フリー・ジャズの開祖、オーネット・コールマン(Ornette Coleman)。
ジャズと呼ばれる音楽ジャンルで、従来の「定型的な決めた長さ(小節数)」に設定した「コード進行」に沿った演奏を破壊(笑)。
即興演奏(フリー・インプロビゼーション)を行う際の「小節数」と「コード進行」、そして定型的なリズム(ビート)さえからも逸脱した演奏形態を生み出した、ジャズ界における「革命児」とも言えるミュージシャンです。
1950年代末にコンテンポラリー(Contemporary Records)からデビューした当時は、クラッシックの要素を取り入れた「Modern Jazz Quartet」のピアニスト、ジョン・ルイス(John Lewis)などからの支援、支持はあったものの、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)などから酷評を浴び、アメリカでは演奏活動だけで生活出来るほどの仕事は無かったようです。
そんな現状に失望し、一度隠遁生活に入ったオーネット・コールマン(Ornette Coleman)ですが、現代音楽に理解あるヨーロッパ諸国からコンサートの打診を受け渡欧。
彼の音楽に理解を示す欧州で華々しい復活を遂げた後、ブルーノート(Blue Note Records)などに名作を残します。
さて、1976年に録音された「ダンシング・イン・ユア・ヘッド(Dancing In Your Head)」は、お祭り騒ぎ的な「Theme From A Symphony」の2バージョンと、1973年にモロッコに赴き、現地のミュージシャンの演奏に合わせ録音した「Midnight Sunrise」の計3曲が収録されたアルバムです。
さて、1曲目(約16分)と2曲目(約11分)は、2つのバージョンの「Theme From A Symphony」です。
「Theme From A Symphony (variation 2)」の方が、テーマ部でスタッカート気味に演奏しており演奏時間も若干短めかな。
オーネット・コールマン(Ornette Coleman)が1小節に収まる短いモチーフを延々繰り返すバックで、2ギターとドラム、ベースが執拗に煽りまくる、ファンク調の演奏です。
ファンク&ロックのビート、2ギターが奏でるカラフルなサウンドをバックに、オーネット・コールマンが、屈託なく気持ちよさそうに吹きまくっております。最後まで(笑)。
明るく異国情緒漂うメロディ(音の羅列)と、「祭りの喧騒」にも似たリズムパターンが交じり合い、猥雑極まりないお祭り騒ぎを盛り上げます。
しかし、テナーのようなぶっとい音で、オーネット・コールマンが奏でるソロのポップさ加減は、凄まじいの一言。初期のナイフのように尖った演奏から想像出来ないほどの、変貌具合かなと思ったりします。
2つのバージョンでお祭り騒ぎ的な演奏を聴いた後、3曲目に登場するのがモロッコで録音された「Midnight Sunrise」というタイトルが付けられた曲。
バグ・パイプのような響きと、トーキング・ドラムみたいな楽器が打ち出す単調なリズムに乗せ、オーネット・コールマンが即興演奏を繰り広げております。
演奏が進むにつれ、高揚するバックのリズム隊と、ソロを吹くオーネット・コールマンの立ち位置が逆転し、リズム隊にオーネット・コールマンの演奏がどんどん飲み込まれていく様は、自然の中で暮らす人と、都会で暮らす人の「生命力の差」のようなものを感じずにはいられません。
Ornette Coleman - Dancing In Your Head
A&M/Horizon SP-722 / Universal Music UCCU-6118 [2011.07.20]
side 1 (A)
01. Theme From A Symphony (variation 1) (Ornette Coleman) 15:42
side 2 (B)
02. Theme From A Symphony (variation 2) (Ornette Coleman) 11:07
03. Midnight Sunrise (Ornette Coleman) 4:36
#01,02 December, 1976 at Barclay Studios, Paris, France.
Ornette Coleman (as) Charles Ellerbee(g) Bern Nix (g) Rudy MacDaniel (b)
Ronald Shannon Jackson (ds)
#03 January, 1973 in Jajouka, Morocco.
Robert Palmer (cl,wood-fl) Ornette Coleman (as,tp,el-violin)
The Master Musicians Of Jajouka (pipes fl,three lutanists,violin,ds)
「ダンシング・イン・ユア・ヘッド(Dancing In Your Head)」と同時期に録音されたアイテムは、「Ornette Coleman - Body Meta (Artists House AH-1)」というアルバムに収録されております。
●ハーモロディクス(Harmolodics)理論というか思想
オーネット・コールマン(Ornette Coleman)は、「フリー・ジャズ(Free Jazz)」と呼ばれる演奏スタイルに理論武装するため「ハーモロディクス(Harmolodics)理論」なる、未だ定義があいまいな「演奏理論」を口にするようになります。
ご本人が逝去されるまで、具体的な論文とか書籍が発売されなかったので「理論」に至らなかった「観念」というか「思想」レベルの提唱に終わってしまったのが残念な処です。
さて、オーネット・コールマン(Ornette Coleman)が口にした「ハーモロディクス(Harmolodics)理論」て、なんでしょうかねえ?
という事で以前、色々と調べてみましたが、資料の元本というか、理論を裏付けするための資料提示が準備段階のまま頓挫している様なので、霞を掴むが如くという状態です。
それじゃあ話が終わらないので、大雑把にまとめます。
要するに、オーネット・コールマンの演奏に共感し集まったメンバーが、自由奔放に音を出した結果生まれた「演奏」を、自ら「ハーモロディクス(Harmolodics)」と呼んでいるようです。
どこかのカリスマ的存在が、自らの行いから偶然生まれた「何か」を、自己正当化(神格化)の観点から、「おおっ、これこそ、●●だっ!」と叫んでいるのと、何ら変わりないと思ったりします・・・まあ、そんな感じの行いが、口の悪い連中から「詐欺師」呼ばわりされる原因なんだと思いますけどね・・・。
という事で「ハーモロディクス(Harmolodics)」と呼んだ演奏形態は、今の処「理論」というより「思想」とか「効果」と記載した方がしっくりするでしょうね、やっぱり。
いつくか参考書籍も出版されているようなので、いずれ真面目に「勉強」してみたいと思います。