ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)の「Capuchin Swing (Blue Note BST-84038」は、比較的リラックスして聴ける1枚。
ブルーノートでの前作「Swing, Swang, Swingin'(BST-4024)」に引き続き、ピアニストとしてウォルター・ビショップ(Walter Bishop Jr.)を起用。
トランペットは当時、ホレス・シルヴァー・クインテットで活躍中だったブルー・ミッチェル(Blue Mitchell)が参加しております。
で、マクリーンとミッチェルというブルージーな持ち味のフロント2人で参加しているのに、全体的に明るい雰囲気なのは何故かと考えてみると多分、バド・パウエル(Bud Powell)を頂点とするビバップ・ピアニストの一人、ウォルター・ビショップの影響力が大きいからなのだと思われます。
ウォルター・ビショップはオリジナルを2曲提供した上、何故かトリオだけの演奏もあったりしますから。
その辺りを考慮すると、このアルバムの音楽監督的役割をウォルター・ビショップが担っていたのかもしれません。
要するに「Capuchin Swing (Blue Note BST-84038」は、ウォルター・ビショップを中心に聴くと結構楽しめるアルバムかと思われます。
また、「Capuchin Swing」という謎めいたアルバム・タイトルについてですが。
アルバムジャケットにも登場している当時、ジャッキー・マクリーンの家で飼われていたオマキザル属のペット猿、「Mr. Jones」君からつけられたようです。
なお、オマキザル属の英語名称「Capuchin」は、その頭の形(毛並み?)が「カプチン・フランシスコ修道会(ラテン語で Ordo Fratrum Minorum Capuccinorum)」の僧が身に付ける修道服の頭巾(カプッチョ。イタリア語で cappuccio)に似ていることに由来しているそうです。
ついでにイタリアで好まれるコーヒーの飲み方の一つ「カプチーノ(イタリア語で Cappuccino)」も、名前の由来は「カプチン・フランシスコ修道会」からなんだそうです。
さて1曲目、ブルーノート首脳陣の一人、フランシス・ウルフ(Fracsis Wolff)の名前をもじった「Francisco」は、ジャッキー・マクリーンの作曲です。
良く考えると、「カプチン・フランシスコ修道会」にも引っかけているかもしれません(笑)。
アップテンポで、適度なキメのバック・リフが用意されているあたりが好きですね。
軽快なハード・バップとでも表現しておきましょう。
2曲目、ミディアム・テンポの「Just For Now」は、ウォルター・ビショップの作曲。
テーマ部から、ウォルター・ビショップを中心として歯切れ良く演奏が進んで行きます。
3曲目、トリオのみで演奏される「Don't Blame Me」は、ピアノ・トリオで良く演奏されるスタンダード・ナンバー。リズム隊3人による、小気味良い演奏をご堪能下さい。
オリジナル・ライナーによると、ウォルター・ビショップは1955年頃からこのアレンジで演奏していたようです。
4曲目、ジャッキー・マクリーンのオリジナル「Condition Blue」は、ホレス・シルヴァー・クインテットが演奏しそうなタイプの曲。
この曲でのウォルター・ビショップのバッキング、ホレスみたいで面白いです(笑)。
タイトル曲でもある5曲目の「Capuchin Swing」もジャッキー・マクリーンのオリジナル。どうもこの曲、私の大好きな「Star Eyes」のコード進行を下敷きに書かれた曲のようです。
演奏が進むにつれて、「Star Eyes」のテーマ・フレーズがソロのあちこちに顔を出します(笑)。
ラスト6曲目、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)の名前をもじった「On The Lion」は、ウォルター・ビショップの作曲で、これまた、軽快なハード・バップと表現した方がいいかな。
ウォルター・ビショップが結構張り切ったソロを披露してくれます。
Jackie McLean - Capuchin Swing (RVG)
Blue Note BST-84038 / 東芝EMI TOCJ-9156 [1999.11.26]
side 1 (A)
01. Francisco (Jackie McLean) 9:31
02. Just For Now (Walter Bishop Jr.) 7:31
03. Don't Blame Me (McHugh-Fields) 4:21
side 2 (B)
04. Condition Blue (Jackie McLean) 8:11
05. Capuchin Swing (Jackie McLean) 6:08
06. On The Lion (Walter Bishop Jr.) 4:44
Blue Mitchell (tp #1,2,4-6) Jackie McLean (as #1,2,4-6)
Walter Bishop Jr. (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (ds)
April 17, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
「Capuchin Swing (Blue Note BST-84038」は、小気味よいハードバップ・アルバムでありますが。
まあ、リーダーのジャッキー・マクリーンを中心に聴くなら「Swing, Swang, Swingin'(BST-84024)」がお勧めかなあ・・・と。