「Bud Powell - Jazz At Massey Hall Vol. 2 (Debut) 1953」伝説のマッセイホールでのトリオ録音
「Jazz At Massey Hall (Debut DEB-124)」は1953年05月15日、カナダ・トロントの「Massey Hall」で開催されたビバップの巨人達が競演する歴史的なコンサートの実況録音盤ですが・・・。
もう1枚、同日録音の「Jazz At Massey Hall Vol. 2 (Debut DLP-3)」が発売されている事を知ってる方は、余程のジャズファンでない限り知らないと思います。
私は一度、米ファンタジー社の再発専門レーベル「OJC(Original Jazz Classics)」のレコードで買ったのですが、一度手放してしまったのでつい最近、CDで買い直しました。
いずれも癖の強すぎるメンバーですが、バド・パウエル(Bud Powell)は、強制入院から退院した後で、口の悪いファンがいう処の「抜け殻」状態になった後の演奏です。
まあ「抜け殻」と表現しましたが、時折聴かせるセンスある演奏は、強制入院・治療前の狂気を孕む熱狂的な演奏より、私は好きだったりします。
例えば、バド・パウエルの自作曲「Sure Thing」などは、リラックスムード満点の味わい深い演奏で、ピリピリしすぎてる初期の演奏より好きですけどねえ。
アップテンポの「(Jubilee) Hallelujah」では、軽快なソロを披露しているので、渡欧前の時期にあたるこの演奏を聴く限り、「抜け殻」なんて表現は言い過ぎであると思えます。
まあ渡欧してからは「心此処にあらず」的な、「抜け殻」状態だった事もあるようで。
「意識が遠くなる」みたいな感じでライブの時、バド・パウエルの奥さんが横に居り、奥さんが演奏の開始と終わりをバド・パウエルに告げる必要があったとかいう話も読んだ事あります・・・。
ただ、「Jazz At Massey Hall Vol. 2 (Debut DLP-3)」に収録された演奏に関しては、比較的安定していると思います。私は好きですけど。
※レコード裏ジャケットは「Discogs」からお借りしました。
なおCD発売に際し、「デビュー(Debut Records)」に残された未発表音源が追加されたようですが。
発売時期により収録曲目(数)が異なるようなので、注意が必要です。
私が所有するCDでは、まず8~11曲目が「George Duvivier (b) Art Taylor (ds)」
による演奏。
参考までにバラッドの「My Devotion」を貼っておきます。
12~16曲目が何故か、ピアノがビリー・テイラー(Billy Taylor)で、ベースがチャールス・ミンガス(Charles Mingus)のトリオによる演奏が収録されております。
参考までに、「Bass-ically Speaking」を貼っておきます。
Bud Powell - Jazz At Massey Hall Vol. 2
Debut DLP-3 / Victor Entertaiment VICJ-2023 [1996.03.06]
Masters Of Jazz - The History Series – 23
01. Drum Conversation (Max Roach) 4:02
02. I've Got You Under My Skin (Cole Porter) 2:49
03. Embraceable You (George Gershwin) 4:21
04. Sure Thing (Bud Powell) 2:11
05. Cherokee (Ray Noble) 4:49
06. (Jubilee) Hallelujah (Youmans-Robin-Grey) 3:51
07. Lullaby Of Birdland (Shearing-Weiss) 2:34
◆Bud Powell Trio [George Duvivier (b) Art Taylor (ds)]
08. My Devotion (Hillman-Napton) 2:34
09. Polka Dots And Moonbeams (Burke-Van Heusen) 4:01
10. My Heart Stood Still (Rodgers-Hart) 3:29
11. I Want To Be Happy (Caesar-Youmans) 4:55
◆Billy Taylor Trio [Summer 1953, NYC.]
12. Bass-ically Speaking (Charles Mingus) 3:59
13. Bass-ically Speaking (alternate take 1) (Charles Mingus) 3:58
14. Bass-ically Speaking (alternate take 2) (Charles Mingus) 3:50
15. Bass-ically Speaking (alternate take 3) (Charles Mingus) 3:51
16. [Untitled Blues] (Charles Mingus) 2:35
#01-07 May 15, 1953 at Massey Hall, Toronto, Canada.
Bud Powell (p) Charles Mingus (b) Max Roach (ds)
#08-11 During A Nightclub Engagement
Bud Powell (p) George Duvivier (b) Art Taylor (ds)
#12-16 Summer 1953, NYC.
Billy Taylor (p) Charles Mingus (b) Unknown (ds)
さて最近、世に出回っている「Complete Jazz At Massey Hall」なる音源の収録曲を眺めてみると、クインテットによる演奏を挟んで、ピアノのバド・パウエル(Bud Powell)、ベースのチャールス・ミンガス(Charles Mingus)、ドラムスのマックス・ローチ(Max Roach)というトリオによる演奏が行われたようです。
前回ご紹介した「Jazz At Massey Hall (Debut)」のアルバムレビューに書いた、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)がボクシングの試合が気になって・・・という話に関連しますが。
「当日は最初にクインテットでの演奏。演奏が終わり一旦会場の外に出たメンバーが、演奏開始時間までに戻ってこなかった」
という話があったと昔、他の資料を読んだ記憶があります。
これ、ディジー・ガレスピーがボクシングの試合見たさに、中々会場に戻って来なかったという話だとすれば・・・。
休憩を挟んでトリオでの演奏を始めたものの、ディジーが中々戻って来ないため、場繋ぎをする必要が生じ、頭にきたベースのチャールス・ミンガスが癇癪を起した・・・という当日の会場の様子を、妄想する事が出来ますね。
演奏したメンバーはすでに故人であるため、真偽は会場に居た人のみぞ知る・・・ですが(笑)。
下記は、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)の音源を専門に扱っているらしい「Bird's Nest」というレコード会社から発売されているものですが。
こちらでも「Jazz At Massey Hall」のライブの全貌を収録されているようです。