ブルーノート(Blue Note Records)のオーナー、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)が惚れ込んだ奇才アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)のアルバム紹介続けます。
サイドメンの豪華さから彼の作品の中で最も売れているであろう「Point Of Departure(Blue Note BST-84167)」は、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)を含むブルーノート新主流派オールスターズで録音されたアルバム。
意外とあっさりとした感じな仕上がり感は、トニー・ウィリアムス(Tony Williams)の若さ一杯、溌剌としたドラムのおかげだと推測されます。
しかし良く考えると、ドラムで印象がガラっと換わるのがアンドリュー・ヒルの作品群。
例えば、2022年にユニクロとのコラボTシャツが発売された「Judgment !(Blue Note BST-84159)」。
ここでのエルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)は、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)バンドでの演奏同様に、ポリリズムで音の隙間(空間)を埋めようとするため、「重苦しさ」に加え「暑苦しさ」がマシマシで、お気楽には聴けなくなっております。ただ、ハマると抜け出せない中毒性を伴うアルバムです。
という事で、エルヴィン・ジョーンズの叩き出すポリリズムだと、何で「重苦しい」と感じるのか考えてみますか。
音と音の「間」も「音楽の一部」として演奏していると思われるアンドリュー・ヒルと共演する場合、単にビートで音の隙間を埋めるのではなく、意図的に(音の隙間を)生かす様心掛けないと、聴きにくくなるのかな。
「Point Of Departure(Blue Note BST-84167)」に話を戻しまして。
このアルバムは、フリー寄りの演奏が得意なマルチ・リード奏者エリック・ドルフィー
の参加によって、アンドリュー・ヒルのブルーノート初リーダーアルバム「Black Fire (Blue Note BST-84151)」より過激さが増しています。
中でも1曲目「Refuge」は、トニー・ウィリアムスの叩き出す変幻自在のリズムが独特の雰囲気を醸し出した上に、アンドリュー・ヒルが前に出たおもしろい演奏だと思います。
5曲目「Dedication」は耽美寄りの演奏なのですが、エリック・ドルフィーのバス・クラリネットによる咆哮一発で、過激な方向に寄ってしまってます(笑)。
そんな感じでこのアルバム全編で、エリック・ドルフィーのバス・クラリネットによる咆哮と、トニー・ウィリアムスの過激なドラムスの音だけ耳に残りますよね・・・。
まあ、そうするとこの「Point Of Departure(Blue Note BST-84167)」は、ブルーノート新主流派オールスターズによる「アンドリュー・ヒル作品集」というのが、一番分かりやすいアルバム解釈になるのかなあ・・・と思われます。
シカゴ時代の音楽仲間であるテナー・サックスのジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)は、「Black Fire (Blue Note BST-84151)」同様、彼の曲にフィットした演奏を繰り広げてますが、巷の評として「異種格闘技戦に迷い込んだ」かの様に書かれるトランペットのケニー・ドーハム(Kenny Dorham)も案外、好演だと思ったりします。
何せケニー・ドーハムは、ジョー・ヘンダーソンが弟子入りするほど入れ込む才能の持ち主ですから・・・。
まあ、エリック・ドルフィーを筆頭に、他のメンバーが過激すぎるので、控えめな性格に思えるケニー・ドーハムが割を食ってるというのが真相なんでしょうけど・・・。
あと、早逝したエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)が参加する、貴重なアルバムであるとも言えますね。
Andrew Hill - Point Of Departure +3 (RVG)
Blue Note BST-84167 / 7243 4 99007 2 1 [1999]
side 1 (A)
01. Refuge (Andrew Hill) 12:16
02. New Monastery (Andrew Hill) 7:05
side 2 (B)
03. Spectrum (Andrew Hill) 9:47
04. Flight 19 (Andrew Hill) 4:18
05. Dedication (Andrew Hill) 6:45
Bonus Tracks
06. New Monastery (alternate take) (Andrew Hill) 6:13
07. Flight 19 (alternate take) (Andrew Hill) 3:49
08. Dedication (alternate take) (Andrew Hill) 7:03
Kenny Dorham (tp) Eric Dolphy (as,bass-cl,fl) Joe Henderson (ts)
Andrew Hill (p) Richard Davis (b) Anthony Williams (ds)
March 21, 1964 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
サイドメンで参加された他の過激な皆様の作品も少し・・・。
ブルーノート新主流派のアルバム群は、おいおい紹介していきます。