加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)がジャズ名盤の個人的感想など綴ってます。

「Miles Davis - Filles De Kilimanjaro (Columbia) 1968」コンセプト・アルバム「キリマンジャロの娘」

マイルス・デイヴィスMiles Davis)のアルバム「キリマンジャロの娘 Filles De Kilimanjaro (Columbia CS-9750)」は、エレクトリック路線に舵を切ったマイルスの「Miles In The Sky (Columbia CS-9628)」に続いて発売されたスタジオ録音です。

 

「Miles Davis - Filles De Kilimanjaro (Columbia) 1968」コンセプト・アルバム「キリマンジャロの娘」


ジャケットの女性は、モデルでシンガー・ソング・ライターのベティ・メイブリー(Betty Mabry)さんで、フランシス・テイラー(Frances Taylor)さんと離婚後に結婚した方だそうです。マイルスの自叙伝によると、約一年で破局したそうですが・・・。

 

ベティさんは、マイルスにジミ・ヘンドリックスJimi Hendrix)の音楽とご本人を紹介したり、当時のファッションの変化にも関与していたとの事で、マイルスに変化をもたらした最重要人物であった様です。

 

kaji-jazz.hatenablog.com

 

アルバム「Miles In The Sky (Columbia CS-9628)」でも言及した通り、1968年はロックの世界では「サイケデリック・ムーヴメント」なる動きが広まり、それに反発する動きととして「ルーツ・ミュージック(ブルース、カントリー、ソウル、ジャズ)」へと回帰したバンドが登場する時期なんだそうです。

 

ロック界の流れをお手本にしつつ、この「キリマンジャロの娘」を「コンセプト・アルバム」として、アルバム・タイトルや曲名をフランス語に統一しているのがまた、興味深い処ですね。

 

「Miles Davis - Filles De Kilimanjaro (Columbia) 1968」コンセプト・アルバム「キリマンジャロの娘」

ジャケット裏に過去の代表作を掲載したり、やや長文の解説を載せている事からも、新たな客層に向けて作られたアルバムである事が容易に伺えます。

 

で、マイルス・デイヴィスMiles Davis)以外の演奏メンバーはお馴染み、テナー・サックスのウェイン・ショーターWayne Shorter)、エレクトリック・ピアノハービー・ハンコックHerbie Hancock)、エレクトリック・ベースのロン・カーターRon Carter)、ドラムスのトニー・ウィリアムスTony Williams)というエレクトリック化された「60年代黄金クインテット」が3曲。

 

エレクトリック・ピアノチック・コリアChick Corea)、エレクトリック・ベースをデイブ・ホランドDave Holland)に交代した新バンドによる録音が2曲となっております。

 

マイルスの自叙伝を確認すると、キャノンボール・アダレイCannonball Adderley)のバンドでジョー・ザヴィヌルJoe Zawinul)がエレクトリック・ピアノを弾いているサウンドが気にいったからだそうで、それが次のスタジオ・アルバム「In A Silent Way (Columbia CS-9875)」に繋がる訳ですね・・・。

 

 

さて、「キリマンジャロの娘 Filles De Kilimanjaro (Columbia CS-9750)」は、全曲マイルス・デイヴィスMiles Davis)が書いた楽曲です。

 

1曲目「Frelon Brun (Brown Hornet)」と5曲目「Mademoiselle Mabry (Miss Mabry)」が、チック・コリアChick Corea)と、デイブ・ホランドDave Holland)が加わった新バンドによる演奏。

2曲目「Tout De Suite」、3曲目「Petits Machins (Little Stuff) 」、4曲目「Filles De Kilimanjaro」が「60年代黄金クインテット」にメンバーに電子楽器に持ち替えさせて演奏したものです。

 

 

6分弱の1曲目「Frelon Brun (Brown Hornet)」では、チック・コリアが弾くラテン・タッチのエレクトリック・ピアノが、マイルスのソロに新たな刺激を与えていることが伺えます。

 


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約14分の2曲目「Tout De Suite」は、穏やかな雰囲気を醸し出すハービーのエレクトリック・ピアノが、これまた新鮮な1曲。

ロン・カーターが弾くエレクトリック・ベースのリズム・パターンが、斬新なものであり、トニーが叩くリズム・パターンも何だか今までにない新しいもの。

そんな新しいリズム・パターンに乗り、マイルスの軽快なブローが展開されます。

 


約8分の3曲目「Petits Machins (Little Stuff) 」は、編曲者にギル・エヴァンス(Gil Evans)の名前がクレジットされております。

 


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ギル・エヴァンスが編曲しただけあり、エレクトリック・ピアノが奏でるサウンドがオーケストラっぽい雰囲気がしますね。

ここでのマイルスも、実に軽快なソロを吹いておりますが、トニーを筆頭とする若手ミュージシャンとの共演で得たアイデアを、存分に披露している感じですね。

 

 

約12分の4曲目「Filles De Kilimanjaro」は、穏やかな雰囲気の中、ロンとトニーが演奏する斬新なリズム・パターンに乗り、マイルス、ウェイン、ハービーの三人がテーマ・フレーズを仲良くユニゾンで演奏するという面白い構成。

 


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約4分にも及ぶ長めのテーマ部分を経て、マイルスのソロが登場しますが、何というか「Kind Of Blue (Columbia CS-8163)」を思わせる穏やかなフレーズからロックっぽいメロディに発展させていく感じが面白いですね。

 

続く、ウェイン・ショーターのソロも斬新なリズム・パターンをバックにする事で、真新しい雰囲気が漂いますし、ハービー・ハンコックエレクトリック・ピアノ・ソロは、重厚な高速フレーズを弾いても、軽やかに響きますし、そこに絡むマイルスの高速フレーズが映えます。

 

 

約16分の5曲目「Mademoiselle Mabry (Miss Mabry)」は、チック・コリアと、デイブ・ホランドに交代した、音の間を生かした比較的穏やかな雰囲気な演奏で、ジャケットにも登場するベティ・メイブリー(Betty Mabry)に捧げた曲なんだと思われます。


チック・コリアが弾く、ホレス・シルヴァーHorace Silver)系統のラテン風味なエレクトリック・ピアノは、やや突っ込み気味なバッキングなんですが、それが音の間を上手く生かすのが得意なマイルスのソロと合わさり、これまでにない新鮮な空気のようなものを感じる事が出来ます。

これくらいのテンポで、最小限度のバッキングに抑えた演奏だと、マイルスの良さが存分に発揮されますね。

 

 

横道にそれますが、小川隆夫さんの2007年に書かれたブログで、ハービー・ハンコックがマイルスのバンドで演奏していた時代を振り返っています。

 

blog.excite.co.jp

 

ハービーがマイルスのバンドを去った理由は「病気で仕事に穴を開けてしまった」為であり、代役で参加したチック・コリアChick Corea)が、そのままマイルスのクインテットに加わり、結果としてハービーが戻る席が無くなり、結果的に脱退となった様です。

 

 

Miles Davis - Filles De Kilimanjaro
Columbia CS-9750 / Sony Records SRCS-9306 [1997.06.21]

side 1 (A)
01. Frelon Brun (Brown Hornet) (Miles Davis)  5:42
02. Tout De Suite (Miles Davis)  14:09
03. Petits Machins (Little Stuff) (Miles Davis/arr by Gil Evans)  8:09

side 2 (B)
04. Filles De Kilimanjaro (Miles Davis)  12:04
05. Mademoiselle Mabry (Miss Mabry) (Miles Davis)  16:34


#03 June 19, 1968 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
#02 June 20, 1968 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
#04 June 21, 1968 at Columbia Studio B, NYC.

Miles Davis (tp) Wayne Shorter (ts) Herbie Hancock (el-p) Ron Carter (el-b) 
Tony Williams (ds) 


#01,05 September 24, 1968 at Columbia 30th Street Studios, NYC.

Miles Davis (tp) Wayne Shorter (ts) Chick Corea (el-p) Dave Holland (b)

Tony Williams (ds) 

 

Filles De Kilimanjaro

Filles De Kilimanjaro

Amazon

 

 

1968年から1970年は、マイルスにとって「大いなる変革」の時代と言えます。

 

<1968>
January 16, 1968 at Columbia Studio B, NYC.

Miles Davis - Miles In The Sky (Columbia CS-9628)
Miles Davis - Circle In The Round (Columbia KC2-36278)

Miles In The Sky

Miles In The Sky

Amazon

 

May 15, 1968 at Columbia Studio B, NYC.
May 16, 1968 at Columbia Studio B, NYC.
May 17, 1968 at Columbia Studio B, NYC.

Miles Davis - Miles In The Sky (Columbia CS-9628)

 

 

June 19, 1968 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
June 20, 1968 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
June 21, 1968 at Columbia Studio B, NYC.
September 24, 1968 at Columbia Studios, NYC.

Miles Davis - Filles De Kilimanjaro (Columbia CS-9750)

 


<1969>
February 18, 1969 at Columbia Studio B, NYC.

Miles Davis - In A Silent Way (Columbia CS-9875)

 

August 19, 1969 at Columbia Studio B, NYC.
August 20, 1969 at Columbia Studio B, NYC.
August 21, 1969 at Columbia Studio B, NYC.

Miles Davis - Bitches Brew (Columbia GP-26)

 


<1970>
February 6, 1970 at Columbia Studio B, NYC.
June 3, 1970 at Columbia Studio B, NYC.
June 4, 1970 at Columbia Studio B, NYC.
December 19, 1970 at The Cellar Door, Washington, DC.

Miles Davis - Live/Evil (Columbia G-30954)

 


February 18, 1970 at Columbia Studio B, NYC.
April 7, 1970 at Columbia Studios, NYC.

Miles Davis - Jack Johnson (Columbia S-30455)

 


April 10, 1970 at Fillmore West, San Francisco, CA.

Miles Davis At Fillmore West - Black Beauty (CBS/Sony SOPJ-39/40)

 


May 19, 1970 at Columbia Studios, NYC.

Miles Davis - Get Up With It (Columbia KG-33236)

 


June 17, 1970 at Fillmore East, NYC.
June 18, 1970 at Fillmore East, NYC.
June 19, 1970 at Fillmore East, NYC.
June 20, 1970 at Fillmore East, NYC.

Miles Davis At Fillmore (Columbia G-30038)