ブルーノート(Blue Note Records)の名盤ひしめく1500番台のトリを飾るアルバムが以前、他のブログで取り上げた際「偉大なるマンネリズム」と書いたバンド、スリー・サウンズ(The Three Sounds)の「Introducing The 3 Sounds (Blue Note BST-81600)」です。
「スリー・サウンズ(The Three Sounds)」は、ジーン・ハリス(Gene Harris)のピアノ、アンドリュー・シンプキンス(Andrew Simpkins)のベース、ビル・ダウディ(Bill Dowdy)のドラムスからなるトリオ編成のグループ(ユニット)ですが、後にピアノのジーン・ハリスを残し、他のメンバーが交代しも「スリー・サウンズ(The Three Sounds)」を名乗りアルバムを発表しておりましたね。
1958年09月16日録音の9曲のうち同アルバムに4曲収録され、4曲全てがシングルで発売。
1958年09月28日録音の8曲(1曲は別テイク)から、同アルバムに4曲収録され、7分という長尺の「Woody'n You」を除いた3曲が、シングルとして発売されております。
4分前後の演奏が多いのは、シングル盤で発売する事を前提に録音しているからでしょうね。
なお2日間で録音された他の曲は、「The Three Sounds - Bottoms Up! (Blue Note BST-84014)」ならびに1985年に日本の東芝EMIさんから発売された「The 3 Sounds Vol. 2 (Blue Note BNJ-61019)」で聴くことが出来ます。
ここで、小川隆夫著「ブルーノートの真実(東京キララ社)」から、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)の回想を引用しておきます。
「彼らの独特のリズム・アプローチや、スタンダードでもありきたりのアレンジを用いないユニークな手法に感心した。そして何より、リーダー格でピアニストのジーン・ハリスがテクニシャンだった。求めていたグループに巡り合えたと興奮した事を覚えている」
完成されたバンド・サウンドを持ち、多彩なリズム・パターンでダンス向き、ひたすら陽気な演奏を聴かせるスリー・サウンズの、ブルーノートにおける最初の歩みが、この「Introducing The 3 Sounds (Blue Note BST-81600)」にぎゅっと詰まっております。
どの演奏もテイストが同じ「金太郎飴的なピアノ・トリオ」でありながら、人気が続いた秘訣は、「多彩なリズム・パターンで、ひたすら陽気な演奏」という点に集約されると思われます。
バラッドで演奏される事が多い1曲目「Tenderly」を、リズミックでファンキーに演奏するのを耳にした段階で、スリー・サウンズ(The Three Sounds)というバンドの独自性がお分かりいただけるかと思われます。
2曲目の「Willow Weep For Me」は、ややゴスペル風味が入ったファンキーな演奏です。
3曲目から6曲目までは、ジーン・ハリス(Gene Harris)のオリジナル楽曲が続きます。
3曲目「Both Sides」は、マーチ風のリズミックな曲。
4曲目「Blue Bells」は最初、チェレステ(celeste)でソロが奏でられ、ソロ後半はピアノのブロック・コードを多用したファンキーなソロになりますが、という事は、同時に弾いていたのでしょうね(笑)。
ここからアナログレコードではB面に収録される演奏となります。
5曲目「It's Nice」は、陽気でファンキーな曲。
6曲目「Goin' Home」は、再びチェレステ(celeste)が登場。ややアンニュイ気味な演奏に、彩を添えております。
7曲目「Would'n You」は、アップテンポで7分越えの演奏。ビバップ時代の名曲が、ジーン・ハリスのファンキーなタッチで演奏されます
アルバムの最後を飾る8曲目「オー・ソレ・ミオ(O Sole Mio)」は、ご存じ、イタリアのカンツォーネ(ナポリ民謡)。
思わず踊りたくなってしまいそうな、心地よいリズム・パターンで演奏されておりますが、ジャズの演奏では珍しいフェード・アウトで終わっていきます。
The Three Sounds - Introducing The 3 Sounds (RVG)
Blue Note BST-81600 / 東芝EMI TOCJ-9116 [1999.06.23]
side 1 (A)
01. Tenderly (Lawrence, Gross) 4:35
02. Willow Weep For Me (A. Ronell) 4:40
03. Both Sides (Gene Harris) 3:55
04. Blue Bells (Gene Harris) 4:18
side 2 (B)
05. It's Nice (Gene Harris) 4:38
06. Goin' Home (Gene Harris) 3:53
07. Would'n You (Gillespie) 7:09
08. O Sole Mio (Capua, Capurro) 3:03
#01-03,05 [September 16, 1958 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Gene Harris (p) Andrew Simpkins (b) Bill Dowdy (ds)
#04,06-08 [September 28, 1958 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Gene Harris (p, celeste) Andrew Simpkins (b) Bill Dowdy (ds)
小川隆夫さんの名著「ブルーノートの真実(東京キララ社)」には5ページに渡り、ブルーノート(Blue Note Records)が、ホレス・シルヴァー(Horece Silver)からスリー・サウンズ(The Three Sounds)を紹介され、契約した経緯などを子細に記述しているので、かいつまんで紹介します。
1956年に結成した「フォア・サウンズ(Four Sonds)」は、サックス奏者入りだったようです。
ただ、サックス奏者が定着しなかったため、「スリー・サウンズ(The Three Sounds)」と改名。アメリカ中西部を中心に、単身で全米を巡業する一流ホーン奏者との共演を重ねる事で、バンドの知名度を上げていったようです。
リーダー格のピアニスト、ジーン・ハリス(Gene Harris)のインタビューでは、アメリカ中西部はゴスペルやリズム&ブルースが盛んな地域であった事と、パーティ用バンドの仕事があったため、ダンス向きのリズムをかなり研究した事を語っております。
スリー・サウンズ(The Three Sounds)は、1500番台に続きスタートした4000番台に、多くのアルバムを残しておりますし、ジューク・ボックス用のシングル盤も多数、発売していたようです。
このブログ記事のタイトルに「金太郎飴的な人気ピアノ・トリオ」と書きましたが、恐るべき事に、どれだけ大量にアルバムやシングルを発売しても、スリー・サウンズの売り上げ枚数が落ちる事が無かったとの事・・・。
確固たるバンド・サウンドに独特で多彩なリズム・パターン、ひたすら陽気な演奏を聴かせるスリー・サウンズに、当時のリスナーは厭きる事なく、ずーっと惹きつけられ続けたのでしょうね。
その他、ブルーノート所属のホーン奏者と共演したアルバムも、何枚か録音されておりますが、いずれも名盤ですね。