「Miles Davis - Sketches Of Spain (Columbia) 1960」アランフェス協奏曲とスペイン関連の曲
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)が、ギル・エヴァンス(Gil Evans)楽団と共演したアルバム第3弾で最終作となる作品が「Sketches Of Spain (Columbia CS-8271/CL-1480)」です。
「アランフェス協奏曲」を筆頭に、スペインに関連する計5曲が演奏されております。
1959年11月20日に16分にも及ぶ大作「アランフェス協奏曲 Concierto de Aranjuez (Adagio)」が録音され、翌1960年03月10、11日のセッションで残りの4曲が録音されました。
マイルスの自叙伝によると、マイルスが友人のスタジオ・ベーシスト、ジョー・モンドラゴン(Joe Mondragon)の家で盲目の作曲家ホアキン・ロドリーゴ(Joaquín Rodrigo)が作曲した「アランフェス協奏曲」を聴かされ、この曲を録音する事を即決したそうです。
「アランフェス協奏曲」は、何人かのジャズ・ミュージシャンが録音しておりますが、このマイルスとギルのバージョンが最高傑作である事に異議を唱える人は少ないかと思われます。
まあ、私はジム・ホール(Jim Hall)とチェット・ベイカー(Chet Baker)のコンビネーションが素晴らしい「CTI Records」のバージョンも好きなんですけどね。
2曲目「Will O' the Wisp」は、スペインの作曲家マヌエル・デ・ファリャ(Manuel DeFalla)が書いた舞踏音楽「恋は魔術師(El Amor Brujo)」からの曲との事。
3曲目の「Pan Piper」は、マイルスが民族音楽のレコードで見つけたペルー・インディアンのバンプ(即興伴奏)を取り入れた曲。
ニューヨークに戻り、相棒のギル・エヴァンス(Gil Evans)に「アランフェス協奏曲」の録音について相談した処、「1枚のレコードにするには別の要素が必要だ」という事になり加えられた曲だそうです。
4曲目「Saeta」は、スペインの「サエタ(Saeta)」というマーチを題材にしたもの。
スペインのアンダルシア地方では、イースターのお祭りの際歌われる、「キルストの受難を説く」曲なんだそうです。
「Saeta」でマイルスは、女性歌手の役割をトランペットで演じたそうで、「言葉と音楽の中間のフィーリングで吹くのは大変難しかった」という感想を残しています。
12分にも及ぶ5曲目「Solea」は、マイルスが自叙伝で、「フラメンコの基本的な形式の一つで、孤独とか、嘆きとか、哀悼を歌った曲で、アメリカの黒人ブルースの感覚に近い」と述べております。
Miles Davis - Sketches Of Spain (1960)
Columbia CS-8271/CL-1480 / Sony Records SRCS-9108 [1996.09.21]
side 1 (A)
01. Concierto de Aranjuez (Adagio) (J. Rodrigo) 16:23
02. Will O' the Wisp (From "El Amor Brujo") (M. DeFalla) 3:49
side 2 (B)
03. Pan Piper (Gil Evans) 3:55
04. Saeta (Gil Evans) 5:08
05. Solea (Gil Evans) 12:17
#01 November 20, 1959 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
Miles Davis (flh, tp) Gil Evans (arr, conductor)
Bernie Glow, Taft Jordan, Louis Mucci, Ernie Royal (tp) Dick Hixson, Frank Rehak (tb)
John Barrows, Jim Buffington, Earl Chapin, French horn; Jimmy McAllister (tuba)
Albert Block, Eddie Caine (fl) Harold Feldman (oboe, cl)I Danny Bank (bass-cl)
Janet Putnam (harp) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds) Elvin Jones (per)
#03 March 10, 1960 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
Miles Davis (flh, tp) Gil Evans (arr, conductor)
Johnny Coles, Bernie Glow, Ernie Royal (tp) Dick Hixson, Frank Rehak (tb)
Jim Buffington, Tony Miranda, Joe Singer (french horn) Bill Barber (tuba)
Albert Block, Harold Feldman (fl) Romeo Penque (oboe) Jack Knitzer (bassoon)
Danny Bank (bass-cl) Janet Putnam (harp) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds)
Elvin Jones (per)
#02,04,05 March 11, 1960 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
add Louis Mucci (tp)
結果的に大作となった「Sketches Of Spain」では、実際にスタジオ入りした際、ギル・エヴァンスが書いた楽譜が書き込みが緻密すぎて、最初に集められたクラッシック畑のトランペッター達では思った演奏が出来ず、(仕方なく)メンバーを入れ替え、楽譜を書き直すという紆余曲折があったそうで。
リハーサル含め楽団のメンバーは15回もスタジオ入りし、マイルスは体調不良等の理由でそのうち9回だけ演奏に加わったみたいです。
録音の予算が大幅オーバーし、プロデューサーのテオ・マセロ(Teo Macero)がコロンビアの社長、ゴダード・リーバーソン(Goddard Lieberson)に呼び出されたという話もあるそうです(笑)。