リー・モーガン(Lee Morgan)の「Search for the New Land (Blue Note BST-84169)」は1964年02月に録音された、モードっぽい「海」や「航海」をテーマとした曲が入っている、他のリー・モーガン作品とは一味違うアルバムです。
リー・モーガンの復帰第1弾「The Sidewinder (BST-84157)」では参加を断ったハービー・ハンコック(Herbie Hancock)が参加している事と、第3のホーン奏者的にギターのグラント・グリーン(Grant Green)が参加しているのもポイントですかね。
数多あるリー・モーガンのリーダー作中、かなり地味なアルバムですけど、1曲目目当てに聴いてます。
タイトル曲でもある1曲目「Search for the New Land」のイントロは、ピアノのハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、ギターのグラント・グリーン(Grant Green)、ドラムのビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)らが奏でる音が「さざ波」をイメージさせますね。
次に、レジー・ワークマン(Reggie Workman)の力強いウォーキング・ベースに導かれるように、リー・モーガン(Lee Morgan)とウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の名コンビによるテーマが奏でられます。
まあ、こんなサウンド・スケープ的な演奏が結構好きなものですから、イントロ聴くだけでサイコー!だったりします。
ごきげんなソロの間にも、場面転換を知らせるテーマ部が何度も演奏されるという、にくい演出。
それぞれのソロ演奏からは、新天地探索のさまざまな「希望」、「あせり」、「欲望」などなどの感情が感じ取れるかのようです。
ダークな音で奏でるウェイン・ショーターのソロも良いです。
なお、前述の通り、1曲目聴くだけで満足しているので、他の曲はアルバムでお楽しみ下さいませ(笑)。
アルバム最後の〆として、明るめの「海賊モーガン(Morgan The Pirate)」なる曲が入っているのは、鼻っ柱の強いモーガンらしいというか・・・・。
Lee Morgan - Seach For The Newland (RVG)
Blue Note BST-84169 / 東芝EMI TOCJ-9218 [2000.08.23]
side 1 (A)
01. Search For The New Land (Lee Morgan) 15:47
02. The Joker (Lee Morgan) 5:05
side 2 (B)
03. Mr. Kenyatta (Lee Morgan) 8:42
04. Melancholee (Lee Morgan) 6:15
05. Morgan The Pirate (Lee Morgan) 6:29
Lee Morgan (tp) Wayne Shorter (ts) Herbie Hancock (p) Grant Green (g)
Reggie Workman (b) Billy Higgins (ds)
February 15, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
ハービー・ハンコックが約1年後の1965年03月に録音するベストセラーとなったコンセプト・アルバム「Herbie Hancock - 処女航海(Maiden Voyage) (BST-84195)」は、ご本人が作曲した男性化粧品用の小品から発展させて曲を順次書いて行った・・・と言っておりますが。
その前段階として、このセッションでの録音が、「海」をテーマにしたコンセプトアルバムを企画する際の「アイデアの元」になっていたのでは・・・と思ったりします。
ブルーノートのオフィスでハービー・ハンコックが、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)お気に入りである事を見越して、「以前参加したリー・モーガンのセッションを発展させたアイデアがあるんだけど・・・」的な感じで企画提案したのではないかと妄想したり(笑)。
さて、1962年05月に録音された「Herbie Hancock - Takin' Off (BST-84109)」の試聴盤で、ジャズロックの名曲「Watermelon Man」をブルーノートのオフィスで聴いたリー・モーガン。
1年半後の1963年12月に、同様のジャズロック路線で「Lee Morgan - The Sidewinder (BST-84157)」を録音した、という話がありまして・・・。
「Watermelon Man」が、ジャズロックの大ヒット作「The Sidewinder」を生み出すきっかけとなった訳で・・・・。
最初、リー・モーガンは、ハービー・ハンコックに参加を要請するも、気乗りしなかったので代役としてバリー・ハリス(Barry Harris)を紹介した、という話もありましたね。
「The Sidewinder (BST-84157)」の2ヶ月後、1964年02月に録音された「Search for the New Land (Blue Note BST-84169)」には参加したハービー・ハンコック。
今度はリー・モーガンのアイデアを拝借して、約1年後に大名盤「Herbie Hancock - 処女航海(Maiden Voyage) (BST-84195)」と考えると中々、興味深いというか。
要はリー・モーガンとハービー・ハンコックが裏で「パクったらパクり返す」という、「仁義なき戦い」をやってると妄想すると、苦笑いがこみあげてきます。
リー・モーガン晩年の人気盤、ライトハウスでの「ライブ完全盤」も出ております。