ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)の人気盤「Page One (Blue Note BST-84140)」
「ジャズのあらゆるスタイルが含まれている」と言われる、ジョー・ヘンダーソンのスタイルを余すことなく伝えた、一生付き合えるアルバムです。
このアルバムを聴いていると、部屋の温度が2度位下がるような、爽やかな雰囲気に包まれます。
このアルバムの収録曲は、ジョー・ヘンダーソン自身もお気に入りだったのか、晩年までライブで演奏しておりましたね。
また、共演する後見人的存在のケニー・ドーハム(Kenny Dorham)は、「Blue Bossa」、「La Mesha」の自作曲2曲を提供した他、ジャケット裏の解説まで担当する力の入れようです。
3曲目以降、残りの4曲はジョー・ヘンダーソン自身の作曲となります。
1曲目はお馴染み、ケニー・ドーハム作曲の「Blue Bossa」。
軽快なボサノバのリズムに乗り、爽やかな演奏が繰り広げされます。
自身のスタイルとは違っているそうですが、このアルバムのおかげでジョー・ヘンダーソンは、仕事が増えたとか。
続く2曲目の幻想的なバラッド「La Mesha」もケニー・ドーハム作曲。
曲名は、当時3歳だったケニー・ドーハムの娘さんの名前からいただいたらしいです。
ここでのジョー・ヘンダーソン、朝霧に包まれた山中みたいに幻想的な雰囲気の中、爽やかにブローしております。
3曲目の「Homestretch」は、キーがB♭のアップテンポ・マイナー・ブルース。
トップバッターのジョー・ヘンダーソンから、師匠のケニー・ドーハムに鮮やかにソロを受け渡す部分、二人の息がぴったり合っているのが良く分かります。
4曲目「Recorda-Me(Remember Me)」は、ジョー・ヘンダーソン作曲のボサノバ・ナンバー。
良く聴くと、キーが同じで「Blue Bossa」のアンサー・ソングみたいです。
エキゾチックな雰囲気漂う5曲目の「Jinrikisha」。曲名は、日本の「人力車」から拝借した模様。
ここでのジョー・ヘンダーソン、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)やウェイン・ショーター(Wayne Shorter)を彷彿とさせる力強い演奏を聴かせてくれます。
この曲調だと、ケニー・ドーハムのスタイルは、ちょっと浮いた(古い?)感じがするのは仕方無いですかね。
逆にコルトレーン・カルテットに在籍していたマッコイ・タイナーのソロは、ツボを押さえていて素晴らしいです。
ラストはファンキー・マイナー・ブルース(裏解説のまま)の「Out Of The Night」。
こういう古めの曲調の場合、ケニー・ドーハムが生き生きしたソロを聴かせてくれますね。もちろんジョー・ヘンダーソンも。
Joe Henderson - Page One (RVG)
Blue Note BST-84140 / 東芝EMI TOCJ-9069 [1999.01.27]
side 1 (A)
01. Blue Bossa (Kenny Dorham) 8:04
02. La Mesha (Kenny Dorham) 9:10
03. Homestretch (Joe Henderson) 4:16
side 2 (B)
04. Recorda-Me (Remember Me) (Joe Henderson) 6:03
05. Jinrikisha (Joe Henderson) 7:25
06. Out Of The Night (Joe Henderson) 7:24
Kenny Dorham (tp) Joe Henderson (ts)
McCoy Tyner (p) Butch Warren (b) Pete La Roca (ds)
June 3, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
いろいろ書物を読んでいると、おもしろい経緯が分かりました。
最初は、ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)がケニー・ドーハムの演奏に惚れ込み、ケニー・ドーハムと同じように演奏したくて練習を重ね、遂には弟子入りを果たしたようなのです。
この辺りは、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)がチャーリー・パーカー(Charlie Parker)に惚れ込み、弟子入りした経緯と同じようですね。
つまり、ジョー・ヘンダーソンの電磁波パルスの様に予測不可能な演奏のルーツには、
ケニー・ドーハムの要素が混じっているという事になります。
ジョー自身のインタビュー(出所失念)では、「(共演時には、)息継ぎからアクセントのつけ方までそっくりに吹くことが出来た。」というお話を読んだことがあります。
なんだかこの辺りは、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)と、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)の関係に似ていますね。
そうして様々なスタイルを身に付けたジョー・ヘンダーソンの事を、「ジャズのあらゆるスタイルが含まれている」を評するサックス奏者がいる程です(誰かは失念)。