加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Eddie Gale - Eddie Gale's Ghetto Music (Blue Note) 1968」洗練された音楽による主張

エディ・ゲイル(Eddie Gale)というトランぺッターは、フリー・ジャズ界の巨人の一人、セシル・テイラーCecil Taylor)のアルバム「Unit Structures (BST-84237)」で最初の注目を浴びたミュージシャンなんだそうです。

 

トランペットはビバップ時代から活躍するケニー・ドーハムKenny Dorham)に教えを請い、フリージャズ界の怪人、サン・ラ(Sun Ra)のバンドで研鑽を積むという、ジャズの歴史を全て俯瞰出来る環境で腕を磨いた、異色のトランぺッターの様です。

 

「Eddie Gale - Eddie Gale's Ghetto Music (Blue Note) 1968」洗練された音楽による主張

そんな彼が1968年09月20日に録音した「Eddie Gale's Ghetto Music (Blue Note BST-84294)」は、フロントの相方にラッセル・ライル(Russell Lyle)を従え、ダブル・ベースにダブル・ドラム、そして大勢のバックコーラスを配したアルバムです。

 

マックス・ローチMax Roach)が1960年09月に録音した「We Insist! Max Roach's Freedom Now Suite (Candid CJM-8002)」は、アフリカン・アメリカンへの人種差別に抗議する意味合いで制作された「政治的意図」を明確にしたアルバムですが。

 

 

この1968年に録音された「Eddie Gale's Ghetto Music (Blue Note BST-84294)」では、アメリカ都市部でアフリカン・アメリカン貧困層が形成する「ゲットー(Ghetto)社会」をテーマとしている様です。

 

洗練されたポリリズムと分厚いコーラスをバックに、過激なスピリチュアル・ジャズといった風情の混沌とした、R&Bからワールド・ミュージックまで混ぜ合わせた、何とも形容しがたい音楽が展開されております。

 

混沌としていると書きましたが、どの曲も高揚気味で悲痛を抱合した叫びを、かなり洗練した音楽として表現してるので、意外な事にすんなり聴き通せるんですよね。

 

メジャーレコード会社に吸収されたとはいえ、そんな辺りに老舗ジャズレーベルであるブルーノート(Blue Note Records)の底力のようなものを感じます。

 

政治的な背景まで含めて曲を詳細に解説するには「公民権運動」などの資料を読み込む必要があるんで、パス(笑)。

 

ただ1968年04月04日に「I Have a Dream」を含む演説で有名な、公民権運動の指導者的立場で活動していたキング牧師Martin Luther King Jr.)が暗殺され、アメリカ社会が混沌としていた状況にあった事だけは書き記しておきます。


フォーク風のギターと歌から始まる1曲目「The Rain」は、このアルバムを象徴する曲だと思います。

 


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ポリリズムと重厚なコーラス、そして高らかに鳴り響くトランペットが、混迷する社会情勢下におけるアフリカン・アメリカン達の主張を強烈に歌い上げているように感じます。


2曲目「Fulton Street」は、サン・ラ(Sun Ra)のアーケストラが演奏している様な、ポリリズムをバックにソロイストが咆哮する曲でございます。

 

3曲目「A Understanding」は、スピリチュアルな静寂を感じさせる曲。

 


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ソロで咆哮している部分もありますが、静寂感は持続します。

 

4曲目「A Walk With Thee」 は、3拍子で書かれたマーチ風リズムが印象的な曲。
荒廃気味のゲットー(Ghetto)の中にある通りを闊歩する感じですかねえ。


アルバムの最後を飾る5曲目「The Coming Of Gwilu」も、3拍子で書かれた曲のようです。

 


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リズム隊だけの演奏が長めに続いた後、ゴスペル風のコーラスが牧師と信者が繰り広げる「コール&レスポンス」のような掛け合いを、重厚なポリリズムをバックに繰り広げます。

 

後半登場するトランペットとサックスは、テーマの如き定型フレーズを延々、高揚気味に吹奏しております。

 

最後にゴスペル風のコーラスが登場し、リズム隊だけの演奏に戻り、アルバムは幕を閉じていきます。

 

Eddie Gale - Eddie Gale's Ghetto Music (SHM-CD)
Blue Note BST-84294 / Universal Music TYCJ-81084 [2014.02.26] 

 

side 1 (A)
01. The Rain (Eddie Gale / Joann Gale)  6:29
02. Fulton Street (Eddie Gale)  6:49
03. A Understanding (Eddie Gale)  7:37

side 2 (B)
04. A Walk With Thee (Eddie Gale)  6:06
05. The Coming Of Gwilu (Eddie Gale)  13:35


Eddie Gale (tp,soprano recorder,Jamaican thumb piano,steel-ds,bird whistle) 
Russell Lyle (ts,fl) Jo Ann Gale Stevens (g,vo) James "Tokio" Reid (b) 
Judah Samuel (b) Richard Hackett (ds) Thomas Holman (ds) 
Elaine Beener (lead-vo) 
Sylvia Bibbs, Barbara Dove, Evelyn Goodwin, Art Jenkins, 
Fulumi Prince, Edward Walrond, Sondra Walston, Mildred Weston, 
Norman Wright (vo) 

September 20, 1968 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

 

 

 


忘れてた。

セシル・テイラーCecil Taylor)のアルバム「Unit Structures (BST-84237)」のリンク貼っておきます。

 

 

ハービー・ハンコックHerbie Hancock)が1969年04月に録音したアルバム「Herbie Hancock - The Prisoner (Blue Note BST-84321)」にも、キング牧師の言葉「I Have a Dream」をそのまんまタイトルにした曲が収録されております。