1967年10月に録音されたウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の「Schizophrenia (Blue Note BST-84297)」は、トロンボーン、アルトサックス、テナーサックスという珍しいフロント3管編成のアルバムです。
さて「Schizophrenia」とは、統合失調症を意味する言葉だそうですが。
事実と空想の区別がつかなくなったり、存在しない物が見えたり聴こえたり、はたまた、現実には存在しない何かを感じとったりするという意味合いもあるそうです。
そういえばウェイン・ショーターの事を、「幻視者」や「夢想する人」と評する人も居りますので、タイトル曲「Schizophrenia」とは彼自身の事を表した言葉なのかもしれません。
さて1曲目、ジャズロックにボサノヴァを混ぜた感じの「Tom Thumb」は前年1966年01月に録音された「Bobby Timmons - The Soul Man! (Prestige PR-7465)」でも演奏されていた曲です。
低音が効いた分厚いアンサンブルから、ウェイン・ショーターのマジカルなソロ、ジャズロックの始祖的な存在であるハービー・ハンコック(Herbie Hancock)の軽快なピアノソロへと続きます。
2曲目「Go」は、ミディアムテンポの抒情的なナンバー。
最初にソロを弾くハービー・ハンコックが、「Speak Like A Child (Blue Note BST-84279)」のような雰囲気を醸し出します。
3曲目「Schizophrenia」は、急速調の緊張感溢れるナンバー。
カーティス・フラー(Curtis Fuller)の珍しく豪快なソロをお楽しみいただけます。
4曲目「プリプトナイト(Kryptonite)」とは、アメリカン・コミックのヒーロー、
スーパーマンの故郷・クリプトン星の石の事だそうで。
プリプトナイトに触れると、スーパーマンのパワーが消失してしまうという設定なんだそうで、そこから派生して「弱点」を表す意味合いで使われるようになったとか。
そういう意味合いを知って演奏を聴くと、何だか「危機一髪」の場面で流れる曲のような雰囲気を持った曲だという事に気がつきます。
5曲目「Miyako」は、幻想的な雰囲気を持つバラッド。
6曲目「Playground」は、ジョー・チェンバース(Joe Chambers)のドラムを中心に展開されていく曲です。
「Playground」とは、子供の遊び場や行楽地を意味する英語のようですが、子供(Child)がらみという事で時折、ハービー・ハンコックの抒情的ピアノフレーズが耳に飛び込んできます(笑)。
という訳で。
ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の「Schizophrenia (Blue Note BST-84297)」は、中古CD屋さんで手にとっては棚に戻す(笑)という事を繰り返していたのですが、いざ覚悟を決めて入手し聴いてみると、中々ゴキゲンな名盤でしたね。
Wayne Shorter - Schizophrenia
Blue Note BST-84297 /
side 1
01. Tom Thumb (Wayne Shorter) 6:15
02. Go (Wayne Shorter) 4:52
03. Schizophrenia (Wayne Shorter) 6:59
side 2
04. Kryptonite (James Spaulding) 6:25
05. Miyako (Wayne Shorter) 5:55
06. Playground (Wayne Shorter) 6:20
Curtis Fuller (tb) James Spaulding (as,fl) Wayne Shorter (ts)
Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Joe Chambers (ds)
March 10, 1967 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
1967年10月録音「Schizophrenia (Blue Note BST-84297)」の前後には、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)クインテットによる名盤が録音されてます。
「Footprints」収録の1966年10月録音「Miles Davis - Miles Smiles (Columbia CS-9401)」
「Nefertiti」収録の1967年06月「Miles Davis - Nefertiti (Columbia CS-9594)」