オリジナリティ溢れるドラマー、ピート・ラロカ(Pete La Roca)。
ブルーノート(Blue Note Records)の1500番台からドラムスでの参加作品は幾つかあるものの、リーダー作はこの「Basra (Blue Note BST-84205)」1枚しかないんですね。
まあ、これも、有能な新人は成長度合いを見守りつつ、(なるべく他社に先駆け)時期を見計らった上で、最良のメンバーと最良の曲をもってして録音しようという、ブルーノートの良心の塊のような運営方針の表れだったのかもしれません。
他の参加メンバーは、気鋭の新人でテナーサックスのジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)、ピアノのスティーブ・キューン(Steve Kuhn)、ベースのスティーブ・スワロー(Steve Swallow)という、ハード・バップ、モード、フリーと何でも来い的な、(録音当時は)新世代に相当するミュージシャンで固められております。
1曲目「マラゲーニャ(Malaguena)」から、参加メンバーのパワー全開、ほとばしってます。
特にジョー・ヘンダーソンの破天荒なテナー・ソロが素晴らしいと思います。
オープニングは、ラテン風ナンバーの「マラゲーニャ(Malaguena)」。
エキゾチックなテーマの後、ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)が予測不能かつ、破天荒なソロを展開していきます・・・いやあ、好きだなあこの音の崩し方。
続くスティーブ・キューンの、やや切れ気味に聴こえるピアノ・ソロも凄いです。
2曲目の「Candu」は、ブルース・コードの作品。
1曲目の無茶を聴いた後の箸休め的な作品と思いきや・・・・ジョー・ヘン(あえてこう呼ぶ)、またやらかしてくれます(笑)。
ソロの途中からお得意の、空間にパルス波を放射するかのようなフレーズを連発し、心休まる隙を与えてくれません。
疾走する感じが素敵な3曲目「Tears Come From Heaven」は、ちょっとハード・ボイルドな1曲。
前2曲とがらりと変え、ピート・ラロカがステディなシンバルでリズムを刻む中、各人がまっとうなソロを展開します。
4曲目でタイトル曲でもある「Basra」は、インド・中近東の雰囲気漂うベースによる長めのイントロから始まります。
しかしまあ、ジョー・ヘンダーソンのうねるテナーが、異国情緒漂う曲調にぴったりなのがなんとも・・・・。
5曲目「Lazy Afternoon」は、スロー・バラッド。
テーマをサブ・トーン気味に美しく歌い上げるジョー・ヘンダーソンのテナー、不覚にも(笑)心に染みます。
6曲目ラストに登場する「Eiderdown」は、ベースのスティーブ・スワロウ(Steve Swallow)作曲によるミディアム・テンポの作品。
綺麗な曲ですなあ・・・・ジョー・ヘンダーソンの破天荒な演奏を堪能した後には、なおさら心に染み入ります。
Pete La Roca - Basra (RVG)
Blue Note BST-84205 / 東芝EMI TOCJ-9104 [1999.07.23]
side 1 (A)
01. Malaguena (Ernesto Lecuona) 9:01
02. Candu (Pete La Roca) 6:44
03. Tears Come From Heaven (Pete La Roca) 5:01
side 2 (B)
04. Basra (Pete La Roca) 9:58
05. Lazy Afternoon (Moross, Latouche) 5:32
06. Eiderdown (Steve Swallow) 4:26
Joe Henderson (ts) Steve Kuhn (p) Steve Swallow (b) Pete La Roca (ds)
May 19, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.