加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

Fats Navarro - Featured With The Tadd Dameron Band (Milestone) 1948

ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)という天才トランペッターは、時期的にはディジー・ガレスピーDizzy Gillespie)とクリフォード・ブラウンClifford Brown)の間に挟まる重要な人物であるにも関わらず、録音機器がまだ貧弱で、ジャズを録音する技術も確立していなかった1950年07月06日、わずか26歳という若さで世を去ってしまった為、音の良い「決定的名盤」を残す事が出来なかったのが悔やまれるミュージシャンであります。

 

ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)名義のアルバムとして有名なものは「The Fabulous Fats Navarro Vol. 1 (Blue Note BLP-1531)」、「The Fabulous Fats Navarro Vol. 2 (Blue Note BLP-1532)」がありますが、これはピアニストのタッド・ダメロンTadd Dameron)名義の録音を中心に編纂したもので、SP盤用に録音されたものですから、圧倒的な演奏を聴く事が出来るのもも、音質はイマイチだったりします。

 

 

ブルーノート(Blue Note Records)のアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)は、「次はファッツ・ナバロのリーダー録音を・・・」と予定していたものの、ナバロが急逝してしまったため、その計画が永遠に流れてしまった模様・・・。

 

そんな訳で、ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)名義のアルバムで、ブルーノート(Blue Note Records)が発売したコンピレーション的な2枚以外、お勧め出来るアルバムが無かったりするのですが。

 

Fats Navarro - Featured With The Tadd Dameron Band (Milestone) 1948

そんな中でも、1991年に発売された「Fats Navarro - Featured With The Tadd Dameron Band (Milestone M-47041)」というCDは、1948年の夏から秋にかけ「Royal Roost」というニューユークにあるジャズ・クラブの実況放送をエアチェックしたもので、スタジオ録音に比べると音は悪いですが、ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)の比較的安定した演奏を楽しむ事が出来ます。

 

 

タッド・ダメロンTadd Dameron)作曲の「Our Delight」を聴いていただければ分かる通りファッツ・ナバロ(Fats Navarro)は、ブルーノートに残されたスタジオ録音バージョンと遜色ないアドリブを繰り広げております。

 


www.youtube.com

 

これは、ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)が短いソロスペースで最良のソロを聴かせるため、予め用意していたフレーズを「アドリブ」として吹いている為で、ソロフレーズの出来が「書き譜」を見ながら吹いているのと変わらない精度の高いものに仕上がっている秘密であったりします。

 

 

「Eb-pob」はファッツ・ナバロ(Fats Navarro)の自作曲。

 


www.youtube.com

 

「Eb-pob」で聴く事が出来るファッツ・ナバロ(Fats Navarro)の倍速ソロ・フレーズの素晴らしい事・・・。

 

軽々と吹いているように聴こえますが、常人にはまったく真似出来ないレベルの吹奏であり、同じく若くして世を去った天才トランペッター、クリフォード・ブラウンClifford Brown)ですら、この吹奏レベルに到達出来ていたのか考えてしまう位、精密で高度な演奏を聴かせてくれます。

 

 

まあ、ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)とディジー・ガレスピーDizzy Gillespie)は、物凄い事は分かるが、何をやっているのか理解しかねるレベルの高度すぎる吹奏能力を持つトランペッターである事を、まざまざと認識させられるアルバムであります。

 

音は悪いですけど、この「Fats Navarro - Featured With The Tadd Dameron Band (Milestone M-47041)」、ジャズ・トランぺットを志す人は、一度は聴いて欲しいアルバムであったりします。

 

 

Fats Navarro - Featured With The Tadd Dameron Band
Milestone M-47041/MCD-47041-2 [1991]

Originally issued as 
Fats Navarro featured with the Tadd Dameron Band (Jazzland 50)
The Tadd Dameron Band: 1948 (Jazzland 68)


side 1 (A)
01. Our Delight (Tadd Dameron)  4:03
02. Eb-pob (Fats Navarro)  5:58
03. Tadd Walk (Tadd Dameron)  4:29

side 2 (B)
04. The Squirrel (Tadd Dameron)  4:02
05. Dameronia (Tadd Dameron)  5:15
06. Good Bait (No.1) (Tadd Dameron)  5:47

side 3 (C)
07. Good Bait (No.2) (Tadd Dameron)  4:57
08. Symphonette (Tadd Dameron)  4:07
09. Lady Be Good (George & Ira Gershwin)  3:06
10. Anthropology (No.1) (Charlie Parker)  3:40

side 4 (D)
11. Anthropology (No.2) (Charlie Parker)  5:22
12. Wahoo (Benny Harris)  6:24
13. Tiny's Blues (Al Cohn, Tiny Kahn)  3:31


Fats Navarro (tp #1-10) Kai Winding (tb #11-13) 
Rudy Williams (as #1-6) Allan Eager (ts) Milt Jackson (vib #8) 
Tadd Dameron (p) Curly Russell (b) Kenny Clarke (ds) 

Summer and Fall 1948 at the Royal Roost, NYC.