当初、ブルーノート(Blue Note Records)のハウス・ドラマーとして活躍していたアート・ブレイキー(Art Blakey)をリーダーとして1957年に録音されたのが、この「リズムの饗宴(Orgy In Rhythm)」と題されたアルバム。
〇Art Blakey - Orgy In Rhythm Vol. 1 [Blue Note BLP-1554] (1957)
アート・ブレイキーのドラマーとしての才能を、如何にして記録として残すか・・・。
そして、アート・ブレイキーの演奏をどうすれば、より良く聴かせる事が出来るか・・・。
「リズムの饗宴(Orgy In Rhythm)」は、そんなアルフレッド・ライオンの個人的な熱烈な想いが詰まったアルバムであるとも言えます。
〇Art Blakey - Orgy In Rhythm Vol. 2 [Blue Note BLP-1555] (1957)
1957年といえばビバップ(Be-Bop)も熟成し、ハードバップ(Hard Bop)やファンキージャズ(Funky Jazz)の名演アルバムが、ちらほら現れて来る時期。
そんな1957年03月07日に、アフリカン・リズム(ミュージック)調のワールド・ワイド、しかもアフリカン・パーカッションやサウンドを前面に押し出したアルバムを録音。
世間の流れなど関係ない、俺の出したいアルバムはこれだ!と言わんばかりに、ジャズ専門レーベルで、いきなりパーカッション中心のアルバムを2枚も発売するというブルーノートの暴挙(笑)には、ジャズ関係者も口あんぐりだったようです。
「ブルーノート・ブック」のアルバムレビューを読むと、「アルフレッドの狂気」とさえ陰口されたという記述があったりしますね。
まあ、新聞に「リズムの饗宴(Orgy In Rhythm)」の1面広告まで出していた様なので、半ば呆れつつアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)の熱烈な想いに圧倒されていたんだと思われます。
さて、「リズムの饗宴(Orgy In Rhythm)」の内容に話を戻します。
ブルーノート(Blue Note Records)の特徴の一つは、大手レコード会社でもまだ録音技術が完成していない時期から、ドラムの音がかなりクリアに録音されている事。
オーナーである熱血漢・アルフレッド・ライオンの要望に応え、録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)が試行錯誤の末、音量の差が激しいドラムをクリアに録音する事が出来るようになっていったようです。
パーカッション多め、大編成な録音であるためか、「リズムの饗宴(Orgy In Rhythm)」はルディ・ヴァン・ゲルダーの自宅兼用スタジオではなく、ニューヨークの貸しスタジオ「Manhattan Towers」で録音されております。
アルバムに収録された曲は、牧歌的なパーカッションの見本市のような演奏がほとんどで、全部聴き通すにはつらいと感じる時もありますが(笑)。
1957年頃にシングルとして発売された下記2枚に収録された曲は、レイ・ブライアント(Ray Bryant)のゴキゲンなピアノ・ソロが聴ける「Abdallah's Delight」と「Ya Ya」が収録されており、ハードバップ(Hard Bop)的な側面も感じ取る事が出来ます。
「Art Blakey - Abdallah's Delight / Elephant Walk (Blue Note 45-1696)」
「Art Blakey - Ya Ya / Come Out & Meet Me Tonight (Blue Note 45-1679) 」
ブログのタイトルに、時代を先取りした「リズムの饗宴(Orgy In Rhythm)」と書いてみましたが、アルフレッド・ライオンの強烈な思いが消化不良のまま作り出された「時代を先取りし過ぎた」アルバムなのかもしれません。
ついでながら、1997年に発売された米国「Blue Note Connoisseur Series」では、新たに発見された「ステレオ・マスター」でのCD化となっております。
Art Blakey - Orgy In Rhythm Vol. 1&2 (1957)
Blue Note BLP 1554-55 / CDP 7243 8 56586 2 4 [1997] Blue Note Connoisseur Series
※Stereo Version [except #5 in Momo]
〇Orgy In Rhythm Vol. 1 [Blue Note BLP-1554]
side 1 (A)
01. Buhaina Chant (Art Blakey) 10:31
02. Ya Ya (Art Blakey) 7:07
side 2 (B)
03. Toffi (Art Blakey) 12:19
04. Split Skins (Art Blakey) 8:58
〇Orgy In Rhythm Vol. 2 [Blue Note BLP-1555]
side 1 (A)
05. Amuck (Art Blakey) 6:50
06. Elephant Walk (Art Blakey) 6:57
side 2 (B)
07. Come Out And Meet Me Tonight (Art Blakey) 5:42
08. Abdallah's Delight (Art Blakey) 9:48
Herbie Mann (fl #1-3,5-8) Ray Bryant (p #1-3,5-8) Wendell Marshall (b #1-3,5-8)
Art Blakey (ds,vo #1-3,5-8, ds #4) Jo Jones, Art Taylor (ds) Charles "Specs" Wright (ds #1-3,5-8)
Carlos "Patato" Valdes, Jose Valiente (conga #1-3,5-8) "Sabu" Martinez (bongo,timbales,vo #1-3,5-8) Ubaldo Nieto (timbales #1-3,5-8) Evilio Quntero (concerro,maracas,tee log #1-3,5-8)
March 7, 1957 at Manhattan Towers, NYC.
日本盤でも何回か発売されておりますので、入手はそれほど難しくはないかと。
当時の売り上げが芳しくなったにも関わらず、懲りずに次作「Holiday For Skins Vol. 1 (Blue Note BST-84004)」と「Holiday For Skins Vol. 2 (Blue Note BST-84005)」が録音されますが、このあたりは、懲りない(信念を貫き通す)アルフレッド・ライオンの面目躍如といった感じですね。
こちらはトランペットのドナルド・バード(Donald Byrd)と、ピアノのレイ・ブライアント(Ray Bryant)の快演が聴ける、ハード・バップの「隠れ名盤」となっております。
「Art Blakey - Holiday For Skins」に関しては、「リズムの饗宴(Orgy In Rhythm)」を聴いてアルバムを放り出した方にこそ、聴いて欲しいアルバムだと思ってます。
こちらのアルバム・レビューもそのうちに・・・。