「Eddie Henderson – Heritage (Blue Note) 1976」音量豊かで饒舌なトランペット
医師であった親父さん(義父)の人徳か、ジャズ・ミュージシャン達が子供の頃から度々、自宅に遊びに来ていたらしい、医師とトランペット奏者という、昼夜別々の仕事をこなすトランペット奏者のエディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)。
そんな自宅に遊びに来る中の一人であったマイルス・デイヴィス(Miles Davis)から、「俺のバンドに入らないか(意訳)」と誘われた事もあるみたいです(伝聞系)。
マイルスからも実力を認められたエディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)ですが。
ブルーノート(Blue Note Records)に所属して録音されたアルバムのうち、私が一番お気に入りなアルバムは、1975年に録音された1枚目の「Sunburst (Blue Note BN-LA464-G)」ではなく、1976年04月02日録音に録音された2枚目のアルバム「Heritage (Blue Note BN-LA636-G)」です(説明の文節、長いな)。
かなり前にボロボロで、ジャケットに穴が開いていた事からデッドストックだと推測される輸入アナログ盤を入手してから延々と、盛大なノイズにもめげず聴いていた事を思い出したりします。
アルバム「Heritage (Blue Note BN-LA636-G)」はファンク色の強目な、いわゆるフュージョン系のアルバムであり、古式ゆかしい日本のジャズ・ファンから眉をひそめられそうな内容であります(笑)。
1970年から1973年にかけハービー・ハンコック(Herbie Hancock)自ら「Mwandishi」と名乗る「ムワンディシ(Mwandishi)」バンドに参加し、「Mganga」名義で活動してたらしいエディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)。
その「ムワンディシ(Mwandishi)」バンドのトロンボーン奏者「Pepo Mtoto (Julian Priester)」と、ドラムスの「Jabali(Billy Hart)」が、このアルバムにも参加している事は、見逃せませんね。
要するに「Heritage (Blue Note BN-LA636-G)」は、「ムワンディシ(Mwandishi)」バンドの要素を受け継いだサウンドが特徴の一つであるアルバムの様でございます。
1曲目「Inside You」はパーカッション奏者、エムトゥーメ(James Mtume)の作品。
タイトに刻まれるリズムにのったスぺイシーなキーボード・サウンドをバックに、エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)の音量豊で饒舌なトランペットが響き渡ります。
2曲目「Acuphuncture」はトロンボーン奏者、ジュリアン・プリースター(Julian Priester)の作品で、ファンク風味なギター・カッティングとベースにのり、エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)が縦横無尽に爽快なトランペット・ソロを吹きまくっております。
3曲目「Time And Space」は、エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)の作品であり、音色が心地よいエレククトリック・ピアノをバックに、瞑想の導入部にぴったりな音空間と心地よいソロが続きます。
アナログ・レコードだとA面最後に配された4曲目「Nostalgia」はベース奏者らしい、
パット・オハーン(Pat O'Hearn)の作品。
リズム隊控えめで、これまたこの時代特有のエレクトリック・ピアノ類を駆使したスぺイシーなサウンドをバックに、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の「ネフェルティティ(Nefertiti)」の如き、ソロらしいソロがないまま演奏は終了していきます。
アナログ・レコードだとB面1曲目に相当する5曲目「Kudu」は、このアルバムでキーボード類を一手に引き受けている女流ピアニスト、パトリース・ラッシェン(Patrice Rushen)の作品。
エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)の穏やかなトランペット・ソロから、ビートの効いた重厚なホーン・アンサンブルが素晴らしいテーマ部との対比は、素敵ですし、「勢い余った」感じで猪突猛進に吹きまくるトランペット・ソロが素晴らしいです(笑)。
6曲目「Dr. Mganga」はドラム奏者らしい、ブレント・ラムポニ(Brent Ramponi)の作品で、リズム隊が刻む変拍子(多分、5拍子)にのり、軽々と壮絶なブローを聴かせてくれるエディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)には、頭が下がるばかりです。
7曲目「Dark Shadow」は、エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)の作品。
ベニー・モウピンと書こうと思ったら違ったな(笑)、ハドリー・カリマン(Hadley Caliman)吹く重厚なベース・クラリネットが先導するリズム・パターンにのり、エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)、ジュリアン・プリースター(Julian Priester)とファンキーなソロが続いていきます。
Eddie Henderson – Heritage
Blue Note BN-LA636-G / TOCJ-50579 [2013.03.20]
side 1 (A)
01. Inside You (James Mtume) 4:51
02. Acuphuncture (Julian Priester) 3:43
03. Time And Space (Eddie Henderson) 5:18
04. Nostalgia (Pat O'Hearn) 4:10
side 2 (B)
05. Kudu (Patrice Rushen) 6:06
06. Dr. Mganga (Brent Ramponi) 7:31
07. Dark Shadow (Eddie Henderson) 6:55
Eddie Henderson (tp,flh) Julian Priester (tb,bass-tb) Hadley Caliman (ss,bass-cl,fl)
Patrice Rushen (el-p,clavinet,synth) Paul Jackson (el-b) Mike Clark (ds #1-5)
Sonship (Woody Theus) (ds #6,7) Billy Hart (ds #7) Mtume (congas, per)
April 2, 1976 at Wally Heider Recording, San Francisco, CA.
エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)は、父親(義父)がジャズ・ミュージシャン達に馴染が深い医師であった為か、マイルス・デイビス(Miles Davis)らが家に遊びに来るという羨ましい環境で育った様です。
そして、大学で音楽と医学を習得した後は、昼は精神科医として働き、夜はミュージシャンとして活動するという日本でいう「二足の草鞋」を履き生活していた模様。
エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)が知られるきっかけは、1970年から1973年までハービー・ハンコック(Herbie Hancock)率いる「ムワンディシ(Mwandishi)」バンドのメンバーとして活動した事であり、同バンドのスタジオ録音で1970年録音の「Mwandishi (Warner Bros. WS-1898)」、1971年録音の「Crossings (Warner Bros. BS-2617)」、1972年の「Sextant (Columbia KC-32212)」の3作品に、「Mganga」名義で参加し、各地を演奏活動で巡る事で名声を高めていた様です。