ビル・エヴァンス(Bill Evans)が1962年07月16日、17日の二日をかけ、クインテット編成で録音したアルバムが「Interplay (Riverside RM-445/RS-9445)」です。
演奏メンバーはビル・エヴァンス(Bill Evans)の他に、ベースのパーシー・ヒース(Percy Heath)、ドラムスのフィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)というピアノ・トリオ。
裏ジャケットは「Discogs」からお借りしました。
そこにトランペットのフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)、ギターのジム・ホール(Jim Hall)を加えたクインテット(5人編成)での録音となります。
さて、今回ご紹介する「Interplay (Riverside RM-445/RS-9445)」は、チャック・イスラエル(Chuck Israels)を新しいベーシストに迎え1962年05月に行われた新しいトリオによる録音に続いて行われたもの。
トランペットで参加するフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)と、この年の春頃、アルバム「Undercurrent (United Artists UAJS-15003)」で共演したギターのジム・ホール(Jim Hall)の活躍が目立つアルバムでもあります。
なおフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)は、1962年05月28日録音の「Herbie Hancock - Takin' Off (Blue Note BST-84109)」に参加し、「The Artistry Of Freddie Hubbard (Impulse! AS-27)」を1962年07月02日に録音した直後の演奏という事で、「トランペット界期待の新星」という表現がぴったりの、感じの勢いにのった演奏を心ゆくまで聴かせてくれます。
1曲目「貴方と夜と音楽と(You and the Night and the Music)」は、ビル・エヴァンス(Bill Evans)のハードボイルなソロから始まります。
続くフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)は、余裕たっぷりのトランペット・ソロで、お得意のハイトーンを連発し演奏を盛り上げます。
ソロ三番手のジム・ホール(Jim Hall)は、淡々とシングル・トーンのソロを弾いてますが、後半でビル・エヴァンス(Bill Evans)のバッキングに呼応して段々と熱いソロを聴かせてくれます。
2曲目「星に願いを(When You Wish Upon A Star)」は、美しいバラッド風味の演奏。
今までテーマ部だけ聴いて「星に願いを」だと気が付かず、たった今、曲名を見て、この曲が「星に願いを」だと気が付いた次第(笑)。
ギターのジム・ホール(Jim Hall)がソロの最後にようやくテーマメロディの断片を弾き出すあたりで、あーこの曲は「星に願いを」なんだなと気が付くという仕掛けの様です。
3曲目「I'll Never Smile Again」は、軽快なアップテンポ気味で演奏される1曲。
フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)が珍しくミュート・トランペットでテーマを吹奏した後、ジム・ホール(Jim Hall)の軽快なるソロが始まります。
続くフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)の饒舌なミュート・トランペット・ソロも素晴らしく、ドラムスのフィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)に煽られたか、ソロ三番手に登場するビル・エヴァンス(Bill Evans)も楽しそうにソロを紡いでいきます。
最後のドラムスを交えたソロ交換もいいですね。
表題曲にも採用された4曲目「Interplay」は、ビル・エヴァンス(Bill Evans)の自作曲。
穏やかなるこの曲は最初、ビル・エヴァンス(Bill Evans)だけがテーマ・メロディを弾き、続いてフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)がミュート・トランペットでユニゾンで加わります。
まず、ソロ一番手に登場するジム・ホール(Jim Hall)のギター・ソロが素晴らしいです。アート・ファーマー(Art Farmer)、チェット・ベイカー(Chet Baker)との共演で名演を残すジム・ホール(Jim Hall)ですが、トランペットを含むホーン奏者との相性は抜群なんですね。
ソロ二番手のビル・エヴァンス(Bill Evans)は、かなり抑え気味なソロに終始してます。
続くフレディ・ハバード(Freddie Hubbard)の哀愁漂うミュート・トランペット・ソロも珍しく、いつもの元気いっぱいなソロとは異なる趣があります。
ソロ四番手は、珍しくパーシー・ヒース(Percy Heath)の淡々としたベース・ソロです。
5曲目「You Go to My Head」は、うきうきするような軽快なテンポでの演奏。
ジム・ホール(Jim Hall)、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)、ビル・エヴァンス(Bill Evans)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)の順で、軽快で素敵なソロが展開されます。
6曲目「Wrap Your Troubles In Dreams」も、明るく軽快な演奏。
ビル・エヴァンス(Bill Evans)、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)、ジム・ホール(Jim Hall)の順で、さりげなくソロが続きます。
エンディング部では、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)のカデンツァ風の吹奏が登場するなど、ラストに配置される曲に相応しい展開で幕を閉じます。
トリオ編成で耽美的で優雅な演奏を聴かせていたビル・エヴァンス(Bill Evans)ではありますが、クインテット編成に拡大した「Interplay (Riverside RM-445/RS-9445)」では、ひたすら明るく軽快な演奏が多い事から、非常に聴き易いアルバムだと思います。
私も●十年ほど愛聴しておりますが、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)のファンにもお勧めの1枚です。
Bill Evans - Interplay +1 (1962)
Riverside RM-445/RS-9445 / OJCCD-308-2 / Victor Entertainment VICJ-60306 [1999.06.02]
side 1 (A)
01. You and the Night and the Music (Dietz-Schwartz) 7:07
02. When You Wish Upon A Star (Washington-Harline) 5:45
03. I'll Never Smile Again [take 7] (Ruth Lowe) 6:33
side 2 (B)
04. Interplay (Bill Evans) 8:15
05. You Go to My Head (Gillespie-Coots) 5:06
06. Wrap Your Troubles In Dreams (Moll-Koehler-Barris) 6:27
CD Bonus Track
07. I'll Never Smile Again [take 6] (Ruth Lowe) 6:36
#01,02,05,06 July 16,1962 at Nola Penthouse Sound Studios, NYC.
#03,04 & 07 July 17,1962 at Nola Penthouse Sound Studios, NYC.
Freddie Hubbard (tp) Jim Hall (g) Bill Evans (p) Percy Heath (b) Philly Joe Jones (ds)
スコット・ラファロ(Scott LaFaro)が1961年07月06日、交通事故で急逝してからのビル・エヴァンス(Bill Evans)は、次のベーシストが見つかるまでトリオでの活動が途絶えてしまいます。
そんな状態で年が明けた1962年04月と05月の2回に分け、ギターのジム・ホール(Jim Hall)とのデュオを録音。
「Undercurrent (United Artists UAJS-15003)」というタイトルで発売されました。
続いて、1962年05月には、「前衛ジャズ」系のミュージシャンとの共演が多い印象があるジョージ・ラッセル(George Russell)のスタジオ録音でベースを弾いていたチャック・イスラエル(Chuck Israels)を新しいベーシストに迎え、トリオによるスタジオ録音を再開します。
新トリオによる録音は「Moon Beams (Riverside RLP-9428)」と、「How My Heart Sings! (Riverside RLP-9473)」という2枚のアルバムとして発売されました。
まあ、スコット・ラファロ(Scott LaFaro)の代役に抜擢されたチャック・イスラエル(Chuck Israels)は健闘しておりますが、例の四部作に完成度に及ぶ訳もなく、比較的地味な印象を与えるアルバム群であります。