クロスオーバー(フュージョン)・サウンド旋風が世を席巻していた時期、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)率いる「V.S.O.P. Quintet」が商業的成功を収めた事をきっかけにして、アコーステック・ジャズ回帰の機運が高まっていったみたいですね。
そんな中、ドラムスの大御所、アート・ブレイキー(Art Blakey)率いる「Jazz Messengers」に参加した事で俄然注目を浴びたトランペットの新星がウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)です。
で、アコーステック・ジャズ回帰の象徴でもあるフォーマルなスーツに身を包み、老成したふてぶてしい感じさえするウイントンの横顔が印象的な衝撃のデビュー作が、アルバム「Wynton Marsalis - Wynton Marsalis (Columbia FC-37574/CK-37574)」であります。
プロデューサーが、あのハービー・ハンコック(Herbie Hancock)である点にも注目が集まっていた様ですね。
ブランフォード・マルサリス(Branford Marsalis)、ケニー・カークランド(Kenny Kirkland)を含むクインテットによる若さ溢れ奔放とも言える3曲は、圧倒的なテクニックを持つ若い世代が、アコーステック・ジャズ回帰を真剣に目指している事を如実に示している気がします。
1曲目、ウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)作曲の「Father Time」は、ウイントンの圧倒的なテクニックをまざまざと感じさせる演奏となっております。
残りの4曲は、ウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)とブランフォード・マルサリス(Branford Marsalis)がフロントで、1960年代マイルス・デイヴィス(Miles Davis)アコーステック・クインテットのリズム隊であるピアノのハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、ベースのロン・カーター(Ron Carter)、ドラムスのトニー・ウィリアムス(Tony Williams)がバックに顔を揃えるクインテットによる演奏です。
例のトリオをバックに演奏する事で、ウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)達若手が、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)が放棄した1960年代マイルスが率いたアコーステック・クインテットによるサウンドを継承した事を、世に強く印象付ける一役を担ったと思います。
5曲目「Sister Cheryl」は、トニー・ウィリアムス(Tony Williams)が書いた名曲であります。
圧倒的なテクニックを誇るウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)が、この曲では大人し目なソロに終始しているように感じる方も居るかもしれませんが、この曲のキー設定がトランペットにはかなり難儀なモノなので、流石のウイントンも苦労してるんだなあ・・・と思いつつお聴き下さいませ。
Wynton Marsalis - Wynton Marsalis (1981)
Columbia FC-37574/CK-37574 / Sony Records SRCS-9173 [1996.12.12]
side 1 (A)
01. Father Time (Wynton Marsalis) 8:13
02. I'll Be There When The Time Is Right (Herbie Hancock) 2:33
03. RJ (Ron Carter) 3:51
04. Hesitation (Wynton Marsalis) 5:42
side 2 (B)
05. Sister Cheryl (Tony Williams) 7:24
06. Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me) (A. Newley, L. Bricusse) 4:40
07. Twilight (Wynton Marsalis) 8:39
#01,02,07 August, 1981 at CBS Studios, NYC.
Wynton Marsalis (tp) Branford Marsalis (sax) Kenny Kirkland (p)
Clarence Seay (b #1,2) Charles Fambrough (b #7) Jeff "Tain" Watts (ds)
#03-06 July, 1981 at CBS/Sony Shinanomachi Studio, Tokyo.
Wynton Marsalis (tp) Branford Marsalis (sax) Herbie Hancock (p)
Ron Carter (b) Tony Williams (ds)
ついでなんで、これまで書いたウイントン関連のブログ記事も掲載しておきます。