「Freddie Hubbard - Open Sesame (Blue Note) 1960」ティナ・ブルックスの好助演が光る1枚
日本でも絶大なる人気を誇るトランペッター、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)が、ブルーノート(Blue Note Records)で1960年に録音した初リーダー・アルバムが「Open Sesame (Blue Note BST-84040)」。
ブルーノート(Blue Note Records)にとっては、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)は初起用だった模様。
にもかかわらず、初リーダー・アルバムを企画し成功させてしまうレーベル・オーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)の新人発掘能力と、プロデュース能力の凄さを、あらためて実感出来る作品でもあります。
また、音楽監督的立場でテナー・サックスのティナ・ブルックス(Tina Brooks)も、自作曲を携え参加。ティナ・ブルックスの好助演により、度々再発される人気盤でもあります。
という訳で、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)も参加する番号続きの「Tina Brooks - True Blue (Blue Note BST-84041)」と合わせて聴くことをお勧めしておきます。
さて、マルチリード奏者のエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)に薦められ、スモールズ・パラダイスまでフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)の演奏を聴きにいったアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)は、フレディ・ハバードの素晴らしい演奏に魅了された模様。
そこで、彼をブルーノートに迎えるにあたり、いきなりリーダー作の制作を持ち掛けたようで、その理由として、(小川隆夫さんが行った)アルフレッド・ライオンへのインタビュー記事にある通り、フレディ・ハバードのライブを見て、「クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)の再来が登場した!」と思った為らしいです。
ただしアルフレッド・ライオンはリーダーアルバムを録音する際、フレディ・ハバードに対して1つだけ条件をつけたそうです。
それは「(麻薬を止めて)クリーンな生活を送る」ことだったそうで。
その他、親身になってバックアップしてくれるアルフレッド・ライオンの気持ちに応えるべく録音したのが本作「オープン・セサミ(オマジナイの開け、ゴマ!の意)」という訳です。
演奏面のサポートとして、同じく売り出し中の新人テナー奏者、ティナ・ブルックス(Tina Brooks)を起用。ティナも演奏に作曲にと大活躍します。
つまりこのアルバム、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)の溌剌としたトランペットを堪能と同時に、寡作なティナ・ブルックスのエキゾチックな曲とソロも楽しめる訳なんです。
オープニングの「Open Sesame」に関し原盤ライナーには、「ホレス・シルヴァー・クインテット」あるいは「昔のジャズ・メッセンジャーズ」タイプの曲だと解説されております。
確かにそう言われれば、この哀愁加減はホレスが書きそうな曲ですね。
演奏ではフレディ・ハバードの新人らしく溌剌したソロはもちろん、続くティナ・ブルックスのビターなソロもイケてます。
続く2曲目のバラッド「But Beautiful」は、フレディ・ハバードの伸びやかなトランペットが印象的な1曲。
3曲目は、再びティナ・ブルックス作曲の「Gypsy Blue」。
タイトル通りのエキゾチックなラテン・ビートに乗ったテーマがタマリマセン。
ネットを検索すると「Gypsy Blue」のテーマ譜面が出てきたりしますので、海外でも案外、人気の曲なのかもしれません。
4曲目は、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)のピアノ・ルバートから始まる、アップテンポの「All Or Nothing At All」。
フレディ・ハバード、バリバリ吹いてます。
5曲目は、ちょっとウキウキするようなミディアム・テンポの「One Mint Julep」。
ティナ・ブルックスに続き登場するフレディ・ハバードは、ちょっとやんちゃ(笑)なソロを聴かせてくれます。
ラスト6曲目はフレディ・ハバードの自作曲「Hub's Nub」。
如何にもフレディ・ハバードらしいアップテンポな曲です。
なお、「Open Sesame (alternate take) 」と「Gypsy Blue (alternate take)」という
追加曲2曲は、一聴するに「こんなの残ってましたー」的な、オマケ的演奏でございまして、過度の期待は無用です。
Freddie Hubbard - Open Sesame +2 (RVG)
Blue Note BST-84040 / Blue Note 7243 4 95341 2 4 [2002]
side 1 (A)
01. Open Sesame (Tina Brooks) 7:08
02. But Beautiful (J. Burke - J. Van Heusen) 6:23
03. Gypsy Blue (Tina Brooks) 6:25
side 2 (B)
04. All Or Nothing At All (A. Altman, J. Lawrence) 5:32
05. One Mint Julep (Rudolph Toombs) 6:00
06. Hub's Nub (Freddie Hubbard) 6:51
Bonus Tracks
07. Open Sesame (alternate take) (Tina Brooks) 7:14
08. Gypsy Blue (alternate take) (Tina Brooks) 7:35
Freddie Hubbard (tp) Tina Brooks (ts) McCoy Tyner (p)
Sam Jones (b) Clifford Jarvis (ds)
June 19, 1960 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
まあ、このデビュー・アルバムから、フレディ・ハバードのブルーノート(Blue Note Records)における快進撃が始まった訳でございますが。
この「Open Sesame (Blue Note BST-84040)」以降、「V.S.O.P. Quintet」やハービー・ハンコック(Herbie Hancock)のリーダー・アルバムで聴かれる演奏の方が、フレディ・ハバード自身のリーダーアルバムより「出来が上」という、彼のファンにはもどかしい状況が最晩年まで続いた事を付記しておきます。
一流のミュージシャンであっても、一流のリーダーになれる訳ではなく、自身のリーダー作であっても別途、音楽監督的存在が居ないとアルバムの出来が良くならないという不思議。
そして、サイドメンで気楽に好き勝手演奏した方が、良い結果(録音)を残す事が出来たのが、トランペッター、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)であったと思います。
かなりの枚数、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)のリーダーアルバム買ってみましたが、また聴きたいと思う作品は、「Open Sesame (Blue Note BST-84040)」除くと数枚だけなんですよね、正直な話。