1958年に突如登場した前衛ジャズ(Avant-garde Jazz)の旗手、アルトサックス奏者のオーネット・コールマン(Ornette Coleman)。
それまでのジャズが演奏の土台とした「調性」や「楽譜の小節数」などを虚空に放り投げ、共に演奏する人々との交感(理解)力だけを頼りに、集団的即興演奏を繰り広げるジャズの新たな演奏スタイルを追求したミュージシャンです。
後にオーネットは「ハーモロディクス(Harmolodics)理論」なる、新しい音楽観念のようなものを提唱しますが、どのような理屈であるのか私、よくわかってません(笑)。
さて、前置きはこれくらいにして。
オーネットが1962年「Town Hall 1962 (ESP-Disk' ESP-1006)」の後、長い隠遁生活を経てジャズシーンに復帰した事を印象付けたのが、当初2枚に分散発売された
「The Ornette Coleman Trio At The Golden Circle Vol. 1 & 2 (Blue Note BST-84224/84225)」です。
※ジャケット裏の写真は「discogs」からお借りしました。
オーネット・コールマン、そして「とても聴きやすいフリージャズの入門盤」として、初めてジャズを聴く方にこそ、聴いて欲しいライブアルバムであり、1965年12月、前衛音楽に理解ある聴衆が多いヨーロッパ、スウェーデン・ストックホルムのジャズ・クラブ、ゴールデン・サークル(Gyllene Cirkeln)で録音されたライブ盤です。
お馴染みのアルトサックスの他、隠遁生活の期間に練習したというトランペットとヴァイオリンがおもむろに持ち出される曲も含まれます。
●「The Ornette Coleman Trio At The Golden Circle Vol. 1 (Blue Note)」
「Faces And Places」では、軽快にスイングするドラムのビートにのり、オーネットの小鳥のさえずりの如き艶やかなアルトが会場内に響き渡ります。
「European Echoes」は、ワルツ(3拍子)で演奏される曲。ワルツテンポにのったオーネット、メロディアスなフレーズを紡ぎだします。
「Dee Dee」はお子様向け番組のテーマソングみたいに、陽気で弾ける曲。チャールス・モフェット(Charles Moffett)の変化自在のドラムに乗り、オーネットの陽気なソロが続きます。
「Dawn」は、スローテンポでちょっと物悲しい感じな曲。間の多いバッキングにのせ、オーネットもじっくりとソロを奏でます。
オリジナルアルバム未収録曲「Doughnuts」は「Faces And Places」のアンサーソングみたいな曲。前乗り気味のリズム隊に合わせ、突っかかるようなフレーズを連発するオーネットであります。
The Ornette Coleman Trio At The Golden Circle Vol. 1 +3 (RVG)
Blue Note BST-84224 / 7243 5 35518 2 7 [2002]
side 1 (A)
01. Announcement 1:09
02. Faces And Places (Ornette Coleman) 11:37
03. European Echoes (Ornette Coleman) 7:53
side 2 (B)
04. Dee Dee (Ornette Coleman) 10:38
05. Dawn (Ornette Coleman) 8:07
CD Bonus Tracks
06. Faces And Places (alternate take) (Ornette Coleman) 8:32
07. European Echoes (alternate take) (Ornette Coleman) 14:13
08. Doughnuts (Ornette Coleman) 13:30
Ornette Coleman (as,tp,vln) David Izenzon (b) Charles Moffett (ds,glockenspiel)
December 3 & 4, 1965 at Gyllene Cirkeln, Stockholm, Sweden.
●「The Ornette Coleman Trio At The Golden Circle Vol. 2 (Blue Note)」
いきなり狂ったようにヴァイオリンを弾き倒す「Snowflakes And Sunshine」は、チャーネット・モフェット(Charles Moffett)の変幻自在なドラムを聴くためのトラックかと。途中、トランペットに切り替え、ヴァイオリンで弾いたのと同じフレーズを弾いたり・・・。
絶妙に気だるいテンポの「Morning Song」は、オーネットの艶のあるアルトサックス音色が冴えるトラックです。
リズム隊が再び荒れ狂う「The Riddle」では、オーネットが素早いフレーズを連発し、
リズム隊の喧騒をさらに煽ります。
オリジナルアルバム最後に収録されたラスト「Antiques」。青春映画の主題歌のような、青臭くも希望に満ちた雰囲気の演奏です。
The Ornette Coleman Trio At The Golden Circle Vol. 2 +3 (RVG)
Blue Note BST-84225 / 7243 5 35519 2 6 [2002]
side 1 (A)
01. Snowflakes And Sunshine (Ornette Coleman) 10:42
02. Morning Song (Ornette Coleman) 10:41
side 2 (B)
03. The Riddle (Ornette Coleman) 9:54
04. Antiques (Ornette Coleman) 12:36
CD Bonus Tracks
05. Morning Song (alternate take) (Ornette Coleman) 8:16
06. The Riddle (alternate take) (Ornette Coleman) 12:39
07. Antiques (alternate take) (Ornette Coleman) 13:00
Ornette Coleman (as,tp,vln) David Izenzon (b) Charles Moffett (ds,glockenspiel)
December 3 & 4, 1965 at Gyllene Cirkeln, Stockholm, Sweden.
さてさて。
ブルーノート(Blue Note Records)は当初、タウン・ホールでのライブを買い取り、発売する予定で、テストプレス盤まで作成していたそうですが、突然出てきた弁護士により、買い取り価格が高騰。発売を断念したそうで。
ちなみに、そのテストプレス盤は、マイケル・カスクーナからジャズ・ジャーナリストの小川隆夫さんにプレゼントされているようで、ブルーノート関連のイベントで公開視聴する機会もあったとか・・・。
マスターテープの所在が不明という事で、今後ブルーノートからこの音源が発売される可能性は、ほぼないようです。
板おこし(レコード盤をマスターテープ代わりに使用する)とか、やってくれそうもないしなあ・・・。
あのマイルス・デイヴィス(Miles Davis)が苦言を呈したように、新たに披露された楽器での演奏は単なる雑音レベルに近いものだと思われます。
が、トリオという小編成で演奏する際には、重要な「アクセント」的な役割を果たしている事は確か、かと・・・。
このアルバム「The Ornette Coleman Trio At The Golden Circle Vol. 1 & 2 (Blue Note) 」の後、ブルーノート(Blue Note Records)に残されたオーネットの演奏を続けて聴いてみると、トランペットとヴァイオリンの腕が少しづつ上がっていく様子を確かめる事が出来たりします。