コロンビア(Columbia Records)に移籍したマイルス・デイヴィス(Miles Davis)が、ギル・エヴァンス(Gil Evans)楽団と共演した3枚のスタジオ録音のうち、第1弾として発売されたのが、この「Miles Ahead (Columbia CK-40784/CL-1041)」です。
マイルスの数多あるアルバムの中で、私が作業のお供(BGM)として一番聴いているのが、この「Miles Ahead」のはず。
ちなみに二番目は「Kind Of Blue」か、「1958 Miles」かな。
まあ、「Miles Ahead (Columbia CK-40784/CL-1041)」は私にとって、沈みがちな心を温かく包み込んでくれる「聴いて効く精神安定剤」的な感じですかね。
CDの場合、全曲メドレー形式で繋がっているので、「この曲がー」とかいう曲単位での感想がないです(笑)。
いつもBGM代わりに聴いていた事もあり、「Miles Ahead」全体としてのイメージというか感想しか思い浮かばない、不思議なアルバムだったりします。
マイルスがプレスティッジ(Prestige Records)との契約更新について話し合いしている時、「ギル・エヴァンス楽団とのアルバムを作るなら契約更新してもいい」という話が出た位、予算も時間もかかるプロジェクトであるため、コロンビアの様なメジャーなレコード会社でなければ、制作出来なかったでしょうねえ、「Miles Ahead (CK-40784/CL-1041)」は。
マイルスの自叙伝によるとビバップ・トランペットの開祖、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)がこの「Miles Ahead」をえらく気に入り、「レコードが擦り切れたんで、もう1枚欲しい」と、マイルスに話したというエピソードが載ってまして。
ディジーに気にいってもらえたのは、マイルスも嬉しかったんでしょうねえ。
さて、トランペット、トロンボーン、フレンチ・ホルン、チューバという金管楽器群に、フルート、クラリネット、アルトサックスという木管楽器を加えた編成が作り出すサウンドは、明るくからっとした雰囲気を醸し出しております。
メンバーを見ると見慣れない名前が多数出てきますが、大半はスタジオ・ミュージシャンだった模様。
マイルスも珍しくフリューゲル・ホルンを吹くことで、サウンドに温かみが増しております。
ちなみに、このサウンドをお手本に制作されたのが、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)が1968年に録音した「Herbie Hancock - Speak Like A Child (Blue Note BST-84279)」だったりします。
てな訳で、曲毎の説明は省きますが、「Miles Ahead (CK-40784/CL-1041)」の中で、印象に残る3曲については、参考音源貼っておきます。
1曲目「Springsville」は、アルバムのオープニングを飾るに相応しい1曲。
7曲目「New Rhumba」は、アーマッド・ジャマル (Ahmad Jamal)の作品。
10曲目「I Don't Wanna Be Kissed (By Anyone But You)」は、アルバムを締めくくる曲。
最後に登場する、マイルスの気合の入ったハイトーンが素晴らしいです。
なお、「Miles Ahead (CK-40784/CL-1041)」には、2種類のジャケットが存在しております。
コロンビアが「イージー・リスニング的アルバム」として、白人女性をあしらったジャケットで発売した処、マイルス側からクレームが出て、マイルスをあしらったジャケットに変更されたとの事。
でも、何故か日本では、白人女性をあしらったジャケットで発売される事が多かったりします(笑)。
Miles Davis + 19 - Orchestra Under The Direction Of Gil Evans - Miles Ahead (1957)
Columbia CK-40784/CL-1041 / Sony Records SRCS-9106 [1996.09.21]
side 1 (A)
01. Springsville (Johnny Carisi) 3:26
02. Maids of Cadiz (L. Delibes / arr Gil Evans) 3:55
03. Duke (Dave Brubeck) 3:32
04. My Ship (I. Gershwin, K. Weill) 4:30
05. Miles Ahead (Gil Evans, Miles Davis) 3:29
side 2 (B)
06. Blues for Pablo (Gil Evans) 5:19
07. New Rhumba (Ahmad Jamal) 4:35
08. Meaning of the Blues (R. Troup, L. Worth) 2:40
09. Lament (J.J. Johnson) 2:25
10. I Don't Wanna Be Kissed (By Anyone But You) (H. Spina, J. Elliott) 3:04
Miles Davis (flh) Gil Evans (arr, conductor)
Johnny Carisi, Bernie Glow, Taft Jordan, Louis Mucci, Ernie Royal (tp)
Joe Bennett, Jimmy Cleveland, Frank Rehak (tb) Tom Mitchell (bass-tb)
Jim Buffington, Tony Miranda, Willie Ruff (french horn) Bill Barber (tuba)
Edwin Caine, Sid Cooper, Romeo Penque (fl,cl) Danny Bank (bass-cl) Lee Konitz (as)
Paul Chambers (b) Art Taylor (ds)
May 6,10,23,27, 1957 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
1991年にスイスのモントルー(Montreux)で開催されたジャズ・フェスティバルで、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)楽団と、最晩年のマイルスが共演した「Miles & Quincy: Live at Montreux (Warner Bros)」というアルバムも発売されておりますので、興味のある方は、どうぞ。
映像版で見ると判る通り、曲によっては、マイルスに頼まれたウォレス・ルーニー(Wallace Roney)が、代わりにマイルスのパートを吹いていたりします(笑)。
その時のご褒美として、マイルスのトランペットを譲ってもらったみたいですが、ウォレス・ルーニーも、もう故人となってしまっているんですよね。