジョー・ジョーンズ("Philly" Joe Jones)という、渋めでちょっと刺激のあるハード・バップを演奏するのに最適なメンバーが揃っている気がします(当社比)。

 

 


アナログ・レコード時代のA面に相当する最初の2曲では、個々のソロもさる事ながら、ハンク・モブレーHank Mobley)の作編曲能力を存分に味わう事が出来る様に思えます。

 

1曲目の「Fit For A Hanker」は、ハンク・モブレーHank Mobley)の自作曲。

 


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相変わらす溌剌としたソロを聴かせてくれるドナルド・バード、癖のある尖った音色のジョン・ジェンキンス、ファンキー風味をまぶしたハード・バップ・フレーズを連発するボビー・ティモンズ、ブリッジを挟みウィルバー・ウェアのベース・ソロへと続きます。

 

ソロ最後にようやく登場するハンク・モブレー、持ち味のマイルドな音色で安定したソロを聴かせてくれますし、テーマを経て、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラム・ソロも飛び出します。


2曲目の「Hi Groove, Low Feed-Back」も、ハンク・モブレーHank Mobley)の自作曲。

 

ウィルバー・ウェアのベース・ランニングに導かれ、ちょっとファンキーなテーマが3管フロントで奏でられます。

 

ファンキーな曲なのに、そこはなとなくハード・バップ風味漂うのは、ドラムスがフィリー・ジョー・ジョーンズだからですね。

 

マイルドなハンク・モブレー、はちきれんばかりのふくよかな音色のドナルド・バード、ややマイルドなジャッキー・マクリーンJackie McLean)といった風情のジョン・ジェンキンス、ファンキーなボビー・ティモンズ、ちょっとすました感じのウィルバー・ウェアとソロ・リレーが繋がっていきます。

 

ハンク・モブレーフィリー・ジョー・ジョーンズによるソロ交換の後、セカンド・テーマが登場し、そのままエンディングに雪崩れ込みます。

 

 

アナログ・レコード時代のB面に相当する後半3曲は、スタンダード2曲に、バド・パウエル (Bud Powell)作曲の「異教徒の踊り(Dance Of The Infidels)」が演奏されております。

 

3曲目の「Easy To Love」は、フィリー・ジョー・ジョーンズのステックさばきが冴えるアップテンポで演奏される曲。

 

ちょっと尖った演奏を聴かせるハンク・モブレー、元気いっぱいのドナルド・バード
濁り気味の音色で刺激的なフレーズを連発するジョン・ジェンキンス、比較的スムーズなフレーズを弾きまくるボビー・ティモンズとソロが続きます。

 

フロント3名とフィリー・ジョー・ジョーンズによる軽快なソロ交換の後、後テーマを演奏する事なく、あっさり(笑)とエンディングに向かいます。

 


4曲目の「Time After Time」は、ボビー・ティモンズの哀愁感漂うピアノから始まる美しいバラッド。

 


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この手のバラッドを得意とするドナルド・バードにテーマを任せるあたりは、流石、ハンク・モブレー、参加メンバーの生かし方を分かっております(笑)。

 

ジョン・ジェンキンスボビー・ティモンズハンク・モブレーとソロが続き、最後はハンク・モブレー自身が中心となり演奏を締めくくります。

 


5曲目の「Dance Of The Infidels」は、バド・パウエル (Bud Powell)の作品。

 


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うねうねしたテーマが印象的なビバップ時代の曲ですが、確かブルース進行で作られていたはず。

 

フィリー・ジョー・ジョーンズが主導するハード・バップ風味の演奏でありながら、ほのかにファンキー風味漂う感じが面白いですね。

 

 

Hank Mobley – Hank (RVG)
Blue Note BLP-1560 / EMI Music Japan TOCJ-7181 [2008.12.26]     Blue Note RVG

side 1 (A)
01. Fit For A Hanker (Hank Mobley)  7:21
02. Hi Groove, Low Feed-Back (Hank Mobley)  9:53

side 2 (B)
03. Easy To Love (Cole Porter)  5:38
04. Time After Time (Styne-Cahn)  6:47
05. Dance Of The Infidels (Bud Powell)  7:53


Donald Byrd (tp) John Jenkins (as) Hank Mobley (ts) Bobby Timmons (p) 
Wilbur Ware (b) "Philly" Joe Jones (ds)

April 21, 1957 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.

 

 

 

このアルバムが録音された1957年は、騒がしいビバップが多少ゆったりとしたハード・バップに変遷し、さらにファンキー・ジャズに移り変わる時期に相当する分岐点に相当する事を、あえて意識してみると、色々な事が見えてきたりします。

 

例えば、ハード・バップ・スタイルのまま突き進むジョン・ジェンキンスフィリー・ジョー・ジョーンズの2名は以降、ジャズ界の話題の中で登場する事が少なくなりますね。

 

反面、ファンキー風味をほのかに感じさせるハンク・モブレードナルド・バードボビー・ティモンズの3名が1959年以降隆盛するファンキー・ジャズのアルバム群で大活躍する訳で・・・。

 

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アルバム「Hank (Blue Note BLP-1560)」は、派手さはそれほど感じさせない1枚ではありますが、ジャズの演奏スタイルが移り変わる端境期における、新しい演奏スタイルの萌芽をほのかに感じる事が出来るアルバムであったりもします。

 

蛇足ですが、「Hank Mobley – Hank (Blue Note BLP-1560)」の日本盤CDは、下記の様な感じで発売されております。

 

 東芝EMI TOCJ-1560 [1996.05.29]     The BN Works 1500 Series
 東芝EMI TOCJ-9185 [2000.02.23] 24 Bit By RVG
 東芝EMI TOCJ-6497 [2005.03.24]     Blue Note 決定盤1500
 EMI Music Japan TOCJ-7181 [2008.12.26]     Blue Note RVG
 Universal Music UCCQ-9174 [2015.07.01]     Blue Note The Finest 1100