1957年01月に録音された「Art Pepper Meets The Rhythm Section (Contemporary) 」は、アルトサックス奏者、アート・ペッパー(Art Pepper)とマイルス・デイヴィス(Miles Davis)のリズムセクションが共演した企画もののアルバム。
マイルスのバンドで鍛え上げられたトリオをバックに、アート・ペッパーがゴキゲンな演奏を聴かせてくれます。
さて。
アート・ペッパーのディスコグラフィを眺めると、1954年と1955年の録音がなく、1956年と、この「Art Pepper Meets The Rhythm Section (Contemporary) 」が録音された1957年に録音が集中している事に気がつきます。
録音がない時期は、西海岸の人気ジャズミュージシャンあるある(笑)的に、麻薬癖から投獄されていたようです。
釈放後の最初の録音は1957年07月の「Shorty Rogers - The Big Shorty Express (RCA Victor)」。
それ以降、08月に「The Return Of Art Pepper (Jazz: West)」と、「The Marty Paich Quartet Featuring Art Pepper (Tampa)」を録音。
10月には「Chet Baker And Art Pepper - Playboys (World Pacific)」し、11月に「The Art Pepper Quartet (Tampa)」を録音。
そして12月から翌年01月にかけ、極め付きの名盤「Art Pepper - Modern Art (Intro)」を録音し、その5日後に「Art Pepper Meets The Rhythm Section (Contemporary) 」を録音、という流れです。
アート自身には当日まで録音がある事を知らされていなかった上、楽器の調子も悪かったらしいですが、復帰後、立て続けに他レーベルで名盤を録音していた時期。
なので、多少のアクシデントがあったとしても天才アルト奏者自身の演奏に、何ら支障なかったという事のようです。
コンテンポラリー・レコード特有のカラッとして各楽器の輪郭がはっきりした録音であるからなのか、今も多くのジャズファンを魅了し続けております。
気候が影響しているのか、東海岸のミュージシャン達に比べ、西海岸のミュージシャンの演奏は、のんびりというか、ほんわかしている印象がありますが。
ここでのアート・ペッパーは、マイルスのご機嫌なリズムセクションに対峙し、隙あらばアルトが奏でるフレーズで、切りかかる位の勢いで演奏している様にも感じます。
あのマイルス・デイヴィス(Miles Davis)を演奏中に燃え上がらせた、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Philly Joe Jones)の切れ味鋭いドラムが、アートの演奏を必要以上に焚きつけていたというのもあるかと思いますが(笑)。
という訳で、「西(West)の天才サックス奏者」と「東(East)の有名リズム隊」の共演は大成功。
録音の良さもあって、今も売れ続ける大ベストセラー・アルバムとなりましたとさ。
Art Pepper Meets The Rhythm Section +1 (1957)
Contemporary S 7532 / Victor VICJ-60311 [1999.06.02]
side 1 (A)
01. You'd Be So Nice to Come Home to (C.Porter) 5:25
02. Red Pepper Blues (Red Garland) 3:37
03. Imagination (Burke-Van Heusen) 5:53
04. Waltz Me Blues (Pepper-Chambers) 2:56
05. Straight Life (A.Pepper) 3:59
side 2 (B)
06. Jazz Me Blues (Tom Delaney) 4:47
07. Tin Tin Deo (Chano Pozo) 7:42
08. Star Eyes (De Paul-Raye) 5:13
09. Birks' Works (D.Gillespie) 4:18
CD Bonus Track
10. The Man I Love (I&G.Gershwin) 6:35
Art Pepper (as) Red Garland (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds)
January 19,1957 in Hollywood, CA
「Art Pepper Meets The Rhythm Section (Contemporary) 」が録音された時期のマイルスは「自叙伝」を読むと、12月から二か月に渡る長期ツアーの最中。
フィラデルフィアから、シカゴ、セントルイス、ロサンゼルスと廻り、サンフランシスコの「ブラック・ホーク」には2週間の長期出演をしていたそうで。
1956年にはプレステッジ・レコードに、俗に「マラソン・セッション」と呼ばれる2回のセッションを行い、アルバム4枚分の録音を残し・・・。
1957年に入りるとコロンビア・レコードで、ギル・エヴァンス(Gil Evans)と「Miles Ahead」の録音準備に取り掛かっていた時期のようです。
アート・ペッパー(Art Pepper)は1960年、二匹目のどじょう的な続編「Gettin' Together! (Contemporary)」を、その当時のマイルスのリズムセクション(ウイントン・ケリーらのトリオ)をバックに録音してます。
実は私、機会がなく一度も聴いた事なんですけど「このアルバム凄い!」とかいう意見見た事ないので、ありきたりな演奏なんだと思われます。
後期のアートは、フリーに足を突っ込んだジョン・コルトレーン(John Coltrane)に傾倒。激情を伴う過激な演奏スタイルになっていきました。
ただ「Art Pepper Meets The Rhythm Section (Contemporary) 」がベストセラーを続けている事でも分かる通り、私のように「BGMとして使える」50年代当時の鳥がさえずるような優しい演奏を好む人が大半のように思われます(笑)。