テナーサックス界の巨人、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)が、何度かの世にいう処の「雲隠れ」を経てジャズシーンに復帰した際、当時物議をかもしていたフリージャズの先駆者、オーネット・コールマン(Ornette Coleman)が最初に率いたカルテットに参加していたドン・チェリー(Don Cherry)とビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)を召喚し、ベースのボブ・クランショウ(Bob Cranshaw)を加えたピアノレス・カルテットを結成します。
そんな、疑似オーネット・コールマン(Ornette Coleman)カルテットを率いて、1962年07月27日から30日にかけ、ニューヨークのライブスポット「Village Gate」でライブ録音された音源から厳選された3曲を収録したのが、「Sonny Rollins - Our Man In Jazz (RCA Victor LPM-2612)」となる訳です。
ちなみに1960年半ば、オーネット・コールマン(Ornette Coleman)のカルテットを抜けたドン・チェリー(Don Cherry)とビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)は共に行動していた模様で、1961年11月01日に録音された「Steve Lacy - Evidence (New Jazz NJLP-8271)」に仲良く参加してた後、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)のバンドに参加したみたいですね。
さて、「Sonny Rollins - Our Man In Jazz (RCA Victor LPM-2612)」で展開される演奏は、やや尖がってはいるものの、ビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)が刻むタイトなビートにのり、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)とドン・チェリー(Don Cherry)共に歌心溢れるソロを聴かせてくれます。
1曲目「Oleo」はお馴染み、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の作品で、アナウンス入れた27分半ほどの演奏を25分半に編集したバージョンが収録されている模様。
ビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)とボブ・クランショウ(Bob Cranshaw)のコンビネーションが生み出す細分化されたビートにのり、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)が考える処の「前衛ジャズ」を演奏してます・・・といった感じで比較的メロディアスなソロが続きます。
続くドン・チェリー(Don Cherry)の演奏は、ロリンズより細分化されたビートに寄せた、リズミックなソロを聴かせてくれており、「前衛ジャズはかくあるべし」というお手本をロリンズに対し、口伝的な手法で提示している風にも思えます。
ボブ・クランショウ(Bob Cranshaw)の気ままなベース・ソロの後、ビリー・ヒギンズ(Billy Higgins)のドラム・ソロに突入しますが、タムを多用した案外、メロディアスなドラム・ソロに聴こえます。
後半に登場するソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)は、我に返ったかの如く、以前のメロディアスなソロを吹いたりしますが、ドン・チェリー(Don Cherry)の合いの手を受け、再び「前衛ジャズ」の薫り高き演奏を始めたりするので、「前衛ジャズ」師範の模範演奏をリアルタイムで聴きつつ、修行に没頭している様にも思えます(笑)。
2曲目「Dearly Beloved」は、8分程の演奏。
リズム隊が繰り出す変幻自在なビートを受けつつ、自由奔放にソロを奏でるドン・チェリー(Don Cherry)、リズム隊による中休み的なソロを経て、一気呵成に細分化したソロを吹いたかと思えば、再びゆったりとしたソロを吹き出すソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の、変幻自在ぶりをお楽しみいただけます。
3曲目「Doxy」もソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の作品であり、緊張感溢れる15分程の演奏となっております。
この曲もソロ先発はドン・チェリー(Don Cherry)で、「前衛ジャズ」のお手本のようなソロを聴かせてくれます。
「前衛ジャズ」の具体的なお手本を聴いた後、登場するソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)ですが。
「こんな感じだとどうです?」的な自身の手癖を一旦、脇に置いた風のフリーキーなソロを吹き出しますので、「どんだけ真面目なんだよ!」と突っ込みを入れたくなる程、師匠に素直に従う弟子といった様相を呈しております(笑)。
という事で、「前衛ジャズ」の師範達を迎えた「公開稽古」といった風情の演奏を聴けるのが、この「Sonny Rollins - Our Man In Jazz (RCA Victor LPM-2612)」という訳です。
Sonny Rollins - Our Man In Jazz
RCA Victor LPM-2612 / BVCJ-7412 [1997.11.21]
side 1 (A)
01. Oleo (Sonny Rollins) 25:25
side 2 (B)
02. Dearly Beloved (Kern - Mercer) 8:15
03. Doxy (Sonny Rollins) 15:17
Don Cherry (cor) Sonny Rollins (ts) Bob Cranshaw (b) Billy Higgins (ds)
July 27-30, 1962 at Village Gate, NYC.
ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)は、このバンドで翌年1962年初頭、ヨーロッパ各地を巡業していた様です。
近年、各地で収録したライブがCDとして発売されている様ですが、ヨーロッパ巡業で
ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)がどこまで「前衛ジャズ」を習得出来たのか、今回のアルバム紹介を書いてて、とっても興味が出てきました。
機会を見てCD入手してみようっと(笑)。
ついでに。
すでに入手済である、2015年に発売された6枚組のCDボックス・セット「Sonny Rollins - Complete Live At The Village Gate 1962 (SOLAR RECORDS SOLAR-4569959)」の「CD1」には、未編集のロング・バージョンが収録されていたりします。
●Sonny Rollins - Complete Live At The Village Gate 1962 [CD1]
1-01. Oleo #1 [complete unedited version] (Sonny Rollins) 27:38
1-02. Untitled Original A #1 (Sonny Rollins - Don Cherry) 14:43
1-03. Doxy #1 /Love Walked In (Sonny Rollins / George & Ira Gershwin) 9:27
1-04. Dearly Beloved [originally released edited version] (Jerome Kern - Johnny Mercer) 8:20
1-05. Doxy #2 (Sonny Rollins) 16:37
Don Cherry (cor) Sonny Rollins (ts) Bob Cranshaw (b) Billy Higgins (ds)
#1-01-03: July 27, 1962.
#1-04,05; July 28, 1962 first set
ちなみに師匠格のオーネット・コールマン(Ornette Coleman)は1962年12月21日、ニューヨークの「Town Hall」で開催されたコンサートを最後に、1965年半ばまで引退状態になる訳です・・・。
音楽シーンに復帰したソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)のアルバムを少しだけ紹介致します。
RCA時代のソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の話題と言えば、破格の契約金にも関わらず、出来上がったアルバムの印象がイマイチ薄い・・・という点に終始してしまいがちですが。
新潟市北区に鎮座する「豊栄図書館」に収納してあった「Complete RCA Recordings」を聴いてみると、何故か「美味しい部分だけを見事に切り取っていた」という摩訶不思議な編集の影響が、大きい事に気づかされたりします。
当時、RCAに居たプロデューサーの感性と、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の考えとかに、作品をぶち壊すレベルの「ずれ」が生じていたんでしょうねえ・・・。
何度も「雲隠れ」している事から推測すると、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)のようにプロデューサーに喧嘩売ってでも、自我を貫き通すだけの意思の強さが、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)には欠けていたのかもしれませんし。
January 30, 1962 in NYC.
February 13 & 14, 1962 in NYC.
●Sonny Rollins - The Bridge (RCA Victor LPM-2527)
April 5, 25 & 26, 1962 in NYC.
May 14, 1962 in NYC.
●Sonny Rollins - What's New (RCA Victor LPM-2572)
July 27-30, 1962 at Village Gate, Greenwich Village, NYC.
●Sonny Rollins - Our Man In Jazz (RCA Victor LPM-2612)