マックス・ローチ(Max Roach)からブルーノート(Blue Note Records)のオーナー、
アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)にある提案があったようです。
「ソニー・ロリンズの調子が上がってきているので、ブルーノートでも録音した方がいいよ(意訳)」
その提案からテナーサックスの巨人、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)のブルーノート(Blue Note Records)への録音が始まります。
有名なヴィレッジ・ヴァンガードでの録音まで、計4回のセッションが企画されましたが、回を重ねる毎にクインテット、カルテット、ピアノレス・トリオとバンド編成が縮小され、ソニー・ロリンズのソロ・スペースがどんどん伸びていくのも、面白かったりします。
さて1956年12月16日、ブルーノートにおける最初のリーダー・アルバムとなる「Sonny Rollins Vol. 1 (Blue Note BLP-1542)」の録音が行われます。
ソニー・ロリンズの希望に従い、「Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)」で実現しなかったトランペッタードナルド・バード(Donald Byrd)を加えたクインテット編成での録音。
つまり、実質的には「ブラウン-ローチ・クインテット」のリユニオン・バンド的な演奏が繰り広げられる事となりました。
このアルバムが録音された6ヶ月前、1956年06月26日に交通事故で亡くなったクリフォード・ブラウン(Clifford Borwn)の代わりとしてトランペットのドナルド・バード(Donald Byrd)、ピアニストのリッチー・パウエル(Richie Powell)の代わりに、ウイントン・ケリー(Wynton Kelly)を加える事で、「ブラウン-ローチ・リユニオン・クインテット」としての体裁が整えられます。
演奏をじっくり聴き込んでみると、ドナルド・バード(Donald Byrd)が、嬉々としてクリフォード・ブラウン(Clifford Borwn)の代役を務めている事が伺えます。
演奏中は、イタコ状態でブラウニー(クリフォード・ブラウン)の霊と交霊しているのかと思うくらい、端々にブラウニーっぽい音色で、ブラウニーお得意のフレーズを連発しております(笑)。
なお、私が普段聴いているRVGリマスターのCDだと、マックス・ローチ(Max Roach)のドラムが、やや後ろに引っ込んで聴こえます。
これは録音時のミックスやCDリマスターの影響なのか、はたまた、6ヶ月前にクリフォード・ブラウンを失った悲しみから立ち直っていない為なのか・・・。
マックス・ローチに関しては「やや覇気を欠いた演奏だなあ」と感じた事を、最初に付記しておきます。
さて、「Sonny Rollins Vol. 1 (Blue Note BLP-1542)」は、3曲目の「How Are Things In Glocca Morra」を除き、全ての作品をソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)が作曲しております。
1曲目「Decision」は、ややソウルフルな曲。マックス・ローチはブラシでリズムを刻みます。
「Clifford Brown And Max Roach (EmArcy MG-36036)」収録の「Delilah」を、何となく連想させる演奏が続きます。
2曲目「Bluesnote」は、アップテンポ気味のブルース。
最初に登場するドナルド・バードは、「The Blues Walk」でのクリフォード・ブラウンの演奏を連想させるソロを展開した後、ソニー・ロリンズの豪快かつ奔放なソロが続きます。
3曲目「How Are Things In Glocca Morra」は、バラッド風味の演奏。
ソニー・ロリンズの優しく穏やかなソロに癒されますね。
4曲目「Plain Jane」は途中、やや複雑な展開を見せるミディアムテンポの曲。
ここでのマックス・ローチは「ブラウン-ローチ・クインテット」時代で見せた、フロントを煽るお得意のバッキングを控えめながら展開。ソニー・ロリンズ、ドナルド・バードと続くソロ・リレーを盛り立てます。
5曲目「Sonnysphere」は、このアルバム一番の聴き所です。
これぞソニー・ロリンズと言っても良いほど、豪快かつ素晴らしい演奏を繰り広げております。
4曲目まで控えめだったマックス・ローチも大爆発(笑)。奔放なロリンズのソロをさらに煽ります。
Sonny Rollins - Sonny Rollins Vol. 1 (RVG)
Blue Note BLP-1542 / 東芝EMI TOCJ-9121 [1999.08.25] 24 Bit By RVG
side 1 (A)
01. Decision (Sonny Rollins) 8:03
02. Bluesnote (Sonny Rollins) 7:00
03. How Are Things In Glocca Morra (Lane, Harburg) 6:20
side 2 (B)
04. Plain Jane (Sonny Rollins) 9:59
05. Sonnysphere (Sonny Rollins) 9:35
Donald Byrd (tp) Sonny Rollins (ts) Wynton Kelly (p) Gene Ramey (b)
Max Roach (ds)
December 16, 1956 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
ちなみにドナルド・バード(Donald Byrd)は、1958年のヨーロッパ巡業でもブラウニーゆかりの曲を嬉々として演奏しておりますので、興味のある方は「Byrd In Paris (Brunswick)」などのアルバムを聴いてみて下さい。
<1956>
Clifford Brown And Max Roach At Basin Street (EmArcy MG-36070)
Sonny Rollins Plus 4 (Prestige PRLP-7038)
Sonny Rollins - Saxophone Colossus (Prestige PRLP-7079)
Sonny Rollins (Vol. 1) (Blue Note BLP-1542)
<1957>
Sonny Rollins - Way Out West (Contemporary C3530)
Sonny Rollins Vol. 2 (Blue Note BLP-1558)
Sonny Rollins - Newk's Time (Blue Note BLP-4001)
Sonny Rollins - A Night At The Village Vanguard (Blue Note BLP-1581)