「Bill Evans With Jeremy Steig - What's New (Verve) 1969」超個性派フルート奏者との共演盤
今回ご紹介するアルバムは1969年の01月30日、02月03,04,05,11日、03月11日と3ヶ月に渡り録音された、ビル・エヴァンス(Bill Evans)としてはかなり刺激的な演奏を収めたアルバム「Bill Evans With Jeremy Steig - What's New (Verve V6-8777)」です。
収録曲の中では、ビル・エヴァンス(Bill Evans)がピアノトリオで歴史的名演を残す「枯葉(Autumn Leaves)」と、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)のバンドで、決定的名演の残した「So What」の再演が一番の聴き処かな、と思われます。
ビル・エヴァンス(Bill Evans)を支えるトリオのメンバーは、ベースがエディ・ゴメス(Eddie Gomez)、ドラムスがマーティ・モレル(Marty Morell)という布陣。
そして、独特の奏法で強烈な印象を与える、超個性派フルート奏者のジェレミー・スタイグ(Jeremy Steig)は、アメリカ出身のミュージシャンですが、2016年04月に亡くなった場所は日本の横浜だったそうで、資料を調べると意外な人が日本に滞在していたんだなあ・・・と驚いたりします。
盲目のマルチリード奏者、ローランド・カーク(Roland Kirk)を彷彿とさせるワイルドなフルート演奏で、ビル・エヴァンス(Bill Evans)の演奏に絶えず新鮮な刺激を与えております。
1曲目「Straight No Chaser」は、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)作曲の有名なブルース。
テーマを奏でた直後、ビル・エヴァンス(Bill Evans)、ジェレミー・スタイグ(Jeremy Steig)、エディ・ゴメス(Eddie Gomez)三者によるいわゆる「インタープレイ」が始まる緊張感が何とも素晴らしいです。
2曲目「Lover Man」は、ビル・エヴァンス(Bill Evans)と聞いて思い浮かぶ世のイメージ通りに耽美的な演奏です。
表題曲である3曲目「What's New」は、ゆったりとしたバラッド演奏。
このアルバムはアグレッシブな演奏ばかりという印象が強かったのですが、こんな美しいバラッド演奏もあったんだな・・・と今更ながら(笑)。
4曲目「枯葉(Autumn Leaves)」は、ベースのスコット・ラファロ(Scott LaFaro)との不滅のトリオで録音した大名盤「Portrait In Jazz (Riverside RLP 12-315)」での名演が真っ先に思い浮かぶ1曲。
ややアップテンポなイントロからテーマを経て、エディ・ゴメス(Eddie Gomez)のベース・ソロに至る構成は「Portrait In Jazz (Riverside RLP 12-315)」での名演奏をそのまま踏襲しております。
ベース・ソロに続き、アップテンポでやや攻め気味なソロを聴かせるビル・エヴァンス(Bill Evans)、うめき声を混ぜつつ豪快にスイングするジェレミー・スタイグ(Jeremy Steig)のフルート・ソロも刺激的ですね。
5曲目「Time Out For Chris」は、ビル・エヴァンス(Bill Evans)自作の曲。
ヴァーヴ(Verve Records)時代特有の音の雰囲気というか、ピアノの響きみたいなものが顕著に聴こえる演奏のように思えます。
6曲目「スパルタカス 愛のテーマ(Spartacus Love Theme)」は、1960年末に公開されたスタンリー・キューブリック監督が手掛けた映画「スパルタカス(Spartacus)」で使用された曲なんだそうで、映画自体は「古代ローマ帝国に反乱を起こした男、スパルタカスの生涯を描いた物語」とのこと。
ビル・エヴァンス(Bill Evans)らしい耽美的で美しい演奏が展開されております。
7曲目「So What」は、60年代にマイルス・デイヴィス(Miles Davis)が例の黄金クインテットで度々演奏していた名曲。
ここでのビル・エヴァンス(Bill Evans)は、テンポは若干早めながら自身も演奏に参加した「Miles Davis - Kind of Blue (Columbia CL-1355)」に準拠した演奏を聴かせてくれます。
ただこれ位のテンポだと若干、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)が弾いているピアノ・ソロの様にも聴こえるのが面白いです。
続いて登場するジェレミー・スタイグ(Jeremy Steig)は、ローランド・カーク(Roland Kirk)ばりのアグレッシブなフルート・ソロを展開しますが、ビル・エヴァンス(Bill Evans)がバッキングをお休みしている点にも注目ですね。
最後にエディ・ゴメス(Eddie Gomez)のベース・ソロが出てきますが、ここでもビル・エヴァンス(Bill Evans)はバッキングを弾いてませんね。
そんな感じで「So What」は、アルバム「Bill Evans With Jeremy Steig - What's New (Verve V6-8777)」の中で、一番自由度の高い過激な演奏かもしれません・・・(笑)。
Bill Evans With Jeremy Steig - What's New
Verve V6-8777 / POCJ-9104 [2000.06.01] Verve 24bit Super Best 50 – 4
side 1 (A)
01. Straight No Chaser (Thelonious Monk) 5:40
02. Lover Man (David, Sherman, Ramirez) 6:19
03. What's New (Haggart, Burke) 4:50
04. Autumn Leaves (Prevert, Mercer, Kosma) 6:12
side 2 (B)
05. Time Out For Chris (Bill Evans) 7:17
06. Spartacus Love Theme (Alex North) 4:58
07. So What (Christpher Hall, Miles Davis) 9:06
Jeremy Steig (fl) Bill Evans (p) Eddie Gomez (b) Marty Morell (ds)
January 30, February 3, 4 & 5 & March 11, 1969 at Webster Hall, NYC.