加持顕のジャズに願いをのせて

新潟在住の加持顕(かじあきら)が、ジャズの名盤について個人的感想を気まぐれに投稿。

「Clifford Brown & Max Roach - Study In Brown (EmArcy) 1955」短命なる天才トランぺッターが残した名盤

ブラウニー(Brownie)の愛称で誰からも愛された天才トランぺッター、クリフォード・ブラウンClifford Brown)。

ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)の後を継ぐ逸材として期待されておりましたが、彼もまた短命で、実質4年間のプロ活動ではありましたが、幾つか名演奏を残しております。

 

25歳の時に不慮の事故で亡くなった後、ベニー・ゴルソンBenny Golson)が、彼を追悼した「I Remember Clifford」という曲を作曲してしまうほどの存在でした。

ブラウニーは理系、特に数学が得意で品行方正。酒やドラッグなどとも無縁だったそうです。

ただ一つ、「スピード狂」という悪癖がありまして。そのため1回目の交通事故で大怪我をし、肩の脱臼癖が治らず晩年まで苦労してたみたいです。

 

ブラウニーの凄さを感じるのは、何といってもどの録音を聴いても完璧なアドリブ・ソロ。

「コード分解の鬼」とまで呼ばれてた事でも分かる通り、コード進行に沿った理論整然としたアドリブソロを吹いております。


そんな彼が残したベストセラーアルバムが、「Study In Brown (EmArcy)」。

 

「Clifford Brown & Max Roach - Study In Brown (EmArcy) 1955」短命なる天才トランぺッターが残した名盤

チャーリー・パーカーCharlie Parker)やバド・パウエルBud Powell)など、ジャズ界の巨人達との共演で人気の高いドラマー、マックス・ローチMax Roach)との双頭バンド「Clifford Brown & Max Roach Quintet」名義での録音です。

 

「Clifford Brown & Max Roach - Study In Brown (EmArcy) 1955」短命なる天才トランぺッターが残した名盤

このアルバムは「エマーシー(EmArcy Records)」に残した作品群の中でも比較的楽曲の粒が揃い聴きやすいです。

 

テナーにハロルド・ランドが参加した時期の「Clifford Brown - Max Roach Quintet」における、グループとしてのまとまりも堪能出来る1枚です。

 

バンドの編曲も担当してたらしい、ピアノのリッチー・パウエル(Richie Powell)の小粋なピアノも楽しめます。

なお、リッチーは名前からも推測出来る通りジャズ界の巨人の一人、バド・パウエルBud Powell)の弟です。早世が惜しまれるピアニストでしたね。


このバンドによる「Take The A Train」は、イントロでフロント二人が出発する汽笛の真似をしてみたり、エンディングではドラムのマックス・ローチがブラシを使い、列車が速度を落とし止まるまでの様子を表現してみたりと、ユーモアに溢れた仕掛け満載の演奏だったりします。

 


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あと、9曲中4曲がクリフォード・ブラウンの自作曲であるという点も、注目すべきですかねえ。

ブルースの「Sandu」は、後にドン・シックラー(Don Sickler)の編曲で、フレディ・ハバードFreddie Hubbard)とウディ・ショウ(Woody Shaw)の2トランペットによる演奏がブルーノート・レコードで録音されていたりします。

 

Clifford Brown & Max Roach - Study In Brown 
EmArcy MG-36037 / Mercury Music Entertainment PHCE-3054 [1996.12.20]

 

side 1 (A)
01. Cherokee (Ray Noble)  5:41
02. Jacqui (Richie Powell)  5:09
03. Swingin' (Clifford Brown)  2:51
04. Lands End (Harold Land)  4:54

side 2 (B)
05. George's Dilemma (Clifford Brown)  5:33
06. Sandu (Clifford Brown)  4:54
07. Gerkin For Perkin (Clifford Brown)  2:55
08. If I Love Again (Oakland, Murray)  3:22
09. Take The A Train (Billy Strayhorn)  4:16


Clifford Brown (tp) Harold Land (ts) 
Richie Powell (p) George Morrow (b) Max Roach (ds) 

February 23-25, 1955 at Capitol Studios, NYC.

 

 

最後にクリフォード・ブラウンClifford Brown)がプロとして活動した4年間、22歳から25歳までの概要を記載しておきます。

 

それ以前からチャーリー・パーカーCharlie Parker)や、ファッツ・ナバロ(Fats Navarro)らと共演。ジャズ界の巨人達からも、有望なトランぺッターとして注目されていたようです。

 

<1953年(22歳)>
●1953年06月09日、ブルーノート(Blue Note Records)にて初録音。

 

●1953年06月11日、タッド・ダメロンTadd Dameron)楽団にて録音。

アルバム「Clifford Brown Memorial ( Prestige PRLP7055)」に収録。

 

●1953年09月よりライオネル・ハンプトンLionel Hampton)楽団と歴史的なヨーロッパ・ツアーに参加。なお同楽団トランペットの同僚として、クインシー・ジョーンズアート・ファーマーらが居た。

 

<1954年(23歳)>
●1954年02月21日、ブルーノート・オールスターズとして「A Night At Birdland (Blue Note)」録音。

A Night at Birdland, Vol.1

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●1954年04月、「Clifford Brown - Max Roach Quintet」にて「GNPレコード」に初ライブ録音。

●1954年08月以降、「エマーシー(EmArcy Records)」で様々な録音を残す。

 

<1955年(24歳)>
☆1955年02月、アルバム「Study In Brown (EmArcy)」録音。

 


<1956年(25歳)>
●1956年01月、ハロルド・ランド(Harold Land)に代わりソニー・ロリンズSonny Rollins)が参加した「Clifford Brown And Max Roach At Basin Street (EmArcy)」を録音。

アット・ベイズン・ストリート +8

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●1956年03月、最後のスタジオ録音となる「Sonny Rollins Plus 4 (Prestige)」を録音。

 

●1956年06月26日の真夜中。
雨の中、ド近眼だったらしいリッチー・パウエル(当時24歳)の妻が運転する車で移動中、事故死。新品のトランペットを受け取るため、他のバンドメンバーと別行動してた・・・という話もあり。

しかし、アメリカのジャズ界は長く過酷な演奏旅行中の事故で有名ミュージシャンを失う事多いですねえ・・・。