「Miles Davis - Dig (Prestige) 1951」興味深いエピソード満載のアルバム
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)初期のリーダー・アルバムで、1951年01月17日と1953年02月19日に録音された「Miles Davis And Horns (Prestige PRLP-7025)」に続くアルバムが、1951年10月05日に録音された「Dig (Prestige PRLP-7012)」となります。
この録音、最初は2枚の10インチレコード、「The New Sounds (Prestige PRLP-124)」と「Blue Period (Prestige PRLP-140)」で発売された様です。
このアルバムはマイルスの自叙伝を読むと、当時の状況が詳細に書かれており、その情報の有無で聴き方が大幅に変わる様な気がします。
まず、プレステッジ(Prestige Records)が長時間再生可能な33回転、当時「マイクログルーヴ (microgroove) 」と呼ばれるレコードで発売する第一弾としてこのセッションを選んだ事。
10インチレコードのアルバムタイトルに「The New Sounds」と命名している事からも、その期待の具合が伺えます。
マイルス以外の演奏メンバーは、ドラムスのアート・ブレイキー(Art Blakey)を筆頭に、テナーサックスのソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)、アルトサックスのジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)、ピアノのウォルター・ビショップ(Walter Bishop Jr.)、ベースのトミー・ポッター(Tommy Potter)という編成。
当時、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)がライブハウスで演奏していたレギュラー・メンバーで構成されており、事前のリハーサルも念入りに行い、マイルス自身の唇の調子も良かったとの事。
マイルスの今までに無い、奔放で豪快なソロを聴く事が出来ますが、それはソロフレーズとリンクするリズム・パターンを明確に刻む事が出来た(教育された)、ドラムスのアート・ブレイキー(Art Blakey)の参加が、かなり重要なポイントであると思われます。
また、ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)は実質的な初録音であった上に当日の録音時、スタジオにはチャーリー・パーカー(Charlie Parker)がふらっと遊びに来ていたため、かなり緊張して演奏に臨んでいた模様。
ちなみにジャッキー・マクリーンは、バド・パウエル(Bud Powell)からの紹介により、マイルスと共演する様になったみたいです。
さて1曲目「Dig」は、ジャッキー・マクリーン (Jackie McLean) の書いた曲で、確か「Sweet Georgia Brown」のコード進行を下敷きにしていたと記憶してます。
ドラムスのアート・ブレイキーの煽りを受けつつ、各メンバーの個性的で豪快なるソロが、次々と登場しますが、やはりソロフレーズに合わせたアート・ブレイキーの細かいバックキングに注目がいってしまいます。
ジャッキー・マクリーンも参加する1956年08月03日に録音された「Farmer / Byrd - 2 Trumpets (Prestige PRLP-7062)」でも演奏されておりますね。
2曲目「It's Only A Paper Moon」は、明るく軽快な演奏。
ここでも、アート・ブレイキーのメロディとソロ・フレーズに沿ったバッキングが冴えております。
3曲目から5曲目までは、いずれもマイルス・デイヴィス (Miles Davis)本人が書き下ろした曲です。
3曲目「Denial」は、アップテンポながら軽々と吹きこなすマイルスが素晴らしいです。マイルスとアート・ブレイキーの4バースも、お見事の一言。
4曲目「Bluing」は、ブルースのコード進行で書かれた曲。
快調そのもののマイルスが吹くソロのバックで、他のホーン隊がアンサンブルにまわってますね。
突っ込み気味のフレーズを吹くソニー・ロリンズに、アート・ブレイキーが倍速テンポを仕掛けたりします。
5曲目「Out of the Blue」は、タッド・ダメロン(Tadd Dameron)が書きそうなタイプのバップ・チューン。
ピアノのウォルター・ビショップ(Walter Bishop Jr.)が、タッド・ダメロンっぽいバッキングを聴かせてくれるので、何だかほっこりしますね。
ボーナストラックの2曲は「Conception (Prestige PRLP-7013)」に収録されていた曲のようです。
アップテンポで演奏される6曲目「Conception」は、ジョージ・シアリング (George Shearing) の作品。
この録音には、もう一人の大物、ベースのチャールズ・ミンガス(Charles Mingus)が楽器持参でスタジオに居たそうで、「Conception」では一緒に演奏してたそうです。
ただ、契約の関係でクレジット表記はされていないそうなので、マイルスの自叙伝読まないと分からない事実が満載のセッションであります。
7曲目の「My Old Flame」 は、マイルスお得意のバラッド演奏。
心に染み入る美しいソロ・メロディが次々と流れてきます。
Miles Davis - Dig +2 (1951)
Prestige PRLP-7012 / OJCCD-005-2 / Victor Entertainment VICJ-60301 [2002.01.23]
side 1 (A)
01. Dig (Jackie McLean) 7:37
02. It's Only A Paper Moon (Harold Arlen, Yip Harburg, Billy Rose) 5:27
03. Denial (Miles Davis) 5:42
side 2 (B)
04. Bluing (Miles Davis) 10:00
05. Out of the Blue (Miles Davis) 6:19
Bonus Tracks
06. Conception (George Shearing) 4:04
07. My Old Flame (Sam Coslow) 6:34
Miles Davis (tp) Jackie McLean (as #1,3-6) Sonny Rollins (ts) Walter Bishop Jr. (p)
Tommy Potter (b) Art Blakey (ds)
October 5, 1951 at Apex Studios, NYC.
このセッションを収録した「10 inch LP」は、こんな感じでした。
「マイクログルーヴ (microgroove) で中断なく聴けるレコード」という文字が、書かれてますね。
●Prestige PRLP-124 Miles Davis - The New Sounds
side 1 (A)
01. Conception (George Shearing) 4:04
02. Dig (Jackie McLean) 7:37
side 2 (B)
03. My Old Flame (Sam Coslow) 6:34
04. It's Only A Paper Moon (Harold Arlen, Yip Harburg, Billy Rose) 5:27
Miles Davis (tp) Jackie McLean (as #1-3) Sonny Rollins (ts)
Walter Bishop Jr. (p) Tommy Potter (b) Art Blakey (ds)
October 5, 1951 at Apex Studios, NYC.
●Prestige PRLP-140 Miles Davis - Blue Period
side 1 (A)
01. Bluing (Miles Davis) 10:00
side 2 (B)
02. Blue Room (Richard Rodgers, Lorenz Hart)
03. Out of the Blue (Miles Davis) 6:19
#01,03 October 5, 1951 at Apex Studios, NYC.
Miles Davis (tp) Jackie McLean (as) Sonny Rollins (ts) Walter Bishop Jr. (p)
Tommy Potter (b) Art Blakey (ds)
#02 January 17, 1951 at Apex Studios, NYC.
Miles Davis (tp) Bennie Green (tb) John Lewis (p) Percy Heath (b) Roy Haynes (ds)
近年、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)のアルバムが10インチレコードの仕様で再発されておりますので、興味のある方はどうぞ。