「Curtis Fuller - The Opener (Blue Note) 1957」ハードバップ・トロンボーンの俊英登場
ブルーノート(Blue Note Records)で、リーダーアルバムを出したトロンボーン奏者といえば、ビバップ・トロンボーンの天才、J・J・ジョンソン(Jay Jay Johnson)が思い浮かびます。
第二弾が、今回紹介するハードバップ・トロンボーンの俊英、カーティス・フラー(Curtis Fuller)となります。
さて、カーティス・フラー(Curtis Fuller)が故郷デトロイトからニュー・ヨークへ進出した直後。
ブルーノート(Blue Note Records)における第1弾、「Curtis Fuller - The Opener (Blue Note BLP-1567)」が録音されました。
アルバム「The Opener (Blue Note)」では、レコード時代のAB面の頭に意表を突いたスロー・バラッドを配するという、方法も興味深かったりします。
ブルーノート(Blue Note Records)がトロンボーンの天才、J・J・ジョンソンの場合、わざわざ「ヴァルブ・トロンボーンにあらず」と書いてトロンボーンの超絶技巧を売りにしたのとは対照的に、トロンボーン本来の低音のゆったりした奏法を売りにしていたことが伺えます。
1曲目はワンホーン編成によるスロー・バラード「素敵な夜を(A Lovely Way To Spend An Evening)」。
テーマからソロにかけ、カーティス・フラーの低音たっぷりのソロが楽しめます。
続くボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)のやや抑え気味のピアノ・ソロ、ポール・チェンバース(Paul Chambers)のゆったりとしたベース・ソロもいいですねえ。
2曲目「Hugore」は、カーティス・フラー作曲のオリジナル・ブルース。
テナーサックスのハンク・モブレー(Hank Mobley)が加わった2管編成です。
やや遅めのテンポに乗り、フロントの2人は軽快にブローしております。
ピアノのボビー・ティモンズとベースのポール・チェンバースも、短いながらソロを披露します。
この自作のブルース、オーナーのアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)のリクエストによるものでしょう。
いつも通り、「選曲は君に任せる。ただし自作のブルースを1曲用意してくること。」って感じで(笑)。
3曲目「Oscalypso」はベース奏者、オスカー・ペティフォード(Oscar Pettiford)のオリジナル。
タイトルでもじってある、カリプソ風なエキゾチックなリズムであります。
この手のリズムだと、ハンク・モブレーとボビー・ティモンズが俄然、活き活きしてますねえ。
ソロの最後に挿入される、テーマ・ブレイクなどの「仕掛け」もきっかり決まってます。
4曲目「Here's To My Lady」は、LP時代はB面トップであったためか、1曲目と同じくワンホーンのスロー・バラッド。
つまり、技巧派J.J.ジョンソンと無用な比較をされないように、意図的にスロー・バラッドを配置しているのでしょう。
5曲目「Lizzy's Bounce」は、軽快なテンポのハード・バップ・ナンバー。
やや尻上がりにバウンス(跳ね)するリズム、カーティス・フラーの歯切れの良いソロが気持ちいいです。
アルバム・ラスト6曲目の「Soon」は、名作曲家ジョージ・ガーシウィンの作品。
こういった軽快な歌ものは、ハンク・モブレーがお得意でしょう。
ハンクの滑らかなソロに続き登場するカーティス・フラー、負けじと歌心いっぱいなソロを披露しております。
あ、ボビー・ティモンズの切れの良いソロのなかなか・・・・。
Curtis Fuller - The Opener (RVG)
Blue Note BLP-1567 / 東芝EMI TOCJ-9120 [1999.06.23] 24 Bit By RVG
side 1 (A)
01. A Lovely Way To Spend An Evening (Adamson, McHugh) 6:53
02. Hugore (Curtis Fuller) 6:44
03. Oscalypso (Oscar Pettiford) 5:40
side 2 (B)
04. Here's To My Lady (Mercer, Bloom) 6:44
05. Lizzy's Bounce (Curtis Fuller) 5:24
06. Soon (Gershwin) 5:36
Curtis Fuller (tb) Hank Mobley (ts #2,3,5,6) Bobby Timmons (p)
Paul Chambers (b) Art Taylor (ds)
June 16, 1957 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
決定版ブルーノート・ブック(株式会社松坂)を見ると1500番台での参加アルバムは、3枚のリーダー・アルバム含み、半年で10枚もありました。
これを眺める事で、ブルーノート(Blue Note Records)が物凄い勢いで、ハードバップ・トロンボーンの俊英、カーティス・フラー(Curtis Fuller)を録音していたことが分ります。
01. 1957.06.02『Cliff Jordan - Cliff Jordan [BN1565]』
02. 1957.06.16『Curtis Fuller - The Opener [BN1567]』
03. 1957.07.21『Sonny Clark - Dial "S" For Sonny [BN1570]』
04. 1957.08.03『The Amazing Bud Powell Vol.3 - Bud! [BN1571]』
05. 1957.08.04『Curtis Fuller Vol.2 - Bone & Bari [BN1572]』
06. 1957.08.25『Lee Morgan - City Lights [BN1575]』
07. 1957.09.01『Sonny Clark - Sonny's Crib [BN1576]』
08. 1957.09.15『John Coltrane -Blue Train [BN1577]』
09. 1957.12.01『Curtis Fuller - Curtis Fuller Vol.3 [BN1583]』
10. 1957.12.15『Lou Donaldson - Lou Takes Off [BN1591]』
その後、カーティス・フラーがサヴォイ(Savoy Records)に移籍するため、ブルーノート(Blue Note Records)による録音は途絶えることとなります。