兄弟で片方がトランペット、もう片方がテナーサックスを演奏するジャズ系ミュージシャンは案外、多かったりします。
で、不思議な事に兄弟一緒に活動してても、サックス奏者の方に人気が集まり、トランペット奏者の人気がイマイチという法則めいたものまで生まれてたりします。
思い出すだけでも、1960年代にファンキージャズを演奏して大人気となったキャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)クインテットのナット・アダレイ(Nat Adderley)と、キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)のアダレイ兄弟が居ますよね。
1980年代に彗星の如く登場したウイントン・マルサリス(Wynton Marsalis)と、ブランフォード・マルサリス(Branford Marsalis)のマルサリス兄弟もそうですね。
サックス奏者ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の兄弟である、アラン・ショーター(Alan Shorter)は、フリー系のトランペット奏者だったりします。
コンテンポラリー・ジャズ系に目を向けると、ブレッカー・ブラザーズ(Brecker Brothers)のランディ・ブレッカー(Randy Brecker)とマイケル・ブレッカー(Michael Brecker)が有名ですね。
そんな感じで、兄弟でプロ活動をするミュージシャンで、片方がトランペット、もう片方がテナーサックスを演奏していたジャズ系ミュージシャン達の一つが、トランペット奏者のトミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)と、テナー・サックス奏者のスタンレー・タレンタイン(Stanley Turrentine)のタレンタイン兄弟です。
スタンレー・タレンタイン(Stanley Turrentine)は、ブルーノート(Blue Note Records)に残された一連のソウルフルなアルバムでご存知の方は多いかと思われますが、トランペット奏者であるトミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)の方は、サイドマンとしての録音が多く、「聴いた事はあるかもしれないけど、印象が薄い」という人が多いかと思われます。
ええ、私もその一人です(笑)。
さて、トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)のプロ活動歴をネット検索してみると、ビ・バップ隆盛期の1940年代からファンキー、モード、フリーと劇的なスタイル変遷が起こる1960年代にベニー・カーター(Benny Carter)楽団、ビリー・エクスタイン(Billy Eckstine)楽団、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)楽団、カウント・ベイシー(Count Basie)楽団など、スイング~ビ・バップ系の演奏を得意とする有名ビックバンドを渡り歩いていた模様。
今回ご紹介する、トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)唯一のリーダー作らしい「Tommy Turrentine - Tommy Turrentine (Time T/70008)」は、そんなスイング~ビ・バップ系の有名ビックバンドを渡り歩いた経歴を頭に入れて聴いて見ると、ブルーノート(Blue Note Records)に残されたバリトン・サックス奏者、レオ・パーカー(Leo Parker)の一連の作品と共通する匂いを感じとる事が出来ると思います。
レオ・パーカー(Leo Parker)のアルバムには、トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)と同系統のデイブ・バーンズ(Dave Burns)が参加してますしね。
さて、前置きはこの位にして、トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)唯一のリーダー作らしい、1960年01月19日にニューヨークの「Capitol Studios」で録音された「Tommy Turrentine - Tommy Turrentine (Time T/70008)」に話を戻したいと思います。
トランペットのトミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)、テナー・サックスのスタンレー・タレンタイン(Stanley Turrentine)、トロンボーンのジュリアン・プリースター(Julian Priester)をフロントに据えた3管編成+ピアノ・トリオを基本とし、どちらかというと、ビックバンド風なアンサンブル重視の演奏が展開されております。
ピアノ・トリオのメンバーは、ピアノのホレス・パーラン(Horace Parlan)、ベースのボブ・ボスウェル(Bob Boswell)、ドラムスのマックス・ローチ(Max Roach)という感じの、文句の付けようがない人選です。
1曲目の「Gunga Din」を聴いていただけると分かる通り、トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)の自作曲は、ソウルフルというか哀愁漂うハードバップ風なものが多い感じです。
多分、ソウルフルなソロを聴かせるスタンレー・タレンタイン(Stanley Turrentine)を意識して書かれたものだと思われます。
続く、トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)のトランペット・ソロを聴くと、派手さはなく渋めながらも、かなりのテクニシャンである事が伺い知れます。
2曲目「Webb City」は、バド・パウエル(Bud Powell)の作品。
1960年代にこういうビ・バップ時代を彷彿とさせる曲を演奏する辺り、トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)の演奏守備の広さを感じさせるものだと思います。
テナー・サックスのスタンレー・タレンタイン(Stanley Turrentine)、トロンボーンのジュリアン・プリースター(Julian Priester)と、どちらかというとビ・バップ寄りのソロを聴かせてくれますし、トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)は早世した天才トランペッター、ファッツ・ナヴァロ(Fats Navarro)ばりの勢いあるソロを聴かせてくれてます。
まあ、ビバップ時代の演奏スタイルだと、マックス・ローチ(Max Roach)のドラムスも冴えわたりますね(笑)。
ファンキーかつソウルフルな7曲目「Blues For J.P.」は、ホレス・パーラン(Horace Parlan)からの提供曲ですね。
こういう演奏を聴くと、このアルバムが1960年の録音である事を思い出す事になります。
水を得た魚のような、ホレス・パーラン(Horace Parlan)のバッキングにも注目ですかね。
Tommy Turrentine - Tommy Turrentine (1960)
Time T/70008 / Teichiku TECW-20637[1997.12.17]
side 1 (A)
01. Gunga Din (Tommy Turrentine, Junior Spencer) 6:36
02. Webb City (Bud Powell) 5:45
03. Time's Up (Tommy Turrentine) 4:08
04. Long As You're Living (Tommy Turrentine, Julian Priester) 3:44
side 2 (B)
05. Too Clean (Tommy Turrentine) 6:19
06. Two, Three, One, OH! (Tommy Turrentine) 5:19
07. Blues For J.P. (Horace Parlan) 9:09
Tommy Turrentine (tp) Julian Priester (tb #2-7) Stanley Turrentine (ts)
Horace Parlan (p #1-3,5-7) Bob Boswell (b) Max Roach (ds)
January 19, 1960 at Capitol Studios, NYC.
トミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)関連の過去記事へのリンク、貼っておきます。