ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)のブルーノート(Blue Note Records)初リーダー作は、彼らしからぬ爽やかなアルバムに仕上がっております。
この爽快感は「Joe Henderson - Page One(BST-84140)」に通じるものがありますが、両作に参加するマッコイ・タイナー(McCoy Tyner)のせいかも。
ちなみにこのアルバムのリズム・セクションは、あのジョン・コルトレーン(John Coltrane)カルテットの3人。
ブルーノート(Blue Note Records)の新人売り出し策として、人気あるコルトレーン・カルテットの3人を起用したのだろうと思われますが。
ブルーノートの狙い通りか、このアルバム全編でアトランテック時代の「ジョン・コルトレーン・カルテット」っぽい雰囲気が漂ってます。
1曲目はワルツの「Night Dreamer」。何回聴いても爽やかに感じられます。
私、この曲好きなんで、自分の率いたバンドで演奏してみたりしてます。
何となく、ジョン・コルトレーン・カルテットの「My Favorite Things」を、思い出してしまいますね。
2曲目の「Oriental Folk Song」は、古い中国の唄からインスパイアされたそうです。
エルビン・ジョーンズ(Elvin Jones)のタメを効かせたリズムに乗り、フロントの二人もタメを効かせたロングトーン多めのフレーズを連発。セカンド・リフに続いてエルビン・ジョーンズのドラム・ソロがあります。
3曲目のバラッド「乙女座(Virgo)」は、ウェイン・ショーター自身の誕生日(1933年8月25日生)の星座から命名されたんでしょう。
この曲だけウェインのワンホーンでの演奏で、モーガンはお休み。
曲の雰囲気は、4ヶ月後に録音される2枚目のリーダー作「JUJU(BST-4182)」に繋がってますね。マッコイの短いソロも秀逸。
4曲目、レコードだとB面1曲目の「Black Nile」。
タイトルは、アラン・ムーアヘッド(Alan Moorehead)の小説?「The White Nile and The Blue Nile」からインスパイアされたそうです。
ハードにスイングするこの曲は、ウェイン・ショーターが音楽監督を務めたモード路線に舵を切ったアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズのバンド・サウンドに近いです。
と言う訳で、ソロではリー・モーガンが大健闘。「 Art Blakey & The Jazz Messengers - Indestructible(BST-84193)」で聴かれるような熱いフレーズを連発します。
5曲目、マッコイの短いソロで始まるファンキーな「Charcoal Blues」も、ほぼジャズ・メッセンジャーズ・サウンド。
ちなみに「Charcoal」とは木炭のことらしいです。
6曲目、物騒なタイトルがついた「アルマゲドン(Armageddon)」は、シリアスで結構劇的なテーマを持つ曲。
ハードなソロを展開するショーター、洒脱なモーガン、高速で鍵盤の上を跳ね回るマッコイとラストの曲としては文句無し。
ドラムのエルビン・ジョーンズと、ベースのレジー・ワークマン(Reggie Workman)が生み出す強烈なドライブ感は、何度聴いても凄いと思います。
Wayne Shorter - Night Dreamer +1 (RVG)
Blue Note BST-84173 / 7243 8 64467 2 5 [2005]
side 1 (A)
01. Night Dreamer (Wayne Shorter) 7:15
02. Oriental Folk Song (Wayne Shorter) 6:51
03. Virgo (Wayne Shorter) 7:07
side 2 (B)
04. Black Nile (Wayne Shorter) 6:28
05. Charcoal Blues (Wayne Shorter) 6:54
06. Armageddon (Wayne Shorter) 6:23
CD Bonus Track
07. Virgo (alternate take) (Wayne Shorter) 7:03
Lee Morgan (tp #1,2,4-6) Wayne Shorter (ts) McCoy Tyner (p)
Reggie Workman (b) Elvin Jones (ds)
April 29, 1964 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
リー・モーガンとは「アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ」で共演していた仲ですね。
「決定版ブルーノート・ブック(ジャズ批評ブックス)」をぱらぱらめくると、ウェイン・ショーターはこの頃、頻繁にリー・モーガンとスタジオ入りしてみたいです。
まず2ヶ月前の2月15日には「Lee Morgan - Search For The New Land(BST-84169)」の録音。
このアルバム「Night Dreamer (BST-84173)」の前後、4月24日と5月15日には「Art Blakey & The Jazz Messengers - Indestructible(BST-84193)」で共演しております。
ついでなんで。
「Wayne Shorter - Night Dreamer (Blue Note BST-84173)」の録音データを確認すると、「Virgo (alternate take)」含み「テイク7」までで、録音を完了しております。
つまり、1回もミスなしで録音終えている訳で、その点からも長年共演していた2人のコンビネーションの良さが裏付けされていると思います。