加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Kenny Drew - The Kenny Drew Trio (Riverside) 1956」小粋で洗練されたブルース・フィーリング

今回は、ケニー・ドリューKenny Drew)のトリオ編成による、1956年09月録音の「The Kenny Drew Trio (Riverside RLP12-224)」です。

 

「Kenny Drew - The Kenny Drew Trio (Riverside) 1956」小粋で洗練されたブルース・フィーリング


バックを務めるのは当時、いずれもトランペット奏者・マイルス・デイヴィスMiles Davis)のレギュラーメンバーであり、人気・実力兼ね備えたベースのポール・チェンバースPaul Chambers)と、ドラムスのフィリー・ジョー・ジョーンズPhilly Joe Jones)という鉄壁の布陣。

 

ソニー・クラーク・トリオ+3

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さて、このアルバムについて何書こうかなーと資料眺めてたら。

 

約1年後の1957年10月に録音された「Sonny Clark Trio (Blue Note BLP-1579)」は、ピアノだけソニー・クラークSonny Clark)に替えたものだと思い出しまして。

 

そこから色々と「合点がいく」というか、「腑に落ちる部分」がちらほら、頭の中でつながってきたので、その辺りから整理していこうと思います。

 

という事で。

この頃のケニー・ドリューは、今まで散々聴いてきた哀愁のハードバップ・ピアニスト、ソニー・クラークのピアノ演奏スタイルに近似してたんですね・・・。

 

後年、ケニー・ドリューが1970年代のハード・バップ・リバイバルの流れでヨーロッパと日本で大人気となり日本制作のアルバムがベスト・セラーを記録したのですが。

 

(私含め)日本の皆さんは、こういう「ソニー・クラークを筆頭に、小粋で洗練されたブルース・フィーリング兼ね備えるピアニスト」が好きですよねー、と。

 

腑に落ちました、はい。


ついでなので、ケニー・ドリューKenny Drew)の1956年までの活動を、ざっと調べて書いておきます。

 

1952年頃から1953年にかけ、クラリネット奏者のバディ・デフランコ(Buddy DeFranco)のバンドで活動。なお後任のピアニストは、前述のソニー・クラークSonny Clark)です。

 

1956年頃はアルトサックス奏者のソニー・クリスSonny Criss)や、テナーサックス奏者のズート・シムズZoot Sims)などのアルバムに参加。

 

ドラムスのアート・ブレイキー(Art Blakey and The Jazz Messengers)や、アルトサックス奏者のアーニー・ヘンリー(Ernie Henry)らと共演した後、リバーーサイド(Riverside Records)に本アルバム「The Kenny Drew Trio」を録音する事となります。

 


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ハード・バップ系ピアニストとしての実力は、急速調で演奏される1曲、「Caravan」を聴く事で、ご理解出来るかと思います。

 

フィリー・ジョー・ジョーンズの煽り気味なドラム、ゆったりしたポール・チェンバースのベース・ランニングに乗り、時々、ソニー・クラークSonny Clark)のピアノ・ソロを聴いているような錯覚に陥るシングル・トーンでのソロが続きます。

演奏の最後を締めくくるカデンツァ風のピアノ・ソロはもう、ソニー・クラーク・トリオによる「Be-Bop」そのまんまという気がします。

 

小粋で洗練されたブルース・フィーリング溢れる演奏は、4曲目の自作曲「Weird-O」が一番分かりやすいかな。

 


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ブルーノート(Blue Note Records)の大名盤「Sonny Clark Trio (Blue Note BLP-1579)」にさりげなく混ぜて聴いてても、ぼーっと聴いてる限り、違和感ありません(笑)。

 

ポール・チェンバースの弓弾きソロも、フィリー・ジョー・ジョーンズの4バース・ドラム・ソロも入ってますしね。

 

 


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他に収録された「It's Only A Paper Moon」などの有名スタンダードも、小粋に弾きこなしているといった印象を受けます。

 

今までソニー・クラークSonny Clark)との接点は、いずれもクラリネット奏者のバディ・デフランコ(Buddy DeFranco)のピアニストであった点しか頭になかったのですが。

演奏や共演メンバーの類似点が見えてくる事で、さらに理解が深まりました。

なるほどねー、と。

 

Kenny Drew - The Kenny Drew Trio With Paul Chambers, Philly Joe Jones
Riverside RLP12-224 / Victor Entertainment VICJ-41730 [2006.08.23]

side 1 (A)
01. Caravan (Ellington, Mills, Tizol)  4:51
02. Come Rain Or Come Shine (Mercer-Arlen)  6:04
03. Ruby My Dear (Thelonious Monk)  5:42
04. Weird-O (Kenny Drew)  4:01

side 2 (B)
05. Taking A Change On Love (Latouche, Duke)  4:37
06. When You Wish Upon A Star (Harline, Washington)  5:14
07. Blues For Nica (Kenny Drew)  5:26
08. It's Only A Paper Moon (Rose, Harburg, Arlen)  6:24

 

Kenny Drew (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds) 

September 20 and 26, 1956 at Reeves Sound Studios, NYC.

 

ケニー・ドリュー・トリオ

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ジャズ・ピアニストであるケニー・ドリューKenny Drew)は、デューク・ジョーダンDuke Jordan)同様に1960年代初頭、アメリカでの活動に見切りをつけヨーロッパに移住したミュージシャンです。

 

アンダーカレント

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バック・トゥ・ザ・トラックス

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ブルーノート(Blue Note Records)にもハードバップ系の傑作アルバム「Kenny Drew - Undercurrent (Blue Note BST-84059)」を残しており、ジャッキー・マクリーンJackie McLean)やティナ・ブルックス(Tina Brooks)らのリーダーアルバムでも優雅かつブルージーな演奏を聴かせてくれます。

 

また1970年代にはデンマークに拠点を置くジャズレーベル、スティープルチェイス(SteepleChase Records)から数多くの名盤を出し、日本のレコード会社にも多くのベストセラー・アルバムを残しております。

 

Dark Beauty

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Duo/Duo 2

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ちなみにスティープルチェイスは日本でも「北欧のブルーノート」と称賛されるジャズレーベルであり、良質なジャズアルバムを今も発売し続けております。