ホレス・シルヴァー(Horace Silver)が「The Jazz Messengers」を従えた様に表記されたアルバムが「Horace Silver and The Jazz Messengers (Blue Note BLP-1518)」です・・・実際の処、ホレス・シルヴァーが「The Jazz Messengers」を率いていた事はない様ですけど(笑)。
何故、そのような表記になったかというと。
10インチレコード「Horace Silver Quintet Vol.1(Blue Note BLP-5058)」と、「Horace Silver Quintet Vol.2(Blue Note BLP-5052)」を12インチレコードで再発する際、「The Jazz Messengers」とメンバーが同じであるという単純な理由と、売り上げを考慮して「Horace Silver and The Jazz Messengers」と表記されたみたいです。
このアルバムに収録された「The Preacher」が、ジョーク・ボックス用シングルとして
大ヒットしたそうですが、何故かA面は「Doodlin'」だったとか。
その辺りの紆余曲折は、ブルーノート(Blue Note Records)のオーナーであるアルフレッド・ライオン(Alfred Lion)がインタビューで、「The Preacher」の曲調は好みでは無かったと度々、言及している事で、何となく察しがついたりします。
「でも、ヒットすると思っていた。それで随分ブルーノートは救われた。」
とアルフレッド自身の言葉が続くので、曲調は好みでは無いが、売れる事が分かっていたので、シングル発売したという感じだったんですね。
まあ、でも、このアルフレッド・ライオンの「好みで無い」という素直な心情吐露は何度思い返しても、笑いがこみ上げてきます。
あと、そういえば「The Preacher」の録音時、「この曲は好みでないので別の曲を録音しよう」とアルフレッド・ライオンが提案した処、「他に用意した曲がないので録音日を改めよう」とホレス・シルヴァーに言われ、渋々そのまま録音したとかいうエピソードがあった記憶がありますが、私の勘違いかもしれません(笑)。
それでは、ぼちぼち「Horace Silver and The Jazz Messengers (Blue Note BLP-1518)」の
演奏曲目紹介に移りましょうか・・・。
軽快な1曲目「Room 608」は、後に発表される「Cool Eyes」を思わせる曲調です。
ホレス・シルヴァーがよく利用していた608号室(Room 608)にはピアノがあり、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)もよく、たむろしていたとか(笑)。
2曲目のブルージーな「Creepin' In」は、ちょっと「Nica's Dream」を思い出されるフレーズが出てきます。
このデジャ・ヴ感は何だろうねえ。特にセカンド・リフのあたりが・・・・。
3曲目のド派手な「Stop Time」は、「The Preacher」のヴァリーションみたいですね。
こちらの方がややハード・バップ寄りで、弾け方が足りないとも言えますが。
4曲目の「To Whom It May Concern」は、「セニョール・ブルース」の原型みたいな曲調のエキゾチックなナンバー。素敵なセカンド・リフが挿入されます。
アート・ブレイキーのソロから始まる5曲目の「Hippy」は、「ブルー・ミッチェル~ジュニア・クック」時代のように複雑なテーマと、次々と新しいリフが登場する曲です。
この曲は、楽譜を覚えるのは大変そう。ビック・バンド並にこんな複雑な曲は、暗譜(楽譜を覚えて演奏する)したくないですねー。
6曲目、大ヒットした「The Preacher」は、イギリスに伝わる「Show Me The Way To Go Home」なる曲を元にして作曲したものだそうです。
軽快なマーチ風のリズムに乗って、全員がハッピー(能天気?)な演奏を繰り広げるのが面白いですね。
7曲目の「Hankerin'」は、タイトルで察する事が出来ると思いますが、ハンク・モブレー(Hank Mobley)の作品です。
正統派ハード・バップ!といった風情の曲調に、ホレス・シルヴァーのごつごつしたバッキングが入ると、ホレスの自作曲みたいに聴こえるのが面白ろかったりします。
8曲目、アルバムの最後を飾る「Doodlin'」は、ブルースなのに途中、セカンド・リフが登場したりと、ソロにテーマに仕掛け満点の作品です。
そんなラージ・アンサンブル向きの曲だったためか、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)率いるビックバンドが、「Doodlin'」をビックバンド用に編曲し直して、演奏レパートリーに加えていましたね。
ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)のソロの際、重低音を駆使したせわしないバッキングが、ホレス・シルヴァーらしさを感じさせます。
Horace Silver and The Jazz Messengers (RVG)
Blue Note BLP-1518 / 東芝EMI TOCJ-9141 [1999.11.26]
side 1 (A)
01. Room 608 (Horace Silver) 5:22
02. Creepin' In (Horace Silver) 7:26
03. Stop Time (Horace Silver) 4:07
04. To Whom It May Concern (Horace Silver) 5:11
side 2 (B)
05. Hippy (Horace Silver) 5:24
06. The Preacher (Horace Silver) 4:19
07. Hankerin' (Hank Mobley) 5:18
08. Doodlin' (Horace Silver) 6:44
#01-03,08 November 13, 1954 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Horace Silver And The Jazz Messengers
Kenny Dorham (tp) Hank Mobley (ts) Horace Silver (p) Doug Watkins (b) Art Blakey (ds)
#04-07 [February 6, 1955 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Horace Silver And The Jazz Messengers
Kenny Dorham (tp) Hank Mobley (ts) Horace Silver (p) Doug Watkins (b) Art Blakey (ds)
ついでなんで、5000番台の詳細も付記しておきます。
Horace Silver – Horace Silver Quintet Vol. 1 (1954)
Blue Note BLP-5058 / 東芝EMI BN-0015 [1991.03.27]
side 1 (A)
01. Room 608 (Horace Silver) 5:22
02. Creepin' In (Horace Silver) 7:26
side 2 (B)
03. Doodlin' (Horace Silver) 6:44
04. Stop Time (Horace Silver) 4:07
Horace Silver And The Jazz Messengers
Kenny Dorham (tp) Hank Mobley (ts) Horace Silver (p) Doug Watkins (b) Art Blakey (ds)
November 13, 1954 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
Horace Silver – Horace Silver Quintet Vol. 2 (1955)
Blue Note BLP-5062 / 東芝EMI BN-0016 [1991.03.27]
side 1 (A)
01. Hippy (Horace Silver) 5:24
02. The Preacher (Horace Silver) 4:19
side 2 (B)
03. Hankerin' (Hank Mobley) 5:18
04. To Whom It May Concern (Horace Silver) 5:11
Horace Silver And The Jazz Messengers
Kenny Dorham (tp) Hank Mobley (ts) Horace Silver (p) Doug Watkins (b) Art Blakey (ds)
February 6, 1955 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.