「Cliff Jordan – Cliff Craft (Blue Note) 1957」ホレス・シルヴァーへのリスペクト・アルバム
クリフ・ジョーダン(Cliff Jordan)の1957年10月10日に録音されたアルバム「Cliff Craft (Blue Note BLP-1582)」は、アナログ・レコード時代のA面に相当する前半3曲を自作曲で固め、B面に相当する後半3曲は、バップ時代にチャーリー・パーカー(Charlie Parker)らがよく演奏した曲などが続くという構成のアルバムでございます。
演奏メンバーはクリフ・ジョーダン(Cliff Jordan)の他、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)クインテットの相方でもあるアート・ファーマー(Art Farmer)、ホレスの代わりにブルーノート(Blue Note Records)のハウス・ピアニストを務めていたソニー・クラーク(Sonny Clark)、ベースはジョージ・タッカー(George Tucker)、ドラムスは、これまたホレス・シルヴァー・クインテットの同僚、ルイス・ヘイズ(Louis Hayes)という、ホレス・シルヴァー率いるバンドをパク・・・いや、リスペクトすべく集められた確信犯(笑)的な編成となっております。
アナログ・レコード時代のA面に相当する前半3曲は全て、クリフ・ジョーダン(Cliff Jordan)が書いた作品であり、そこはかとなくホレス・シルヴァー(Horace Silver)クインテットの香りが漂っていたりもします。
ラテン風味で哀愁漂う1曲目「Laconia」は、ちょっと薄味なホレス・シルヴァー(Horace Silver)ナンバーといった風情の作品。
アート・ファーマー(Art Farmer)のミュート・トランペット・ソロに続く、ソニー・クラーク(Sonny Clark)の哀愁漂うピアノ・ソロ、三番手に登場するクリフ・ジョーダン(Cliff Jordan)のハンク・モブレー(Hank Mobley)に近いマイルドなソロなど、中々よろしいソロが続きます。
2曲目「Soul-Lo Blues」は、その名の示す通りファンキーでソウルフルなブルースで、ソニー・クラークのピアノ・バッキングが何時になくファンキーに響いております。
クリフ・ジョーダン、アート・ファーマー、ソニー・クラークとソウルフルな面を強調した素晴らしいソロを聴かせてくれますし、セカンド・テーマの合間に出て来るジョージ・タッカー(George Tucker)の力強いベース・ソロもいいですね。
メイン・テーマに戻り、最後に登場するエンディングも、ホレス・シルヴァー・クインテットのスタイルそのままといった感じです(笑)。
アルバム・タイトルでもあり、アップテンポで演奏される3曲目「Cliff Craft」は、テーマ部のアクセントの付け方がモロ、ホレス・シルヴァー・クインテット風味(笑)。
軽快なハード・バップという感じのバッキングにのり、クリフ・ジョーダン、アート・ファーマー、ソニー・クラークの順で爽快なるソロが展開されております。
フロント2人とドラムスのルイス・ヘイズ(Louis Hayes)による迫力あるソロ交換も素晴らしいですね。
アナログ・レコード時代のB面に相当する後半3曲は、バップ時代によく演奏された作品が並んでおります。
4曲目「Confirmation」は、バップ時代によく演奏されたチャーリー・パーカー(Charlie Parker)の作品ではありますが、ここではゆったり気味のファンキー風味漂う演奏となっております。
クリフ・ジョーダンはファンキーなソロを聴かせつつ時折、高速ビバップ・フレーズを混ぜるなど、原曲の持ち味を生かしつつ、1957年頃の演奏スタイルでまとめ上げてますね。
続くアート・ファーマー、ソニー・クラークは自らの持ち味を生かしたソロを聴かせてくれます。
印象的なリフの合間に登場するルイス・ヘイズとジョージ・タッカーのソロも短いながらも魅力的ですね。
5曲目「Sophisticated Lady」は、ビックバンド界の巨人、デューク・エリントン(Duke Ellington)の作品で、この曲はアート・ファーマー抜きのカルテットによる演奏となります。
クリフ・ジョーダンは、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)のように豊かな低音を響かせる奏法で、おおらかで時々意表を突くソロを展開。
続くソニー・クラークは、シングル・トーン中心のバック・ビートをやや強調した日本人の琴線に触れるソロを聴かせてくれます。
アップテンポで演奏される6曲目「Anthropology」は、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)とディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)の共作。
アート・ファーマー、クリフ・ジョーダン、ソニー・クラークとアルバムを締めくくるに相応しい華麗なソロが続き、フロント2人による刺激的なソロ交換を挟み、ルイス・ヘイズのドラム・ソロが登場、そのまま後テーマに雪崩れ込みます。
Cliff Jordan – Cliff Craft (RVG)
Blue Note BLP-1582 / 東芝EMI TOCJ-9158 [1999.11.26] 24 Bit By RVG
side 1 (A)
01. Laconia (Cliff Jordan) 7:05
02. Soul-Lo Blues (Cliff Jordan) 8:32
03. Cliff Craft (Cliff Jordan) 6:25
side 2 (B)
04. Confirmation (Charlie Parker) 7:33
05. Sophisticated Lady (Duke Ellington) 6:46
06. Anthropology (Parker, Gillespie) 7:05
Art Farmer (tp #1-4,6) Clifford Jordan (ts) Sonny Clark (p) George Tucker (b)
Louis Hayes (ds)
November 10, 1957 at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ.
しかし主役のクリフ・ジョーダン(Cliff Jordan)は、曲によってハンク・モブレー(Hank Mobley)風の演奏であったり、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)みたいな吹き方をしたりと、結構、器用に吹き分ける事が出来た人だったんですね。
自作曲も、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)の作風に似せたりと、かなり研究熱心であったと推測されますが、ブルーノート(Blue Note Records)の4000番台にリーダー作が残っていないのが惜しいですね。
ブルーノート(Blue Note Records)1500番台での、他のアルバム紹介は、下記リンクからどうぞ。
ジョン・ギルモア(John Gilmore)との双頭バンドで、バックを務めるは、あの「バードランドの夜」のリズム・セクション。
下記アルバムは、リー・モーガン(Lee Morgan)やカーティス・フラー(Curtis Fuller)など期待の若手を売り出すために用意されたジャズ・セッション風の録音ですね。